歩行者と車の事故の過失割合|歩行者の過失割合をケース別に解説
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
この記事でわかること
歩行者の過失割合は、車と比べて有利に(小さく)なるのが一般的です。
歩行者は生身で事故の衝撃を受けるため、車よりも圧倒的に弱く、避難能力や防御力が低い=保護されるべき存在とされています。したがって、歩行者は交通弱者として優先的に守られています。
ただし、歩行者だからといって、どのような事故状況でも必ず過失割合が有利になるわけではありません。歩行者にも過失が認められれば、過失割合が修正される可能性もあります。
この記事では、歩行者と車の事故の過失割合をケース別で解説していきます。
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目次
歩行者と車の事故、歩行者の過失割合はどうなる?
歩行者と車の事故では、車よりも歩行者の過失割合の方が小さくなりやすいです。
歩行者は車よりも不利で弱い存在とされ、交通弱者として法律で手厚く保護されるためです。また、事故の衝撃を生身で受けるため、事故による死亡者は歩行者が高い割合を占めています。
ただし、歩行者側に「急な飛び出し」「信号無視」等の交通違反がある場合は、歩行者にも過失がつくことがあります。
例えば、「横断歩道を黄色信号で横断し始めた歩行者」と「赤信号で進入した車」の事故では、歩行者に以下の過失が認められるでしょう。
- 黄色信号で横断を開始した
- 左右の安全確認義務を怠った
この事故の基本の過失割合は、歩行者10:車90です。
過失割合によって受け取れる慰謝料額が変わる!
過失割合とは、事故発生の責任が当事者双方にどれくらいあるのかを数値化したものです。被害者でも、過失割合によっては受け取れる賠償金が減額する可能性があります。
例でみていきましょう。
【例】入通院慰謝料を100万円請求できる場合
被害者に過失がないケース
被害者は、100万円を全額請求できます。
被害者の過失が10%のケース
被害者の賠償金から過失分が差し引かれるため、100万円×(1-0.1)=90万円を請求できます。
請求できる賠償金から自身の過失分を差し引くことを過失相殺(かしつそうさい)といい、被害者にも過失が認められる場合は必ず行わなければなりません。
過失相殺について、さらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
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【ケース別】歩行者と車の事故の過失割合
歩行者と車の事故は、歩行者が優先的に守られるため、歩行者の過失割合が小さくなりやすいです。ただし、歩行者側に違反行為等が認められると、過失割合が変動するため注意しましょう。
横断歩道上での事故では、原則として車の過失割合が100%になる
横断歩道は、歩行者が道路を横断するために設置されているので、基本の過失割合は歩行者0:車100です。
法律上、車には「横断歩道直前で一時停止し、歩行者の通行を妨げてはいけない」等の決まりがあり、横断する歩行者が強く保護されています。そのため、横断歩道付近を通過する車には特に強い注意義務が課されています。
信号機がある横断歩道上での事故
歩行者が横断歩道を横断中にも、多くの事故が発生しています。
信号機がある横断歩道上の事故では、歩行者側・車側の信号機の色によって過失割合が変動します。
歩行者側が青信号だった場合
歩行者側の信号が「青」だったのに対し、車側が「赤」だった場合、基本の過失割合は歩行者0:車100となります。車は、赤信号の際に所定の停止位置を越えて進行してはならず、青信号で横断している歩行者が絶対的に保護されるからです。
青信号に従って横断する歩行者には、基本的に過失は認められません。
歩行者側が赤信号だった場合
歩行者側の信号が「赤」だった場合は、車側の信号機の色によって、下表のとおり基本の過失割合が変動します。
| 歩行者の信号 | 車の信号 | 過失割合 |
|---|---|---|
| 赤 | 赤 | 歩行者20:車80 |
| 黄 | 歩行者50:車50 | |
| 青 | 歩行者70:車30 |
歩行者が横断中に信号が変わった場合
歩行者が横断中に信号が変わった場合は、どのように変わったのかによって、下表のとおり基本の過失割合が変動します。
| 歩行者の信号 | 車の信号 | 過失割合 |
