交通事故の後遺障害が正しく認定されるためのポイント・申請方法

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員
交通事故に遭って怪我をしたとき、治療を受けても完全には治らないケースがあります。そのようなケースでは、残念ながら、残ってしまった痛みやしびれ等の後遺症を抱えたまま、これからの生活を送っていかなければなりません。 精神的な苦しさや経済的な厳しさを感じることもあるかと思いますが、「後遺症が残った」と主張するだけでは、適正な賠償は受けられません。「後遺障害である」と認定されることが必要になります。 "後遺症と後遺障害って一体何が違うの?"と思う方もいらっしゃるかもしれませんので、その点も含め、交通事故の後遺障害について、本ページで理解を深めていきましょう。
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目次
後遺障害とは
“後遺障害”とは、後遺症のうち、次のすべての条件を満たすものをいいます。
- ① 交通事故と後遺症に因果関係があることが医学的に証明できる
- ② 労働能力の低下・喪失の原因となっている
- ③ 労働能力の低下・喪失の程度が自賠責保険の等級に該当する
つまり、後遺障害であると認められるためには、まず、後遺症が残っており、この後遺症が交通事故による怪我や病気が原因で発生したということが医学的にも認められる必要があります。 さらに、この後遺症があるために日常生活や仕事への支障が生じていて、その程度が自賠責保険の等級に該当していなければなりません。
後遺障害と後遺症の違い
後遺障害は、広い意味でいう後遺症に含まれます。一般的な“後遺症”とは、それ以上の回復が見込めないために、怪我や病気などの治療を終了した時点(症状固定時点)で残ってしまった症状のことです。 そして、“後遺障害”は、前述した①~③の条件をすべて満たす後遺症を指します。つまり、交通事故との因果関係が医学的に認められ、自賠責保険の等級に該当する程度の労働能力の低下・喪失が認められる後遺症のことです。 後遺障害だと認定されれば、損害賠償の請求が認められますが、後遺障害とまではいえない単なる後遺症だと判断されてしまった場合には、損害賠償を請求しても認められません。
後遺障害の種類
後遺障害は、障害が残った身体の部位別に、障害の内容や程度に応じた等級を設けて分類されています。この分類はとても細かく、全部で137種類に分けられています。身体の部位別にみられる主な後遺障害の内容について、表にまとめたのでぜひご覧ください。
後遺障害の部位 | 後遺障害の内容 |
---|---|
眼・瞼 | 失明・視力の低下、複視、視野の狭窄、瞼の欠損、瞼を開閉する運動機能の低下、まつ毛はげなど |
耳 | 難聴、耳鳴り、聴力の低下、耳の欠損など |
鼻 | 鼻呼吸機能の低下、嗅覚の低下、鼻の欠損など |
口 | 咀嚼機能の低下、発音不能、歯の喪失・欠損など |
神経系統 | 高次脳機能障害、麻痺、記憶障害、てんかん、頭痛、めまい、疼痛、うつ病など |
顔・外見 | 醜状障害(日常露出する部分に目立つ傷が残ったり、皮膚が変色したりすること) |
上肢 | 関節機能の低下、偽関節、変形、欠損など |
下肢 | 関節機能の低下、偽関節、変形、足の長さの短縮、欠損など |
内臓・生殖器 | 呼吸機能の低下、心機能の低下、ペースメーカーの植え込み、消化吸収機能の低下、排せつ障害、臓器の喪失、性交不能など |
体幹・長管骨 | 運動機能の低下、変形など |
手指 | 運動機能の低下、欠損など |
足指 | 運動機能の低下、欠損など |
なぜ後遺障害だと認定される必要があるのか?
