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腱板損傷と後遺障害

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates執行役員
監修 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates執行役員

腱板は、日頃よく使う肩付近の部位だけに、損傷すると日常生活に大きな支障が生じます。
交通事故前と同じように生活できなくなったのであれば、適正な賠償を受けたいと思うのはごく自然のことと思います。
この記事では、腱板損傷された被害者の方に向けて、後遺障害等級認定のポイント等について解説していきます。

腱板損傷とは? 交通事故で腱板損傷になったら?

腱板損傷とは、「腱板」と呼ばれる肩関節を構成する筋腱類の一部又は全部を断裂することをいいます。 腱板は、棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょっかきん)、小円筋、肩甲下筋の4本の筋肉からなる腱で、肩関節を安定させ、腕の回転を補助する役割を担っています。 交通事故により、転倒して強く手をついたり肩に衝撃が加わったりすることによって、腱板が断裂します。 腱板損傷を放っておくと、悪化して骨の変形等といった思わぬ結果を引き起こしてしまうこともあるため、鍵盤損傷の診断を受けたら、病院で適切な治療を受けましょう。

腱板損傷の症状

腱板損傷の症状は、腱板の上にある柔らかい部分(滑液包)が強い炎症を起こしたり、充血したり、水が溜まったりすることで断裂部分に生じる強い痛み(まれに原因部位とまったくかけ離れた部位に現れる痛みである放散痛もあります)や、肩関節の可動域制限です。 肩関節周囲炎(五十肩)と間違えられることが多いですが、肩関節周囲炎と比べ、腱板損傷の方が関節の拘縮がなく、動きも硬くなりません。 腱板が断裂したまま激しい運動を繰り返すと、断裂部分で骨同士が衝突し骨が変形してしまうこともあるため、注意が必要です。

検査と治療方法

腱板損傷が疑われる場合、
・肩を挙上できるかどうか
・肩を挙上する際に肩峰(鎖骨と上腕の骨をつなぐ部位)の下で軋轢音があるかどうか
・健側(健康な方)と比べて外転や外旋筋力の低下がないか
といった点等を調べます。

これらに加えて、X線写真、MRI画像検査、超音波検査で、肩峰下腔の狭まり方や腱板の損傷の度合いを確認します。 腱板損傷の治療としては、一般的に、腱板が部分的に断裂している場合には保存療法が、完全に断裂している又は強い痛みが6ヶ月以上続いている場合には観血的療法(手術)が選択されます。 保存療法としては、三角布等の固定用装具を装着して安静にするとともに、投薬や水溶性副腎皮質ホルモン・ヒアルロン酸の関節内注入、可動域訓練・筋力強化等で疼痛の改善を図ります。ただし、断裂部位が自然に回復することはないため、肉体労働やスポーツをされる方には不向きです。 観血的療法としては、関節鏡視下手術又は直視下手術が行われます。手術後、約1ヶ月間の固定と2~3ヶ月間の機能訓練が必要とされます。

腱板損傷と関係のある後遺障害と慰謝料

腱板損傷の症状は、肩関節の運動障害(肩関節の可動域制限)と、断裂部位の痛みや放散痛といった神経症状が挙げられます。 腱板損傷の各後遺障害の認定基準について、以下にまとめましたのでご覧ください。

可動域制限

腱板を損傷すると、肩関節の可動性に支障が生じます(=可動域制限)。
この可動域制限は、以下の基準で認定されます。

等級 認定基準 説明
8級6号 関節の用を廃したもの (a)関節が強直したもの
(b)人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
10級10号 関節の機能に著しい障害を残すもの (a)関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
(b)人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、上記(b)以外のもの
12級6号 関節の機能に障害を残すもの 関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているもの 

