死亡事故の慰謝料 | 種類や計算の特徴

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員
警視庁の統計によれば、令和元年の交通事故死者数は【3215人】にのぼります。 これほどの数の方が無念にも事故で突然命を奪われるなか、その分、悲しみや憎しみ、絶望、後悔、怒りといった様々な想いを抱えた“遺族”の方がいます。 事務的に進められる交渉に、戸惑ったり、身が入らなかったりするのも当然でしょう。 ですが、保険会社から提示される死亡慰謝料は正当とは言い切れない場合も多く、結果的に損をしてしまうかもしれません。亡くなられた被害者のためにも、新たな一歩を踏み出すためにも、正当な賠償を受けるべきです。 ここでは、死亡慰謝料の概要や相場、計算方法などについて詳しく解説していきますので、ぜひお役立てください。
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目次
死亡事故の慰謝料とは
死亡事故は、死亡した被害者本人やその遺族の生活を一変させます。被害者本人は将来を奪われ、遺族は生涯癒えぬ傷を負うこととなるでしょう。 死亡慰謝料とは、こうした死亡事故により被った苦痛に対して支払われるお金です。 なお、搬送され入院後に亡くなった場合は、事故との因果関係が認められれば、死亡慰謝料のほか入通院により被った苦痛に対する慰謝料(入通院慰謝料)や、治療費なども請求することができます。 死亡慰謝料には、死亡した「被害者本人」と「遺族」の分があります。それぞれの概要について詳しくみていきましょう。
被害者本人の慰謝料
「亡くなっている被害者本人の慰謝料がもらえる」というのは、不思議な感覚もあるでしょう。しかし、事故で突然人生を奪われてしまった苦痛は計り知れません。このため、たとえ亡くなっているとしても、賠償を受けることが“被害者の権利”として認められています。 ただし、被害者は亡くなっていますので、“被害者の権利”は、相続人である近親者が受け継ぐこととなります。基本的には、被害者の配偶者、子供、父母、兄弟姉妹が近親者の対象となり、話し合いでの変更などがない限り、法律で決まっている割合によって分けられることとなります。
遺族の慰謝料
突然訪れた死に、計り知れない苦痛を強いられるのは本人だけではありません。遺族もまた多大なる苦痛を受け、今後の人生においても抱えていくこととなるでしょう。 この点、死亡慰謝料のうち「遺族固有の慰謝料」として、被害者本人の分とは別に遺族にも賠償請求権が認められています。 民法711条によると、「遺族固有の慰謝料」が認められるのは、被害者の父母、配偶者、子供とされていますが、関係性によっては被害者の兄弟姉妹や祖父母、内縁の妻(夫)なども対象となるケースもあります。 実際、幼い子供が被害者の場合で、その兄弟姉妹に遺族固有の慰謝料が認められた裁判例もあります。これは、幼いころの兄弟姉妹の結びつきは大人よりも強く、突然失った苦痛は相当なものとみなされるためです。 このように、被害者との関係性や事案によっては、法律で定められている枠を超えて遺族固有の慰謝料が認められることもあります。
慰謝料を請求するタイミングは?