治療後に残ってしまった症状について後遺障害であると認定された場合、後遺障害逸失利益や後遺障害慰謝料といった、後遺障害にかかる損害賠償金を請求できます。後遺障害が認定されることで損害賠償額が大きく異なるのは、このためです。
後遺障害逸失利益
後遺障害が残ってしまうと、それまでと同じように働くことが難しくなり、収入が減ってしまうおそれがあります。この減ってしまった利益、つまり後遺障害が残らなければ本来得られていたはずの収入(利益)のことを、“後遺障害逸失利益”といいます。 後遺障害逸失利益は、次の計算式を使って算定します。
基礎収入※1×労働能力喪失率※2×労働能力喪失期間※3に応じた中間利息控除係数
※1:基礎収入は、収入が得られる可能性がなければ発生しないので、①現実に収入がある人、②将来的に収入を得ると考えられる人(学生、子供等)、③経済的価値の認められる活動をしている人(専業主婦・主夫等)しか、後遺障害逸失利益の請求はできません。基本的には、前年の収入を参考にし、特別の事情があれば、賃金センサスという統計上の数値を基礎収入として利用します。 ※2:労働能力喪失率は、後遺障害によりどれだけ労働能力が減少したかという割合のことであり、後遺障害の等級ごとにおおむね決まっています。そのため、より高額な後遺障害逸失利益を受け取るには、適切な等級認定を受けることが大切といえます。 ※3:労働能力喪失期間は、基本的に67歳まで労働することを前提に算定します。ただし、高齢の場合には、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間と仮定するなど、特殊な算定方法を利用します。
後遺障害慰謝料
“後遺障害慰謝料”とは、交通事故が原因で後遺障害を負ったために生じた、精神的苦痛に対する賠償です。後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の等級ごとに決められており、後遺障害が認定されれば、基本的には等級に応じた慰謝料をもらうことができます。 後遺障害慰謝料を含めて、交通事故の慰謝料を決める基準には、“自賠責基準”、“任意保険基準”、“弁護士基準”の3種類があります。 自賠責基準は、自賠責保険が設定する、最低限の補償を目的とする基準であり、3つのうち最も低い金額が算出されることが多いです。また、任意保険基準は、各保険会社が独自に設定している基準であり、自賠責基準に準じた金額になる傾向にあります。そして、弁護士基準は、裁判所が慰謝料を計算する際に利用する基準であり、一般的に最も高い金額が算出されます。 適正な金額の慰謝料を受け取るためにも、適切な後遺障害等級の認定を受けること、弁護士へ依頼する等して弁護士基準で計算した金額で交渉することが重要です。
後遺障害等級と慰謝料の相場
後遺障害慰謝料の金額は、認定される後遺障害の等級に応じて異なります。では、後遺障害の「等級」とは一体何なのでしょうか?その定義を確認するとともに、等級別にもらえる後遺障害慰謝料の金額についても説明していきます。
後遺障害の「等級」とは
後遺障害の“等級”とは、交通事故が原因で残った後遺障害の症状や重さに応じて決められる区分です。 国土交通省が定める、自動車損害賠償保障法施行令別表に基づいて決められており、全部で14段階(別表第2の1級から14級まで)に分かれています。なお、介護を必要とする状態の後遺障害については、自賠責基準を使う場合のみ、別途、2段階(別表第1の1級と2級)に分かれます。 交通事故による後遺障害の症状や程度は被害者ごとに異なり、被害者一人ひとりの状況を見極めて個別に損害額を算出するのは現実的ではありません。そこで、後遺障害をタイプ分けしてまとめようと設けられたのが“等級”です。具体的にどのように賠償額を決定するのかというと、あらかじめ設けておいた一律の基準のどれに当たるのかを審査し、等級ごとに定められた金額を損害額とすることにしています。 1級から14級までのどの等級に認定され、3つの算定基準のうちどれが使われるかによって、もらえる慰謝料の金額は変わってきます。慰謝料の具体的な金額については、次項の表をご覧ください。
後遺障害慰謝料はいくら請求できる?
等級 | 自賠責基準※4 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1650万円(1850万円) | - |
2級 | 1203万円(1373万円) | - |
※4:カッコ内の金額は被扶養者がいる場合の適用額 ※4:自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。
等級 | 自賠責基準※4 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1150万円(1350万円) | 2800万円 |
2級 | 998万円(1168万円) | 2370万円 |
3級 | 861万円(1005万円) | 1990万円 |
4級 | 737万円 | 1670万円 |
5級 | 618万円 | 1400万円 |
6級 | 512万円 | 1180万円 |
7級 | 419万円 | 1000万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
※4:カッコ内の金額は被扶養者がいる場合の適用額 ※4:自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。
表をご覧になればわかるとおり、等級ごとに後遺障害慰謝料の金額は異なります。さらに、同じ等級でも、使われる算定基準によって金額が異なってきます。 自賠責基準と弁護士基準それぞれで計算された慰謝料の金額を比べると、弁護士基準の方が高額であることがわかります。また、自賠責基準には、弁護士基準とは異なり、補償の“限度額”が定められています。この“限度額”の考え方があるため、自賠責基準を使う場合、後遺障害慰謝料や逸失利益等を合わせた金額が限度額を超えてしまったときには、最大でも限度額の賠償しか受けることができません。 なお、同じ交通事故が原因で、身体の別の部位に複数の後遺障害が残ってしまうケースも考えられます。このようなケースでは、それぞれの等級を“併合”し、最終的な後遺障害の等級を認定することになります。 併合では、複数の後遺障害のうち一番重い等級のものを基準として、区分をより重くしていくのが基本です。つまり、併合すると、最終的に認定される等級が基本的に上がるため、慰謝料も増額します。ただし、14級が2つ以上ある場合のように、この原則が適用されない場合もあるので注意が必要です。
後遺障害等級認定を申請する流れ
後遺障害等級認定の申請は、主治医に「これ以上治療を続けても症状は変わらない」と判断された場合、つまり症状固定と診断されてから行います。 具体的には、主治医に作成してもらう後遺障害診断書や、後遺障害を証明するための資料(レントゲン写真やMRI画像等)を集めたりして必要書類を揃えた後、後遺障害等級認定の申請書と併せて保険会社に提出します。提出された書類は、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所へ調査に回され、そこで等級の判断等が行われます。 最後に、保険会社を介して等級認定の結果が被害者に通知され、手続は終了します。
申請するタイミングは?