請求できる後遺障害慰謝料

腱板損傷の場合に認定され得る後遺障害等級と、等級別の後遺障害慰謝料についてまとめた表です。

等級 自賠責基準 弁護士基準
8級6号 324万円 830万円
10級10号 187万円 550万円
12級6号 93万円 290万円

神経症状

腱板損傷により、断裂部位である肩関節の痛みや放散痛等といった神経症状が残る場合には、12級13号又は14級9号が認定される可能性があります。 後遺障害等級の認定基準に照らすと、神経症状を医学的に証明できる場合には12級13号が認定され、医学的説明に留まる場合には14級9号が認定される可能性があります。

請求できる後遺障害慰謝料

腱板損傷の場合に認定され得る後遺障害等級と、等級別の後遺障害慰謝料についてまとめた表です。

等級 自賠責基準 弁護士基準
12級6号 93万円 290万円
14級9号 32万円 110万円

医療に強い弁護士にご相談ください

最近の疫学調査によると、肩への外傷がなくても、高齢の方や肩を酷使していた経験のある方には、腱板損傷がみられる場合があります。また、その中には、自覚症状がなく、交通事故後検査を受けて初めて腱板を損傷していたことがわかった方もいらっしゃいます。 そのため、事故後に腱板損傷が診断された場合、事故前から存在していた損傷なのか、事故によって生じた損傷なのかが問題になることが多いです。 事故前から存在し慢性化した腱板損傷では、長期間の腱板の変性に伴い、骨や筋肉に変化がみられます。こうした変化がないことを証明できれば、交通事故と腱板損傷との因果関係が認められるため、後遺障害等級が認定される可能性が高まります。しかし、被害者の方がお一人で「どのような変化がないことを証明すれば良いか」「証明にはどのような証拠が必要か」等を判断し、実際に保険会社に主張することは難しいでしょう。 そこで、後遺障害等級認定のポイントを熟知した、医療に強い弁護士の出番といえます。特に医療に強い弁護士であれば、被害者の方が疑問に思われるであろう、交通事故と腱板損傷との因果関係の証明の仕方を知っているため、保険会社に因果関係を認めさせることができます。 適切な後遺障害の認定を受け、適正な賠償を受けるためにも、後遺障害等級認定申請の経験があり、医療問題に強い弁護士が集まるALG&Associatesにご相談、ご依頼ください。

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腱板損傷による可動域制限が認められた裁判例

【大阪地方裁判所 平成28年(ワ)第4530号 損害賠償請求事件】

<事案の概要>

本事案は、青信号で交差点に進入した原告の運転するトレーラーが、交差道路から赤信号を無視して交差点に進入してきた被告車運転のトレーラーと出合い頭に衝突したことにより原告が受傷したとして、被告に対して損害賠償を請求した事案です。 原告が、左肩腱板損傷等は本件事故により受傷したものであると主張したのに対し、被告は、左肩腱板損傷に本件事故との相当因果関係はなく、その他受傷内容も軽微であると反論したため、原告の受傷の内容及び後遺障害の有無が主な争点になりました。

<裁判所の判断>

裁判所は、本件事故における衝突時の状況と原告の事故時の供述内容からみて、左肩腱板損傷の受傷機転として特段不自然とはいえないと判断しました。 また、原告に左肩の痛みの既往症があった点について、①医師の診断は腱板損傷ではなく「左肩関節周囲炎」であったこと、②治療によって快癒したと述べその後医療機関を受診しなかったこと、③仮に本件事故前に腱板損傷があったとしても、1度の注射治療によって、腱板損傷の症状が消失するとは考え難いことから、事故前の原告の受診歴をもって、左肩腱板損傷等が本件事故前からあったとすることはできないと判断しました。 加えて、原告が、本件事故の翌日に左肩痛、事故の3日後には左肩が上がらないという症状を訴え、その後も継続して左肩の症状を訴えていたこと、MRI画像検査で棘上筋腱の部分断裂等が見られたことといった事情を総合し、原告が、本件事故により左肩腱板損傷等の傷害を負ったと認めるのが相当であると判断しました。 そして、原告の後遺障害の内容については、傷害を負った左肩関節の可動角度が3/4以下に制限されていること、左肩腱板損傷等の他覚的所見があることから、後遺障害等級12級6号を認めました。

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