交通事故による半月板損傷の後遺障害|慰謝料相場や等級認定のポイントなど
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
交通事故後、階段の昇り降りやしゃがみ込み等の際に、「膝が伸ばせない」、「引っかかるような痛みや内出血がある」場合は、半月板を損傷しているかもしれません。 半月板は一度損傷すると自然に治ることが難しく、後遺症が残る可能性が高い部位です。半月板損傷による後遺症が残った場合には、適切な賠償金を受け取るためにも後遺障害等級認定の申請手続きを行うことが必要です。 そこで本記事では、「交通事故による半月板損傷」に着目し、半月板損傷の症状や半月板損傷による後遺症で認定される可能性のある後遺障害等級について、詳しく解説していきます。
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目次
交通事故による半月板損傷とは?
半月板損傷とは、“膝関節内の半月板に亀裂や欠けるなどの損傷が生じること”をいいます。 半月板は、大腿骨(太腿の骨)と脛骨(すねの骨)の間にあり、膝関節にかかる体重の負荷や歩行時の衝撃を吸収するクッションの役割を果たす三日月型の軟骨組織で、膝の内側と外側にあります。半月板損傷の多くが、膝関節が無理やり逆方向へ捻られた場合に、半月板の一部が大腿骨と脛骨の間に挟まることで損傷します。交通事故では、強く膝を捻った状態になった際に損傷することがあります。 また、半月板損傷は治癒しにくいため、半月板損傷と診断されたら、すぐに適切な治療を受けましょう。
半月板損傷の症状
半月板を損傷した際に生じる症状には、次のようなものがあります。
- 膝関節の痛み
- 膝を伸ばした時に感じるひっかかり感
- 膝の動きが制限される(膝が以前より曲げられない)
- 膝関節に膨張がみられる
- 正座やあぐらをかくことができない など
このような症状が認められる場合には、交通事故により半月板を損傷しているおそれがあります。そのため、なるべく早めに病院を受診し、必要な検査を受けることが大切です。 「時間が経てば治るだろう」と安易に考え、放置することは絶対にやめましょう。
半月板損傷の検査
半月板損傷が疑われる場合には、次のような検査が行われます。
●MRI検査
軟部組織である半月板は、X線の画像検査では見ることができないので、MRI検査でT2強調画像(水分が白く描出される撮影方法を用いた画像)を撮影し、損傷部に流入した関節液等の存在から、半月板の断裂といった損傷を確認することになります。
●関節鏡
最も確実性の高い検査方法です。半月板の切除・縫合術をすることを前提に、膝関節内に内視鏡を挿入し、半月板を直接観察します。
●徒手検査
マクマレー・テスト:
仰向けで膝・股関節を最大に曲げた状態で、膝から足首にかけての部分を捻りながら膝を伸ばしていき、痛みや異常音がないか確認するテストです。
●アプレーテスト:
うつぶせで膝を90度挙げ、踵を下に押し付けながら回し、痛みがないか確認するテストです。
検査の結果、半月板損傷と診断されたら、症状に応じて保存療法や手術療法といった治療が行われます。
半月板損傷の治療
半月板損傷では、次のような治療が行われます。
保存療法
保存療法とは、リハビリ(ギプスや装具による固定や歩行訓練、大腿四頭筋の筋力増強訓練等)、温熱療法、薬物療法(関節内へのステロイドやヒアルロン酸の注入、消炎鎮痛剤等の内服)等による治療方法のことをいいます。 ロッキング(損傷した半月板が関節に挟まっている状態)がなく日常生活に支障もない場合には、基本的に保存療法が選択されます。
手術療法
手術療法とは、半月板縫合術や半月板切除術など、手術による治療方法のことをいいます。 半月板縫合術は、「損傷した部分を縫い合わせる手術」で半月板切除術が「損傷した部分を切り取る手術」です。これらの手術により、半月板機能の低下を最低限に抑えられる一方で治療の長期化と再発のおそれといったデメリットがあります。 半月板の機能が低下し変形性膝関節症を引き起こすおそれがあるため、切除量を最小限にしなければなりません。
半月板損傷の後遺症で認定される後遺障害等級は?