後遺障害等級認定は、必ず“症状固定”の診断がなされてから申請しなければなりません。 症状固定とは、それ以上治療を続けたとしても症状の大幅な改善が見込めない状態のことを指し、損害額を算定する基準点と考えられています。後遺障害は回復しないことが前提とされている以上、症状固定と判断されてその後回復する可能性がなくならない限り、認定申請は受け付けてもらえません。 症状固定の時期は、怪我の種類や程度によって様々ですが、一般的な傾向はあります。例えば、むちうちは3ヶ月~6ヶ月程度、骨折は6ヶ月~1年半程度、高次脳機能障害は1年~数年で症状固定に至るといわれています。なお、症状固定すると、「治療の必要性がなくなった」と判断され、以降の治療費の支払いが打ち切られるため、症状固定の時期については医師と相談しながら慎重に判断することが重要です。
誰が後遺障害等級を認定するのか?
後遺障害等級認定の申請に必要な書類は、保険会社に提出します。 しかし、実際に等級認定を行うのは、第三者機関である“損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所”です。自賠責保険に寄せられる多くの請求に迅速・公正に対応するために、事業の一環として、損害保険料率算出団体に関する法律に基づき、自賠責保険の損害調査を行っています。 調査事務所は、公正・中立の立場から、必要書類に基づいて、交通事故の発生状況・保険金支払いの適否(事故と後遺症の因果関係等)・発生した損害の額などを調査し、その結果を保険会社に報告します。 なお、後遺障害等級認定は書類審査であり、提出された書類のみで審査されるため、外貌醜状の事案を除き、基本的には被害者が直接出向いて説明等をする必要はありません。
後遺障害が認定されるまでの期間はどのくらい?
後遺障害等級認定の結果が出るまでには、おおよそ1~2ヶ月程度かかるのが一般的です。 ただし、提出した書類に不備があれば、再提出や補正の手間が必要になるため、結果が出るまでに通常より時間がかかります。また、交通事故と後遺症の因果関係が疑われるような複雑な事案や、複数の後遺障害が残っていたり、高次脳機能障害等、特に判断が難しい症状が残っていたりしている事案では、審査が長期化する傾向にあり、半年以上かかってしまうこともあります。
後遺障害等級認定を申請する2つの方法
後遺障害等級認定の申請をするためには、症状固定後、後遺障害診断書等の必要書類を、加害者が加入している自賠責保険に提出する必要があります。そして、誰がこの手順を行うかによって、後遺障害等級認定の申請方法は、“事前認定”と“被害者請求”の2通りに区別されます。
事前認定
“事前認定”とは、加害者が任意で加入している保険会社が、被害者に代わって後遺障害等級認定の申請を行ってくれる方法です。 被害者は、加害者側の任意保険会社に後遺障害診断書等の必要書類を提出するだけでよく、細かい書類や資料を揃える手間なく申請手続を済ませることができます。このように、事前認定では、申請手続をすべて任せることができるため、時間的にも金銭的にも被害者の負担が少ないというメリットがあります。 しかし、デメリットも多くあります。まず、手続が不透明です。加害者側の任意保険会社は、被害者の味方ではなく、あくまでもこちらに保険金を支払わなければならない立場にあるため、被害者側の利益になるよう親身に手続に取り組んでくれることは期待できないでしょう。にもかかわらず、被害者は、申請手続で行われた詳細なやり取りを知ることはできません。 また、後遺障害等級の認定を受けるためには、一定の基準や要件を満たしていることを証明する必要があります。しかし、加害者側の任意保険会社に提出書類の収集を任せる事前認定では、資料不足や書類の不備により、適切な認定が受けられないおそれがあります。 さらに、被害者請求とは異なり、等級認定が受けられた場合でも、保険金の先払いを受けることはできません。
被害者請求