|---|---|---|
| 青→赤 | 青 | 歩行者20:車80 |
| 黄→赤 | 青 | 歩行者30:車70 |
横断歩道でないところでの事故
横断歩道以外の場所で事故に遭った場合は、道路の性質や車の進行方向等によって、過失割合が変動します。
歩行者と車の事故である限り、車に課せられる注意義務は依然として重いです。一方、歩行者も、横断歩道が近くにある際は横断歩道を利用しなければならないため、その義務を怠った場合は一定の過失がつきます。
信号機がある横断歩道付近での事故
【横断歩道通過後の事故】
| 歩行者の信号 | 車の信号 | 過失割合 |
|---|---|---|
| 青 | 赤 | 歩行者5:車95 |
| 黄 | 赤 | 歩行者15:車85 |
| 赤 | 赤 | 歩行者25:車75 |
| 黄 | 歩行者50:車50 | |
| 青 | 歩行者70:車30 |
【横断歩道手前の事故】
| 歩行者の信号 | 車の信号 | 過失割合 |
|---|---|---|
| 青 | 赤 | 歩行者10:車90 |
| 黄 | 赤 | 歩行者20:車80 |
| 赤 | 赤 | 歩行者30:車70 |
| 黄 | 歩行者50:車50 | |
| 青 | 歩行者70:車30 |
横断歩道通過後に発生した事故は、双方の信号機の色によって、基本の過失割合が変動します。歩行者は、横断歩道が付近にあるときは、基本的に横断歩道を利用して横断しなければなりません。
また、信号機がある横断歩道の場合、付近にも信号機による規制が一定程度及ぶため、歩行者は信号機に従い横断する必要があります。
横断歩道手前で発生した事故も、双方の信号機の色が重要です。歩行者が横断歩道を利用して横断する際は、信号が青であっても最小限の注意義務が課せられます。
したがって、【横断歩道通過後】【横断歩道手前】の事故では、歩行者側にも一定の過失が認められます。
交差点又はその直近を横断中の事故
【幹線道路を横断中の事故】
横断歩道のない交差点又はその直近を横断中の事故で、横断した道路が幹線道路(交通量が多い)や狭路の場合、歩行者側にも10~20%の過失がつきます。幹線道路等では、歩行者は通常よりも重い注意義務を負うためです。
基本の過失割合は、下表のとおりです。
| 幹線道路等の横断 | 直進車と衝突 | 歩行者20:車80 |
|---|---|---|
| 右左折車と衝突 | 歩行者10:車90 | |
| 狭路等の横断 | 車と衝突 | 歩行者10:車90 |
| 優先関係のない交差点 | 車と衝突 | 歩行者15:車85 |
歩道がない道路上での事故
歩行者が道路のどこを歩いていたのかによって、基本の過失割合が変動します。
| 右側通行 | 歩行者0:車100 | |
|---|---|---|
| 左側通行 | 歩行者5:車95 | |
| 中央部分を通行 | 幅8m以上の道路 | 歩行者20:車80 |
| 上記以外の道路 | 歩行者10:車90 | |
駐車場内での事故
駐車場内での事故では、歩行者10:車90が基本の過失割合です。駐車場は車を停めるための場所であり、歩行者側にも注意義務が課されるからです。
ただし、歩行者が児童や高齢者、幼児、身体障害者等の場合は、過失割合が変動します。
【例】
- 児童、高齢者の場合 → 歩行者5:車95
- 幼児、身体障害者の場合 → 歩行者0:車100
高速道路上での事故
高速道路上を歩くことは基本的に禁止されているため、高速道路での事故は歩行者の過失割合が高くなります。ケースごとの過失割合を詳しく見ていきます。
高速道路に侵入した歩行者の場合
高速道路は、「車以外の方法で通行してはならない」と法律で定められているため、基本の過失割合は歩行者80:車20です。
法律上、高速道路上に歩行者がいることは予定されておらず、高速道路にいたこと自体が歩行者の過失となるため、歩行者側の過失が大きくなります。
ただし、車側に著しい過失(わき見運転、携帯電話使用等)や重過失(居眠り運転、無免許運転等)が認められる場合は、車側の過失が大きくなります。
事故・故障等で車から離れた場合
事故や故障等で車から離れた際に事故が発生した場合は、歩行者40:車60が基本の過失割合となります。
高速道路上に駐車している車がある場合、非常措置を行っている可能性が高く、付近(概ね10m以内)に人がいることも多いです。
車側も「おそらく付近に人がいるだろう」と予測できるため、歩行者が保護される(=過失割合が小さくなる)のが通常です。
歩行者の過失割合が修正される要素とは?