死亡慰謝料は、他の損害賠償項目と併せて請求するのが一般的です。 死亡事故の場合は、葬儀関係費用も請求することができますので、四十九日法要が済んでから慰謝料などの協議を始めるのが基本です。 心境的にも、事故当初よりも落ち着いて交渉に臨めると思いますが、辛い場合には無理せずに弁護士に相談することをおすすめします。
死亡事故の慰謝料相場と計算の特徴
では、死亡慰謝料は、具体的にいくらなのでしょうか? 死亡慰謝料の金額は、3つある基準のうちどれを根拠とするかによって違いが出てきます。金額の目安や導き出し方について、詳しくみていきましょう。
死亡事故の慰謝料相場
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準※ | |
---|---|---|---|
一家の支柱 | 400万円 | 2000万円程度 | 2800万円 |
母親・配偶者 | 1750万円程度 | 2500万円 | |
その他 | 1500万円程度 | 2000万~2500万円 |
※出典元:「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準2021(令和3)年版」(通称:赤い本)
請求者1人 | 550万円 |
---|---|
請求者2人 | 650万円 |
請求者3人以上 | 750万円 |
扶養されていた人がいる場合 | 200万円 |
死亡慰謝料の計算の特徴
自賠責基準での計算の特徴
- 本人分と近親者分が別枠で設けられている
- 本人分の金額は400万円と一律で決まっている
- 近親者分は、人数と被扶養者の有無で金額が決定する
- 改正された基準額に注意が必要である(施行日:令和2年4月1日)
任意保険基準での計算の特徴
- 相場は本人分と近親者分を合わせた金額となっている
- 保険会社ごとの社内基準かつ非公開であるため、厳密な計算方法はわからない
弁護士基準での計算の特徴
- 相場は本人分と近親者分を合わせた金額となっている
- 被害者の属性・家庭内の役割によって相場が異なる
- 関係性によって近親者として認められる対象が増える可能性がある
- 裁判を想定した基準であるため、弁護士以外では主張が困難なケースが多い
慰謝料の算定額に影響する3つの基準の違い

自賠責基準とは、法律により加入が義務化されている“自賠責保険”から支払われる基準をいいます。 自賠責保険は、加入せずに一般道を運転すると刑罰に処せられますので、“強制保険”ともいわれています。被害者の損害を「最低限救済する」ことを目的としていますので、3つの中で最も金額が低くなることがほとんどです。 任意保険基準とは、さまざまな保険会社が独自に設定した“社内基準”といえます。社外秘のため詳細は公開されていませんが、基本的に自賠責基準とほぼ変わらないか、少し上乗せされた程度の金額といえるでしょう。 弁護士基準とは、過去の裁判の結果をもとに設けられた基準をいいます。このため、“裁判基準”ともいわれ、基本的には3つの中で最も高額な結果となります。一般の方が弁護士基準で交渉することは一筋縄ではいきませんが、弁護士が介入することで弁護士基準に近い金額で請求することができます。
ケース別の死亡慰謝料
では、死亡慰謝料の算定には、年齢や個別の事情がどのくらい影響してくるのでしょうか? 自賠責基準では基本的に考慮されませんが、弁護士基準では個別具体的な事情が考慮され、死亡慰謝料や損害賠償金額が増額する可能性があります。 被害者が高齢者の場合、子供の場合、内縁者の場合といった3つのケースを取り上げて具体的にみていきましょう。
高齢者の死亡慰謝料
そもそも“高齢者”といった括りに、具体的な年齢の決まりはありません。一般的には、国民年金の受給対象年齢である65歳以上を高齢者とみなすことが多いです。 また、高齢者だからといって死亡慰謝料が減ってしまうようなことはありません。“かけがえのない命”に年齢は関係ないからです。 このため、弁護士基準だと本人分と近親者分を合わせて2000万~2500万円が高齢者の死亡慰謝料の相場となります。 また、高齢者である被害者が、「仕事をしていた」「年金を受給していた」「主婦(主夫)で家事を担っていた」などの事情がある場合には、慰謝料やその他の損害賠償項目において増額する可能性があります。 例えば、仕事をして家族の生計を担っていた場合は、弁護士基準で2800万円に近い水準で死亡慰謝料を請求することができたり、年金を受給していた場合や一家の家事を担うような主婦(主夫)であった場合は、死亡逸失利益の算出において無職の場合に比べて増額したりする可能性があります。
子供の死亡慰謝料は高額になることも
子供の死亡慰謝料は、高額になることも少なくありません。 子供は、他の年代に比べて家族とのつながり・絆がより強いといえます。そのため、本人もさることながら、遺された家族の苦痛は相当なものであるとみなされ、「遺族固有の慰謝料」が増額したり、遺族とみなす対象が増えたりして、結果的に受け取れる死亡慰謝料が増額する可能性があります。 この点、何歳までを子供とみなすかが争点となりがちですが、基本的に同居している場合や、被害者が遺族にとって唯一の幼い我が子である場合、被害者に幼い兄弟姉妹がいる場合などは、増額が見込める状況といえるでしょう。 また、死亡事故に遭わなければ将来得られるはずだった「死亡逸失利益」の賠償においては、子供の将来の可能性は無限大ともいえますので、増額する余地があります。 ただし、交渉するうえで的確な主張・立証が必要となるケースともいえます。不安がある際は弁護士に依頼したほうが良いでしょう。
内縁者の死亡慰謝料
内縁の夫や妻には相続権がないため、「被害者本人の慰謝料」は請求できないものの、「遺族固有の慰謝料」については請求が認められています。 内縁とはいえ、一緒に生活していたり、同居期間が長かったり、親族や勤務先などから公認の仲であったりする場合には、“婚姻関係にある夫婦と実質的に変わらない関係”とされるため、他の遺族と同じように、遺族固有の慰謝料を受け取ることができます。 なお、相続人である親族公認の関係であれば、話し合いなどにより、被害者本人の慰謝料を受け取れる可能性もあります。話し合いや手続きに関しては、弁護士のアドバイスを受けるとより安心できるでしょう。
死亡慰謝料が増減する要素
弁護士基準の死亡慰謝料は、自賠責基準のように定額ではなく、事情により金額が増減することがあります。 では、死亡慰謝料が増額したり、減額したりする要素には、どのようなものが考えられるのでしょうか?