“被害者請求”とは、被害者自身(または代理人の弁護士)が、後遺障害等級認定の申請を行う方法です。 被害者請求では、提出する資料や書類等を被害者自身が精査できるので、手続の透明性が高く、適切な認定を受けやすいというメリットがあります。仮に思ったとおりの認定が受けられなかった場合でも、自分自身で手続を行ったという事実があるため、結果に納得できる可能性が高いでしょう。また、等級認定が受けられた場合、認定された等級に応じた金額の保険金を先取りできる点もメリットです。 その一方で、多くの資料や書類等を集める手間と費用がかかります。しかし、弁護士に依頼すれば、こうした書類の準備をはじめ、申請手続を代わりに行ってくれるので、被害者の負担がかなり小さくなります。 さらに、弁護士は、何が有力な資料となるのか、提出書類は何をどのように書くべきかをよく知っているので、医師に作成してもらった後遺障害診断書の内容が適切かどうか確認できますし、認定を受けるうえで有利になる追加書類を用意することなども可能です。つまり、弁護士に依頼することで、手続の負担を減らしながら、適切な後遺障害等級が認定される可能性を高めることができます。
後遺障害等級が認定されるためのポイント
症状に見合った、適切な後遺障害等級の認定を受けるために重要なのは、次の3点です。
- 後遺障害診断書が適切な内容である
- 交通事故と後遺症との因果関係がしっかりと証明できる
- 適切な通院頻度と通院期間である
具体的にどういうことが重要なのか、以下、詳しく解説していきます。
担当医に後遺障害診断書を正しく書いてもらったか
まず、後遺障害診断書の記載内容が適切でなければなりません。なぜなら、後遺障害診断書は、治療後も被害者に残った具体的な症状やその程度を証明する書類なので、等級認定で特に中心的に審査されるからです。診断書が正しく記載されていなければ、症状に見合った正しい認定を受けることは困難なので、非常に大切な書類だといえます。 また、診断書は医師しか作成できず、記載内容に抜けや誤りがあっても、勝手に加筆・修正することはできません。しかし、医師は医学の専門家であっても等級認定の手続の専門家ではないので、作成してもらった診断書では必要な情報が足りないというケースもあるでしょう。そこで、診断書の作成を依頼する際に気をつけるべきポイントをご紹介します。
・自覚症状を細かく伝える
特に自覚症状に関して、被害者本人と医師の認識が異なっているかもしれません。誤った内容が記載されてしまうことを防ぐためにも、医師に症状を詳しく伝えましょう。こうした認識のズレを防ぐためにも、普段から医師としっかりコミュニケーションをとることは大切です。
・治療中から一貫して症状が続いていることを伝える
等級認定では、交通事故と後遺症の因果関係を証明しなければなりません。事故直後から症状が一貫して続いているという事実は、医学的な見地から一貫性があるのかを判断する際に重視されます。事故と関係があるのかどうか、自己判断せず、治療の段階でみられた症状は全部医師に伝えることが重要です。
・診断書を作成してもらったら、必ず不備がないか確認する
全体に目を通すとともに、特に症状固定日や入院開始日等、結果を大きく左右する箇所に誤りがないか、しっかりと確認する必要があります。さらに、疑問に思うような内容があれば医師に確認し、不明点をなくしておくと良いでしょう。
・弁護士に確認してもらう
等級認定手続に精通した弁護士なら、専門的な視点から診断書をチェックすることができるので、実際に申請手続を行う前に一度確認してもらうことをおすすめします。
交通事故との因果関係が証明できるかどうか
次に、交通事故と被害者に残った後遺症との間に客観的な因果関係があることを証明できなければなりません。つまり、交通事故による怪我が原因で後遺症が残ったと証明できるよう、資料や書類を揃える必要があります。 交通事故と後遺症との因果関係は、事故の態様(追突か、正面衝突か等)や、車両の損傷の程度、どのタイミングでどのように怪我したかという受傷機転、症状の推移といった様々な点を検討して判断されます。なお、自覚症状だけでは因果関係を証明しにくいので、異常が写ったX線写真やMRI画像、CT画像等で他覚所見がみられることを証明するのも有効です。 また、交通事故に遭ってから初診までに時間が空いてしまうと、本当に事故を原因とする怪我や症状なのかが疑われ、因果関係が認められなくなってしまうおそれがあるため、事故に遭ったらすぐに受診することが大切です。
きちんと通院できているかどうか
