死亡事故の過失割合│賠償金への影響や過失割合の修正について
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
この記事でわかること
交通事故の責任の度合いを示す「過失割合」は、賠償金に大きく影響します。被害者が亡くなられている死亡事故では、ご遺族が適切な過失割合を主張していくことが大切です。 とはいえ、専門的でわかりにくい部分も多く、不安を抱える方も少なくありません。 この記事では、死亡事故の過失割合の考え方や賠償金への影響を、わかりやすく解説します。 実際に過失割合を修正できた事例も紹介しますので、少しでもご遺族の皆さまのお力になれれば幸いです。
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目次
死亡事故の被害者にも過失割合が加算されることがある
死亡事故であっても、法律上「被害者にも過失割合がつく」ことがあります。 これは、民法の「過失相殺」の考えが死亡事故にも適用されるためです。
【民法第722条 第2項】
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる
例えば、被害者にも事故につながる危険な行動があった場合や、交通ルール違反があった場合、被害者にも一定の過失がつく可能性があります。過失割合は、被害者の生死とは切り離し、「事故の発生原因にどの程度関わったか」という観点から検討されるためです。
慰謝料などの賠償金は過失割合で増減する
死亡事故の被害者にも過失割合がつくと、その割合に応じて慰謝料などの賠償金が減額されます。 死亡事故の損害賠償として請求できる項目には次のようなものがあり、すべて合わせると数千万~1億円を超えるケースも珍しくありません。
- 死亡慰謝料
- 死亡逸失利益
- 葬儀関係費
- 物損、着衣・携行品に関する損害
- 事故から亡くなるまでの治療関係費、入通院慰謝料、休業損害 など
例えば、6000万円の賠償金は、被害者に5%の過失割合がつくと5700万円(差額300万円)に減り、10%の過失割合がつくと5400万円(差額600万円)まで減ってしまいます。 過失割合が5%変わるだけでも、被害者が受け取れる賠償金は大きく変わります。また、賠償金が高額であればあるほど、過失割合の影響も大きくなるので注意が必要です。
過失割合の決定には加害者の言い分が通りやすい
死亡事故では、被害者が亡くなっているため事故状況を説明できず、加害者の言い分が事実として通りやすい傾向があります。 その結果、被害者側に不利な過失割合が認定され、適正な損害賠償金を受け取れなくなるおそれがあります。 本来であれば、事故の当事者である被害者と加害者双方の説明をもとに「実況見分調書」が作成されますが、死亡事故の調書では、どうしても加害者の説明に頼らざるを得ません。 「自身の過失を最小限に抑えたい」と考える加害者によって、被害者側に不利な過失割合となるケースがよく見られます。 こうした背景から、ご遺族が「本当にこの内容で正しいのか」と不安を抱きやすく、過失割合をめぐって大きな争いに発展してしまうことがあります。
保険会社から提示された過失割合が正しいとは限らない
死亡事故の損害賠償請求において、保険会社から提示された過失割合が必ずしも正しいとは限りません。 実務上、加害者側の保険会社は支払額をできるだけ抑えるため、自社つまり加害者に有利な過失割合を提示するケースがみられます。 保険会社の言うままに過失割合を決定してしまうと、本来受け取れるはずだった賠償金が大きく減ってしまう可能性があるので注意しましょう。 とくに死亡事故では、残念ながら被害者自ら適正な過失割合を主張することができないので、ご遺族が、「保険会社の提示が妥当か」を慎重に判断する必要があります。
死亡事故の過失割合はどうやって決まるのか?