歩行者の過失割合が修正される要素(修正要素)には、事故の時間帯や場所、歩行者の属性や行動、車側の過失等が挙げられます。
「修正要素」とは、基本の過失割合を増減させる要素(個別事情)をいい、適切な過失割合を決定するうえで重要なポイントです。
過失割合は、事故状況に基づいた“基本の過失割合”を求めたうえで、さらに細かい個別事情も考慮して最終的な割合を確定させなければなりません。
歩行者の過失割合が減算される要素
歩行者の過失割合が減算される要素には、以下のような事情が挙げられます。
| 減算要素となる事情 | 歩行者の過失 |
|---|---|
| 住宅・商店街での事故 | -5~-10% |
| 歩行者が幼児・児童・高齢者・障害者 | -5~-10% |
| 集団横断中の事故 | -5~-10% |
| 自動車側の著しい過失 | -5~-10% |
年齢について
- 幼児:6歳未満
- 児童:6歳以上13歳未満
- 高齢者:概ね65歳以上
歩行者に減算要素となる事情が認められる場合は、歩行者側の過失割合が小さくなります。
歩行者の過失割合が加算される要素
歩行者の過失割合が加算される要素には、以下のような事情が挙げられます。
| 加算要素となる事情 | 歩行者の過失 |
|---|---|
| 夜間の事故 | +5% |
| 幹線道路上の事故 | +5~+20% |
| 横断禁止場所の横断 | +5~+10% |
| 佇立・後退・ふらふら歩き・急な飛び出し | +5~+10% |
歩行者側の信号無視や急な飛び出しといった違反行為は、過失割合の加算要素となります。また、夜間や幹線道路が加算要素となる理由は以下のとおりです。
- 夜間で車が歩行者を発見しにくいため
- 交通量が多く、歩行者にも強い注意義務が課せられるため など
飛び出し事故の詳細は、以下のページをご覧ください。
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正しい過失割合を主張するために必要な「証拠」
交通事故の過失割合は、示談交渉で特にもめやすい項目のひとつです。正しい過失割合を主張するには、以下のような証拠を集めることが大切です。
証拠の例
- 事故状況を詳細に記載したメモ
- 事故現場や事故車の写真
- 目撃者からの証言
- ドライブレコーダーの映像
- 防犯カメラの映像
- 実況見分調書 など
特に、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像、実況見分調書等は、事故状況を明確に示す「客観的証拠」です。過失割合の主張を裏付けるため、事故状況を示す証拠はできるだけ多く揃えましょう。
歩行者の交通事故を弁護士に相談するメリット
弁護士は、相手方保険会社が提示する過失割合が正しいかどうかを見極めることが可能です。交通事故における歩行者は、“交通弱者”であることから過失割合は有利に働く傾向にあります。
しかし、具体的な過失割合は時間帯や道路の幅、飛び出しの有無といった個別事情も踏まえて判断されるため、必ずしも歩行者が有利になるわけではありません。
弁護士であれば、事故状況から正しい過失割合を導き出し、有効な証拠を集めたうえで、相手方保険会社に主張・立証することができます。過失割合の交渉も代わりに行ってもらえるため、精神的負担の軽減にもつながるでしょう。
その他にも、以下のようなメリットがあります。
- 弁護士基準を用いて請求できるため、賠償金の増額が期待できる
- 適切な通院方法等についてアドバイスをもらえる など
歩行者の過失割合を0に修正し、賠償額約106万円で示談成立した事例
事案の概要
ご依頼者様は、自転車で青信号の横断歩道を横断中、右方向からきたトラックと接触し、右肩挫傷や右手挫創等を負いました。
交渉の結果
相手方保険会社から主張された過失割合は、90:10(ご依頼者様)でした。しかし、弁護士が事故状況を再度詳細に聴取し、事故現場の信号機の状況を調査したところ、相手方保険会社の主張に矛盾があることが判明しました。
弁護士が矛盾点を指摘した結果、過失割合を100:0(ご依頼者様)に修正でき、約106万円の賠償金にて示談が成立しました。
歩行者の過失割合に関するQ&A
歩行者側の過失割合が100%になることはあるのでしょうか?
歩行者と自動車の事故では、歩行者が交通弱者となるため、歩行者が100%責任を負うことは通常ほとんどありません。 しかし、歩行者が「高速道路への立ち入り」「急な飛び出し」といった、ドライバーが予測・回避できない“極端な危険行為”を行った場合は例外です。 このような場合は、歩行者の過失が自動車の過失を上回る可能性が高いです。 自分の過失割合を詳しく知りたい場合は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
信号無視など歩行者が悪い場合でも慰謝料を請求できますか?
歩行者に信号無視等の過失があっても、慰謝料を請求することは可能です。ただし、過失割合に応じて賠償金が減額される点に注意しなければなりません。 つまり、歩行者の責任が大きくても慰謝料は請求できますが、受け取れる賠償金は減る可能性が高いです。 車は歩行者よりも強い注意義務を課せられているため、歩行者側に極端な違反行為が認められない限り、車側にもある程度の過失が認められるでしょう。したがって、歩行者が悪い場合でも、慰謝料等を請求できる場合がほとんどです。
適切な過失割合へと導くために、交通事故を専門とする弁護士がサポートいたします。
交通事故において、歩行者の過失割合は優遇されやすいですが、必ずしも有利になるわけではありません。事故の状況や態様によっては歩行者の過失が認められ、過失相殺されるケースもあります。
損害賠償は事案によって異なりますが、弁護士は正しい知識と根拠に基づき、的確な損害賠償額を算出できます。
さらに、ご自身が加入している保険に「弁護士費用特約」があれば、弁護士費用は保険会社が負担してくれるため、ご自身の出費を抑えることが可能です。費用の負担が軽くなれば、弁護士への相談も検討しやすくなるでしょう。
交通事故の過失割合について少しでも不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
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本人原則負担なし※保険会社の条件によっては
本人負担が生じることがあります。
弁護士報酬:成功報酬制
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※事案によっては対応できないこともあります。
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