後遺障害等級認定では、適切な頻度で適切な期間通院していることも重視されます。つまり、適切な認定を受けたいのであれば、症状固定が診断されるまでは、定期的に通院を続ける必要があります。 通院の頻度があまりに低い、通院回数自体が少ない、または通院期間が怪我の程度に見合わず長すぎたり短すぎたりする場合には、真面目に治療しなかったために完治せず、後遺症が残ってしまったのではないかと疑われてしまいかねません。そして、後遺症が残った原因は交通事故にあるのではなく、被害者の不真面目な態度にあると判断されてしまい、後遺障害等級認定が受けられなくなってしまうおそれがあります。 また、入通院慰謝料は、治療期間や通院回数に基づいて計算されるので、適切な期間・頻度で通院していないと、本来もらえたはずの金額から減額されてしまいます。慰謝料の金額の点だけからすると、最低でも月10回は通院することをおすすめします。 なお、通院を続けているなか、保険会社から治療費の打ち切りを打診されることがあります。しかし、治療費は症状固定するまではもらい続けることができるものですし、症状固定の時期を判断するのは医師の役目です。したがって、治療費の打ち切りを打診された場合には、医師に相談し、医師が「まだ治療が必要だ」と判断したときには、保険会社にその旨を伝えて治療を継続するべきです。医師が治療の必要性を認めていれば、たとえ治療費を打ち切られてしまったとしても、後から請求して受け取ることができます。
後遺障害等級が認定されないケースとその理由
思うように後遺障害等級が認定されない場合には、次に挙げる理由があるのかもしれません。
・通院実績が乏しい
治療期間が短すぎたり、症状固定が早すぎたりといった、通院した実績が乏しいようなケースでは、怪我や後遺症の程度が軽いと考えられ、適切な等級が認められないおそれがあります。また、通院頻度が低すぎるようなケースでも、等級認定が受けられないことがあります。
ただし、身体の一部が欠損した等、後遺症があることが明らかで、治療期間に関わらず回復が見込めないようなケースでは、通院が少なくとも後遺障害等級が認定されるでしょう。
・交通事故との因果関係が証明できない
交通事故と後遺症の因果関係は、後遺障害等級を審査するうえでかなり重要視されます。事故から初診までに時間がかかってしまったケースや、画像での異常がみられないケース等では、因果関係が認められないとして、適切な等級認定が受けられないおそれがあります。
・後遺障害診断書に記載された自覚症状の内容が不十分
後遺障害診断書を作成した医師と被害者の間に、自覚症状に関する認識のズレがあり、実際よりも軽い症状や異なる症状が記載されてしまったようなケースでは、後遺障害に該当しない症状だと判断され、正しい認定がなされないことがあります。
後遺障害等級の認定結果に納得いかない場合の対処法
異議申立てを行う
後遺障害等級が非該当だと判断されたり、認定された等級が思ったよりも低かったりする等、結果に納得がいかない場合には、異議申立てを行い、等級認定について再度審査をしてもらうことができます。 異議申立ては、事前認定の場合には加害者側の任意保険会社へ、被害者請求の場合には自賠責保険会社へ、異議申立書を提出することにより求めます。なお、異議申立ては、自賠責保険の請求権の時効(症状固定から3年)にかかるまでは、繰り返し行うことが可能です。 もっとも、期待する結果が出ないからといって、闇雲に異議申立てを行うべきではありません。後遺障害診断書の内容に不備があった、または提出した資料に不足があった等、提出した書類や資料を修正する余地がある場合や、必要な検査が実施されていなかった等、新たな証拠・資料を提出できる場合など、等級認定が変更される見込みがなければ、異議申立てを行ったとしても期待する結果にはならないでしょう。 異議申立てを成功させるには、どうして初回申請時に思ったよりも低い等級や非該当だと判断されてしまったのか、原因を追究することが大切です。そのうえで、こちらの主張を裏づけられる新たな証拠や資料を集めましょう。特に医学的資料(X線・MRI・CT画像所見、診断書、医師の意見書、カルテ、検査結果など)が有力な資料となりやすいと考えられています。
最終的には裁判で争う