死亡事故の過失割合は、ほかの交通事故と同じように、事故の当事者の合意(示談)で決めるのが基本です。加害者側と被害者側それぞれの保険会社が事故状況をもとに話し合い、最終的にご遺族と加害者に合意を求めるのが通常です(示談交渉)。 話し合いで決まらない場合、最終的には裁判所が判断することになります。 過失割合を決める際は、まず事故状況や過去の裁判例をもとに「基本となる過失割合」を出します。 信号無視や速度違反といった特別な事情がある場合は、「修正要素」によって当事者双方の過失を増減し、調整を図るのが一般的です。 以下のページで、過失割合の決め方や事故事例を詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
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過失割合は修正要素で変わる
修正要素とは、事故の具体的な状況に応じて過失割合を調整する要素のことです。被害者に有利なものもあれば、不利に働くものもあります。 事故が起きた時間帯や天候、道路状況、速度、当事者自身の属性や行動など、個別の事情を過失割合に反映させることで、公平かつ柔軟な過失割合の調整を図ることが可能です。 流れとしては、まず当事者の事故パターンに似た過去の裁判例をもとに、基本となる過失割合を求めます。その上で修正要素があれば割合を調整し、最終的な過失割合を決定します。
修正要素の具体例
- 交通量や人通りが多い道路
車や歩行者が多い場所では、より慎重な運転が求められるため、注意義務を怠ると過失が大きくなる場合があります。 - 見通しの悪い交差点や夜間の運転
周囲が見えにくく、普段以上に注意が必要な場所や時間帯の運転で確認不足があると、過失が大きくなる場合があります。 - 速度違反や急な車線変更
速度違反や急な車線変更といった行為は事故のリスクを高めるため、注意義務を十分に果たしていないと判断され、過失が大きくなる傾向があります。 - ながら運転・わき見運転
スマホを操作しながら運転していた・カーナビを注視していたなど、運転者が運転に集中できない状態にあると、自らリスクを高めたとして過失が大きくなる傾向があります。
死亡事故での適切な過失割合認定のためにできること
死亡事故で適切な過失割合を認めてもらうためには、「ドラレコや防犯カメラ映像などの客観的証拠を確保すること」「実況見分調書や供述調書の内容を丁寧に確認すること」が重要です。 以下、ご遺族ができる具体的な取り組みについて詳しくみていきましょう。
ドライブレコーダーの映像の確認
死亡事故の過失割合を適切に認定してもらうには、ドライブレコーダーの映像が役立ちます。 被害者・加害者だけでなく、周辺にいた車のドライブレコーダーに、事故当時の状況が映っていないか確認してみましょう。 映像が残っていれば、加害者の主張と食い違いがあっても、客観的な証拠として事故状況を裏付けることができます。 ただし、ドライブレコーダーの映像は上書きされてしまうことがあるので、早めの行動が極めて重要です。 加害者に映像の提出をお願いしても断られる場合は、警察に「相手のドライブレコーダー映像を確認してほしい」と伝えることで、必要な証拠を確保しやすくなります。
証拠能力のない映像に注意
死亡事故においてドライブレコーダーの映像は有力ですが、証拠能力のない映像しか記録されていない場合もあるので注意が必要です。 例えば、事故発生時の信号の色について争いがある場合、ドライブレコーダーに信号機が映っていなければ重要な証拠にはなりません。 証明したい事故状況をはっきり判明できなければ、適切な過失割合を主張するための証拠としてはあまり役に立たないでしょう。
防犯カメラの映像の確認
事故現場周辺の防犯カメラの映像も、死亡事故の過失割合を適切に判断するうえで重要な手がかりになります。 防犯カメラを設置している施設が分かれば、管理者に連絡して映像の確認をお願いしましょう。管理者に断られてしまった場合や、警察が動いてくれない場合でも、弁護士に依頼すれば管理者との交渉や、弁護士会照会による映像開示の可能性が高まります。 ただし、ドライブレコーダーと同じく、映像の内容によっては証拠として扱われないこともあります。 また、防犯カメラの映像は一定期間で消去されることが多いので、事故後できるだけ早めの確認が重要です。
交通事故の目撃者を探す
交通事故の目撃者がいた場合、目撃証言も有力な材料となります。 目撃者が事故について利害関係のない第三者であれば、証言の信用性が高いと判断され、死亡事故の過失割合を適切に主張できる可能性が高まります。 事故時に目撃者を見つけられなかった場合は、ご遺族自ら事故現場周辺の聞き込みをする、警察に立て看板を設置してもらうなどの方法で目撃者を募りましょう。