交通事故による半月板損傷で残ってしまう可能性のある後遺症は、“機能障害”と“神経障害”です。 機能障害で認定となる可能性のある後遺障害等級は、8級7号、10級11号、12級7号が考えられます。また、神経障害で認定となる可能性のある後遺障害等級は、12級13号もしくは14級9号となります。 では、機能障害と神経障害について、もう少し掘り下げてみていきましょう。
機能障害
半月板損傷による機能障害とは、主に「身体の部位(膝関節)に可動域制限が生じること」をいいます。そのため、事故前と比べて膝関節の曲げ伸ばしができなくなった(しづらくなった)場合に、その曲げ伸ばしができなくなった角度に応じて、後遺障害等級が認定されます。 なお、半月板損傷による機能障害で認められる可能性のある後遺障害等級は、下表のとおりです。 可動域が大きく制限されるほど、事故によって重い後遺障害が残ったとみなされ、高い後遺障害等級(8級)に認定されます。
| 後遺障害等級 | 後遺障害の認定基準 |
|---|---|
| 8級7号 | 膝関節が全く動かない場合など「関節の用を廃した」と認められる場合(可動域が10分の1以下) |
| 10級11号 | 膝関節の可動域が1/2以下に制限され、「関節の機能に著しい障害を残すもの」と認められる場合 |
| 12級7号 | 膝関節の可動域が3/4以下に制限され、「関節の機能に障害を残すもの」と認められる場合 |
神経障害
半月板損傷による神経障害とは、「神経の圧迫によって生じる痛みやしびれ、麻痺等の症状」をいいます。そのため、事故前には生じていなかった痛みやしびれが治療後も継続している場合は、その症状の程度に応じて後遺障害等級が認定されます。 半月板損傷による神経障害で認定される可能性のある後遺障害等級は、下表のとおりです。 なお、症状の程度が重ければ12級13号が認定となりますが、具体的には“12級13号は他覚的所見があり医学的に神経障害を証明できる場合、14級9号は医学的説明に留まる場合に認定となる”というように区別されています。
| 後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
|---|---|
| 12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
交通事故による半月板損傷の後遺障害慰謝料相場
事故による怪我の後遺症が後遺障害等級として認定されると、“後遺障害慰謝料”を請求することができます。また、交通事故における慰謝料の金額は、認定される後遺障害等級や用いる算定基準によって大きく異なります。 慰謝料の算定基準には、「自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準」の3つの基準があります。 任意保険基準の内容は各保険会社によって異なるため、非公開となっています。 なお、自賠責基準と弁護士基準の違いは、以下のとおりです。
| 自賠責基準 | 自動車損害賠償保障法に基づく、基本的な対人賠償の確保を目的とした基準 |
|---|---|
| 弁護士基準 | 過去の裁判例を基につくられた基準でもっとも高い基準 |
では、自賠責基準と弁護士基準を比較した後遺障害慰謝料額を等級別でみてみましょう。 弁護士基準の方が、はるかに高額になることが分かります。
| 等級 | 自賠責基準※1 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 12級13号 | 94万円 | 290万円 |
| 14級9号 | 32万円 | 110万円 |
※1:自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。
| 等級 | 自賠責基準※2 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 8級7号 | 331万円 | 830万円 |
| 10級11号 | 190万円 | 550万円 |
| 12級7号 | 94万円 | 290万円 |
※2:自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。
慰謝料の計算例
では、例を用いて実際に慰謝料を計算してみましょう。 後遺障害が残った場合にもらえる慰謝料は入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類のため、2つの慰謝料額を合計したものが、もらえる慰謝料額となります。
【計算例】
入院1ヶ月(30日)、通院期間197日、実通院日数170日、後遺障害等級12級13号
自賠責基準の場合
入通院慰謝料は、「4300円※3×対象日数」で計算します。 対象日数は「入通院期間」もしくは「実治療日数×2」のいずれか小さい方を採用するため、30日+197日=227日が対象日数となります。 ※3:令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準の日額4200円が適用されます。
(計算式)
入通院慰謝料:4300円×227日=97万6100円
後遺障害慰謝料: 94万円
したがって、慰謝料の総額は191万6100円となります。
弁護士基準の場合
赤い本(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)の入通院慰謝料別表Ⅰの「算定表」を用います。
(算定表の金額)
入通院慰謝料:154万5000円
後遺障害慰謝料:290万円
したがって、慰謝料の総額は444万5000円となります。
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半月板損傷で後遺障害等級に認定されるためのポイント
交通事故による半月板損傷で適切な後遺障害等級認定を受けるためには、次のようなポイントを押さえておくことが大切です。