死亡慰謝料の増額事由
死亡慰謝料が増額するケースとしては、「交通事故の内容が悪質である場合」や「加害者の態度が不誠実であった場合」などがあげられます。 具体的には、以下のような要素が考慮され、増額することがあります。
- 加害者の運転の悪質性(飲酒運転、無免許運転、薬物服用運転、スピード違反、信号無視、ひき逃げなど)
- 殺人と捉えられてもおかしくないような残虐な事故態様
- 複数名が死亡するような事故態様
- 示談交渉や裁判における、加害者の明らかな虚偽の証言
- 加害者による証拠隠滅
- 遺族の仕事や学業、健康面に対する著しい悪影響
なお、一つひとつの個別具体的な事情が考慮されるため、増額幅などに厳密な決まりはありません。
死亡慰謝料の減額事由
死亡慰謝料を含めた損害賠償額が減額するケースもあります。 以下、簡単な解説とともにご紹介します。
◆過失相殺
死亡したとはいえ、被害者に注意義務違反や交通違反などがあった場合には、過失を負わなければなりません。損害賠償金は、発生した交通事故の責任の度合いである「過失割合」に応じて相殺されることとなります。これを「過失相殺」といいます。
被害者の負担する過失が大きくなればなるほど、受け取れる金額は減ってしまうという仕組みです。
死亡事故では、加害者側の証言しかない場合が多く、過失の判断が難しくなります。死亡事故の過失の争いは、一筋縄ではいかないため、早い段階で弁護士にご相談ください。
◆素因減額(身体的素因、心因的素因)
被害者が死亡した原因として、“交通事故とは別に”、被害者の持病や、過去に治療したことがある疾患(既往症)、日常生活に支障をきたすほどの体格・体質などが影響していると認められる場合、減額されるおそれがあります。これを身体的素因による「素因減額」といいます。
自殺目的の飛び出し死亡事故といったケースは、心因的素因によるものと判断され、同じく減額されることもあります。
死亡慰謝料の分配方法
相続人 | 相続の割合 |
---|---|
配偶者と子供 | 配偶者1/2、子供1/2 ※子供が複数名いる場合は、子供1/2の分を人数で分け合うこととなります。 |
配偶者と親 | 配偶者2/3、親1/3 ※両親で分ける場合は、親1/3の分を分割することとなります。 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 ※兄弟姉妹が複数名いる場合は、兄弟姉妹1/4の分を人数で分け合うこととなります。 |
親と子供 | 子供のみ |
親と兄弟姉妹 | 親のみ |
配偶者のみ | 配偶者のみ |
子供のみ | 子供のみ ※複数名いる場合は、均等に分け合うこととなります。 |
親のみ | 親のみ ※両親で分ける場合は、1/2ずつ分け合うこととなります。 |
兄弟姉妹のみ | 兄弟姉妹のみ ※複数名いる場合は、均等に分割することとなります。 |
死亡事故の慰謝料に相続税などの税金はかかる?