実況見分調書を取り寄せる
過失割合が本当に適切かどうかを確認するため、実況見分調書を取り寄せて内容を精査することも重要です。 実況見分調書とは、警察が事故現場で実際に見た状況や、当事者から聞き取った内容を記録した公的な文書のことで、ご遺族であれば謄写(コピー)を申請できます。 死亡事故では被害者が亡くなっているため、加害者の言い分に偏った内容で調書が作成されるリスクがあります。 ご遺族が納得できる過失割合を認定してもらうためにも、実況見分調書を確認して、加害者の説明に矛盾がないか、初めて知る事実がないかなどを丁寧に確認しましょう。
取り寄せ~謄写までの流れ
ご遺族が実況見分調書を取り寄せる方法は、次のとおりです。
- ①実況見分を実施した警察署に問い合わせる
加害者が送致された検察庁、送致日、罪名、送致番号を確認します。
⇩ - ②加害者が送致された検察庁に謄写の可否を問い合わせる
事前に検察庁に電話して「遺族として実況見分調書の謄写を希望しています」と伝えると、必要書類や予約方法を案内してもらえます。
⇩ - ③検察庁の窓口で申請し謄写を行う
検察庁の窓口で必要書類を提出し、身分確認を受け、実況見分調書の謄写申請をします。 申請当日に謄写できる場合もあれば、後日指定された日に再度検察庁へ行く場合もあります。
なお、実況見分調書の取り寄せには費用がかかり、タイミングによっては申請先が異なる場合もあるので注意しましょう。
供述調書を取り寄せる
供述調書の内容を精査することも、過失割合が適切かどうかを確認するための手がかりになります。 供述調書とは、警察や検察が、事故当事者や目撃者から聞き取った事故状況や意見をまとめた公的な文書です。 供述者ごとに作成されるため、内容が食い違っていることもありますが、事故直後の加害者の供述内容を確認したり、あとから主張が変わるのを防いだりするのに役立ちます。 「供述調書」と「実況見分調書」は、セットで過失割合を判断する際に用いられるのが一般的です。 ただし、供述調書は実況見分調書に比べて、ご遺族であっても取得できる場面が限られています。起訴後や裁判中など、一定の要件を満たせば、被害者遺族として供述調書の謄写(コピー)申請が認められる可能性もあります。 まずは加害者が送致された検察庁に、供述調書が謄写できるか確認してみましょう。
死亡事故の被害者の過失割合を修正し、賠償金を950万円以上増額できた事例
<事案の概要>
自宅前の道路を横断していた被害者は、スピードを出し前方をよく見ていなかった相手方車両にはねられ、残念ながらお亡くなりになりました。 ご遺族は当初、ご自身で相手方とやり取りをされていましたが、心ない対応や過失割合の主張に「しっかりと賠償金を獲得できる態勢で臨みたい」と考え、弁護士法人ALGにご依頼いただきました。
<弁護士の活動および解決結果>
弁護士が交渉しても、相手方は過失割合について「加害者85:被害者15」という主張を全く変えようとしませんでした。 そこで、まずはご遺族の経済的な負担を少しでも軽減するため、自賠責保険に被害者請求を行って受け取れる保険金を確保したうえで、適切な賠償を求めるため裁判を起こすことにしました。 裁判では、刑事事件の記録などに基づき、「相手方の不注意が非常に大きいこと」や「被害者には事故を回避する方法がなかったこと」などを主張しました。 その結果、裁判所から「加害者95:被害者5」の過失割合が認められました。賠償金についても、交渉段階の約1830万円から970万円増額した、約2800万円を受け取る内容で和解が成立しました(遺族固有の慰謝料を含む)。
死亡事故の過失割合に納得できない場合、弁護士がサポートできることがあるかもしれません
死亡事故では、被害者自ら状況を説明できないため、加害者の主張に基づいて過失割合が判断される危険があります。大切な家族を亡くされたご遺族にとって、過失割合を争うこと自体が大きな精神的負担となるでしょう。 また、適切な認定を得るため、事故状況の調査や証拠収集なども迅速に進めなければなりません。 弁護士であれば、ご遺族に代わって必要な証拠を集め、適切な過失割合の主張をはじめとした加害者側との示談交渉にも対応できます。 過失割合を適切に認定してもらい、正当な賠償金を受け取るため、そして心身の負担を軽減するためにも、まずは弁護士にご相談ください。
交通事故被害者専用 相談窓口まずは交通事故の受付スタッフが丁寧にご対応いたします
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※事案によっては対応できないこともあります。
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