異議申立ての結果にも納得いかなかった場合には、最終手段として、民事裁判を起こし、裁判所に後遺障害等級についての判断を委ねることができます。 裁判所は、自賠責損害調査事務所等の審査結果に縛られないので、異なる後遺障害等級が判断される可能性があります。とはいえ、基本的にはこれらの審査結果を重視して判断を下すため、ご自身の主張を裏づけるだけの説得力のある資料や証拠を揃えるとともに、論理的な主張を行い、審査結果を覆す必要があります。 また、裁判で後遺障害等級について争った場合、1~2年程度かかってしまうのが一般的です。判決を待たずに和解で争いを終了させる場合でも、半年程度はかかります。裁判で争う際には、すぐに決着がつくわけではないことに留意しましょう。
弁護士のサポートにより後遺障害等級14級9号が認定され、総額310万円の賠償金を獲得した事例
ここで、実際に弁護士法人ALGがサポートし、後遺障害等級14級9号の認定を受け、損害賠償金を獲得できた事例をご紹介します。 信号待ちで停車中、相手方車両に追突された依頼者は、事故直後から、頚部と腰部の痛みや手のしびれ等の症状を感じたため、個人の整形外科病院で通院治療を始めました。しかし、今後の手続等に不安があったため、専門家の協力を受けるべく、弊所にご依頼いただきました。 弁護士は、まず、依頼者の治療内容や検査結果等を確認し、治療の受け方について助言しました。そして、約1年の通院治療後、被害者請求により後遺障害等級認定を申請した結果、後遺障害等級14級9号の認定を受けることができました。この結果を踏まえ、弁護士が弁護士基準で賠償額を計算し交渉に臨んだところ、通院慰謝料110万円、後遺障害慰謝料100万円、後遺障害逸失利益約80万円を含めた、総額約310万円の賠償金を支払ってもらう内容で示談を成立させることができました。
ご家族に後遺障害が残ってしまい、将来が不安な方へ
ご家族が交通事故に遭われ、幸いにして一命をとりとめたとしても後遺障害が残ってしまったら、これからの生活に不安を感じてしまうのは当然のことです。 そのような不安を少しでも解消するためには、適正な賠償を受けることが大切です。とはいえ、加害者側との示談交渉はストレスがかかるものです。被害者側に不利な内容の示談案を提示されることもあります。 そこで、弁護士にご依頼いただければ、被害者の方に代わって示談交渉いたします。さらに後遺障害等級認定の申請手続を任せていただくことで、適切な等級認定を獲得し、賠償金を増額できる可能性があります。ご家族に後遺障害が残ってしまい、不安や心配を抱えている方は、できる限り早期に弁護士にご相談ください。適正な賠償を受けられるよう、全力でサポートいたします。
納得できる交通事故の後遺障害の認定は弁護士にお任せください
ここまで、後遺症が残ってしまいお困りの方へ向けて、その賠償の請求方法等について解説してきましたが、理解を深めていただけたでしょうか。 交通事故の賠償金のうちの多くを占めるのが、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益といった、後遺障害を理由に請求できる賠償金です。これらの賠償金の額は、認定された後遺障害等級の区分によって大きく変わってきます。つまり、適正な金額の賠償金を受け取るためには、適切な後遺障害等級認定を受けることが重要だといえます。 そのためには、被害者請求によって後遺障害等級認定を申請するべきですが、専門知識が必要ですし、手続も煩雑です。そこで、弁護士の出番です。後遺障害等級認定の申請手続をサポートした経験が豊富な弁護士に依頼すれば、こうしたデメリットをカバーしつつ、納得のいく等級認定を受けられる可能性が高まります。 弁護士法人ALGでは、交通事故チームが医療チームと連携して被害者の方をトータルサポートするので、後遺障害等級認定でたびたび問題となり得る、高度な医学論争にも対応することが可能です。交通事故による後遺障害について、等級認定の申請手続にご不安のある方や認定結果に納得がいかない方は、ぜひ弊所にご相談ください。経験豊富な弁護士がお話を伺い、しっかりと対応させていただきます。
交通事故被害者専用 相談窓口まずは交通事故の受付スタッフが丁寧にご対応いたします
交通事故に遭いお困りの方へ


交通事故事件の経験豊富な
弁護士が全面サポート
弁護士費用特約を使う場合
本人原則負担なし※保険会社の条件によっては
本人負担が生じることがあります。
弁護士報酬:成功報酬制
※死亡・後遺障害等級認定済みまたは認定が見込まれる場合
※事案によっては対応できないこともあります。
※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。