慰謝料を含む交通事故による損害賠償金は、“例外をのぞき”、基本的に税金はかかりません。 この“例外”にあたり税金がかかる対象となるには、“利益となるか否か”がポイントとなってきます。以下のようなケースをいいますのでチェックしていきましょう。
◆高額な見舞金
常識離れした高額な見舞金は、所得税の対象となる可能性があります。
◆給与とみなされるような見舞金
休業損害や逸失利益などの補償とは別に、会社から給与とみなされるような金額の見舞金を受け取った場合は、所得税を納める必要があるケースもあります。
◆過失分の人身傷害保険による補填
原則、非課税となる“過失相殺後”の損害賠償金とは別に、被害者が加入している人身傷害保険から“過失相当分”の保険金を受け取った場合は、所得税の納付が必要です。
◆人身傷害保険の死亡保険金
人身傷害保険には、「契約者」「被保険者」「受取人」の地位があります。これに該当し得るのは、被害者本人、配偶者、子供などが想定できるでしょう。被害者がどの地位に該当するのか、他の地位に該当するのは誰かによって、納付しなければならない税金が異なります。
所得税:契約者=受取人 被保険者が死亡した場合
相続税:契約者=被保険者 受取人が死亡した場合
贈与税:契約者≠被保険者≠受取人 誰かが死亡した場合
詳しくは、国税庁のHPをご確認ください。
国税庁:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1750.htm
死亡慰謝料とは別に請求できるもの
死亡事故の場合に、死亡慰謝料とは別に請求できる損害賠償項目を整理しておきましょう。
- 治療費(入院雑費、付添看護費用または休業損害、付添人・近親者の交通費)
- 入通院慰謝料
- 被害者の休業損害
- 葬儀関係費用
- 死亡逸失利益
- (裁判をした場合)弁護士費用
事故後搬送され入院後に亡くなった場合などは、その分の損害についても請求することができます。
死亡逸失利益の請求について
死亡逸失利益は、受け取れる賠償額にとても影響力のある損害項目の一つです。 死亡逸失利益とは、文字どおり事故により死亡して逸失した利益のことです。死亡事故に遭わなければ得られたであろうお金、いわば“将来の可能性”ともいえるでしょう。 死亡慰謝料は精神的苦痛を慰謝するために支払われますが、死亡逸失利益は将来の可能性を奪われた損害分を以下のような定型の計算式で算定し、請求していきます。
【死亡逸失利益】
基礎収入額 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数
専門用語が並ぶ算定根拠のなかでも、「基礎収入額」は金額を大きく左右しますので非常に重要です。 死亡した被害者の属性は一通りではありません。働いている人はイメージがつきやすいかもしれませんが、会社員や会社役員、フリーランスなどの他にも、主婦や学生、子供や高齢者といったさまざまな属性に対して、それぞれの導き出し方があります。 詳しくは、「生活費控除率」や「就労可能年数」といった他の算定根拠とともに以下のページで解説していますので、ぜひご一読ください。
正当な金額の死亡慰謝料を受け取るためにも弁護士にご相談ください
死亡事故は、他の態様に比べて損害賠償金額が高額になることが多いです。かけがえのない命を奪われてしまったのですから、「正当な金額の賠償を受けたい」と思われるのは当然でしょう。 一方で、相手方となる保険会社と折り合いがつかず長引くことは、精神衛生上好ましくないうえ、“時効”といった新たな懸念要素が生じるおそれともなります。 くわえて交渉においては、「亡くなっているため、当事者である本人が主張できない」点がリスクとなってきます。加害者の言い分に寄った過失割合が決められ、不当な責任を負うことは何としても避けたいところです。 結論としては、勇気を出して弁護士に相談しましょう。 弁護士は、正当な金額の損害賠償金を請求するために、亡くなられた被害者や遺族に代わって、法的根拠に基づき的確な主張・立証を行います。 弁護士法人ALGでも、「期待以上の結果が得られた」「こんなに親身になってくれるなんて…」と、もっと早く相談していればよかったというお声をたくさんお寄せいただいています。 亡くなられた被害者の無念を晴らすためにも、遺族の方々が新たな一歩を踏み出すためにも、弁護士が味方となってとことん寄り添いますのでご安心ください。ぜひ、ご相談をお待ちしています。
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