- ①交通事故後すぐに病院を受診する
- ②医師の指示に従い適切な検査・治療を受ける
- ③後遺障害診断書を正確に作成してもらう
- ④ 交通事故に強い弁護士に相談する
では、それぞれのポイントについて、次項にて詳しく解説していきます。 なお、後遺障害等級認定の申請手続きなどについての詳細は、以下のページをご覧ください。
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交通事故後すぐに病院を受診する
適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、交通事故後すぐに病院を受診することが大切です。 事故後すぐに病院を受診しなければ、事故との関係を否定される可能性があります。事故から時間が経つほど、怪我が事故によるものだと証明するのが難しくなります。そのため、事故後すぐに病院を受診して、「事故による怪我である」と医学的に証明してもらうことが必要です。 そうすることで、事故と怪我の因果関係が争われる可能性を低くすることができます。適切な後遺障害等級認定を受けるためには、まずこの点をしっかりと押さえておきましょう。
医師の指示に従い適切な検査・治療を受ける
通院先の医師の指示に従って適切な検査や治療を受けることも、適切な後遺障害等級の認定を受けるために大切です。 後遺障害等級認定の審査は、実質「書面審査」といわれており、主治医が作成した診断書や後遺障害診断書がもっとも重要視されます。そのため、医師の指示に従わずに通院を1ヶ月以上空けたり、検査を受けなかったりすると、当然後遺障害等級認定を受けられなくなります。 医師から指示された適切な通院頻度で通院を継続し、必要な検査を受けることで、充実した内容の診断書や後遺障害診断書を作成することができます。このことを念頭に置きながら、通院するようにしましょう。
後遺障害診断書を正確に作成してもらう
後遺障害診断書とは、「交通事故による怪我の後遺症の具体的な症状や支障を証明する書類」で、後遺障害等級認定を受ける際に必須となる書類です。適切な後遺障害等級認定を受けるためには、医師にこの後遺障害診断書を正確に作成してもらうことが大切です。 後遺障害等級認定の審査は書面審査であるため、診断書や後遺障害診断書がもっとも重要な書類として取り扱われます。医師に充実した内容の後遺障害診断書を作成してもらうためには、自覚症状を具体的に医師へ伝えることや必要な検査を必要な時期に受けることなどが重要です。また、日常生活への支障についても細かく伝えるとよいでしょう。完成後には、これまで伝えてきた自覚症状や支障などについて記入漏れがないか確認することも大切です。 後遺障害診断書について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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交通事故に強い弁護士に相談する
交通事故に強い弁護士に相談することも、適切な後遺障害等級に認定されるために重要です。 もちろん、後遺障害等級認定の申請手続きは、弁護士でなくとも行うことができます。しかし、交通事故分野だけでなく、医学分野にも強い弁護士であれば、適切な後遺障害等級認定に向けた対策ができます。通院の仕方・必要な検査についてのアドバイスや証拠の収集などのサポートをしてもらえ、自分で行うよりも認定となる確率を格段に上げることができます。 また、後遺障害等級の認定を受けられなかった場合にも、結果に対して異議を申し立てて再度審査を行ってもらうという「異議申立て」の手続きについても代わりに進めてもらえるため、安心です。 後遺障害等級認定の申請手続きを視野に入れなければならない方や迷われている方は、弁護士にご相談されることをおすすめします。
右膝関節の機能障害で後遺障害12級7号が認定され、賠償金約1300万円を獲得した事例
ご依頼者様は、横断歩道のない道路を歩行横断していたところ、相手方車両に衝突され、右膝脛骨高原骨折等の怪我を負いました。その後、入通院治療を受けるものの後遺症が残ったため、弁護士にて後遺障害診断書の内容を確認するところから着手しました。 後遺障害診断書は、自覚症状や可動域制限が生じている根拠となる傷病の説明が不十分であったため、診療録を収集して精査を行いました。その結果、「靭帯損傷に伴う膝関節の異常が生じていること」が判明し、医師面談のうえ、再度の検査と診断を行い、膝関節の動揺性を証明しました。 それから後遺障害等級認定の申請を行い、右膝関節の機能障害として12級7号の認定を得ることができました。賠償交渉では、ご依頼者様の過失による減額や事故当時無職であったという不利な点がありながらも、弁護士が粘り強く交渉を行い、最終的に約1300万円にて示談することができました。
交通事故による半月板損傷をしてしまったら弁護士法人ALGにご相談ください
半月板は、歩行をはじめとする日常生活の運動において、なくてはならない部位です。そのため、半月板損傷は日常生活に大きな影響をもたらします。 そこで、半月板損傷に対する適正な賠償をしてもらうことが重要になりますが、半月板は加齢によっても損傷する場合があり、交通事故との因果関係の立証が難しいことがあります。 賠償を受けるためには、事故と損害の因果関係が認められなければなりません。半月板損傷と交通事故との因果関係の証明のためにも、治療の受け方が重要になってきます。 その点、医療に強い弁護士であれば、適切な治療の受け方についてアドバイスすることができます。また、後遺障害等級認定に必要な後遺障害診断書の書き方等、適正な賠償を受けるために必要な手続についてもサポートできます。 適正な賠償を受けるためにも、医療に強い弁護士への相談をぜひご検討ください。
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