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交通事故による恥骨骨折と後遺障害について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates執行役員
監修 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates執行役員

交通事故の被害に遭い、恥骨骨折と診断されてしまった場合、どうすれば良いのでしょうか?もし治療をしても後遺症が残ってしまったら、後遺障害等級は認めてもらえるのでしょうか? このページで詳しく解説していきます。

交通事故で恥骨を骨折してしまったら?

恥骨とは、骨盤を構成する骨のひとつです。骨盤は、左右一対の大きな骨である「寛骨」、腰椎から続く「仙骨」、その先にある「尾骨」によって輪状に構成されています。このうちの寛骨は、「腸骨」「恥骨」「坐骨」が組み合わさってできています。この3つの骨はもともと軟骨によって結合していますが、成人する頃には完全に癒合して1つの骨となります。恥骨は寛骨の前方下部にあり、左右一対となっていますが、中央部分は軟骨による「恥骨結合」でつながっています。 恥骨骨折は、交通事故や転落により前方や下方から外力がかかることで起こり、恥骨・坐骨の同時骨折は、骨盤骨折の中で最も頻度が高いとされています。なお、前方から外力がかかった場合、左右の恥骨が開いてしまう「恥骨結合離開」が生じることもあります。 骨盤は、上半身と下半身をつないでおり、体幹を支える重要な役割を担っています。恥骨骨折を含む骨盤骨折は、大量出血を伴うこともあり、骨折の中でも重症な部類にあたるため、すぐに病院で治療を受ける必要があります。 骨盤骨折について詳しく知りたい方は、下記のページを参照してください。

骨盤骨折の後遺障害と慰謝料について

病院で受ける検査と治療

骨折が疑われる場合、通常はレントゲンによって損傷部位を確認します。しかし、骨盤の形状は複雑なので、骨盤骨折の場合はCTも用いて詳しく調べることになります。また、骨盤の内側には腸や膀胱、子宮といった様々な臓器や、内腸骨動脈といった主要な血管が存在しているので、それらの損傷を合併していないか調べるために、造影剤を用いたCTも行う必要があります。 片側のみの恥骨骨折や恥骨・坐骨の同時骨折等であれば、ほとんどのケースでは特別な治療は不要で、痛みが引くまで安静にします。痛みがひどいときには必要に応じて鎮痛薬が投与され、受傷から約1週間程度でリハビリを開始します。 恥骨だけでなく骨盤の後方部分等も同時に骨折して、骨盤の輪状構造が保たれていない場合は、大量出血を伴っていることが多いため、止血処置を最優先します。 まずは、骨折部を体外から仮固定する「創外固定」を行って、状態を安定させます。そのうえで、血管造影を行って損傷している動脈を特定し、ゼラチンスポンジや金属コイルを挿入して止血する「血管塞栓術」を行います。 また、恥骨骨折では膀胱損傷や尿道損傷を合併することがあるため、それらの臓器損傷に対しても治療を行います。 止血処置の後は、骨折部のずれが大きく骨盤の不安定性が強ければ、金属製のスクリューやプレートで固定する手術を実施します。

恥骨を骨折した時の症状

恥骨骨折では、骨折部に強い痛みが起こります。さらに、骨折部に大きなずれがあると、骨盤の変形障害や股関節の運動障害の他、骨盤のゆがみによる下肢の短縮障害が生じることがあります。 また、骨盤の内側や周囲には多くの重要な臓器・血管・神経が存在しているため、それらを損傷すると、様々な症状を引き起こします。特に恥骨骨折では、膀胱損傷や尿道損傷を合併することがあるため、排尿障害が起こる可能性があります。

恥骨骨折と関係のある後遺障害と慰謝料

交通事故で恥骨骨折の被害に遭い、治療を尽くしても後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級認定の申請を行います。後遺障害等級は1級から14級まであり、1級が最も重症になります。 恥骨骨折で認められる可能性がある後遺障害として、「骨盤の変形障害」「自然分娩困難」「股関節の可動域制限」「下肢の短縮障害」「神経症状」が挙げられます。自賠責保険におけるそれぞれの後遺障害で認定される等級について、以下でみていきましょう。

骨盤の変形障害

骨折部が変形したまま癒合した場合、骨盤の変形障害として後遺障害等級12級5号に認定されます。 ただし、裸体になったときに変形が明らかにわかる程度のものに限られ、レントゲン等で検査をしないとその変形がわからないようであれば、該当しません。

自然分娩困難

女性が、骨盤の変形によって産道が狭まり、自然分娩が困難となった場合は、後遺障害等級11級10号に認定されます。 この産道が狭い骨盤のことを「狭骨盤」といい、狭骨盤(産科的真結合線が9.5cm未満または入口部横径が10.5cm未満)または比較的狭骨盤(産科的真結合線が9.5cm以上10.5cm未満または入口部横径が10.5cm以上11.5cm未満)の状態が後遺障害に該当します。

股関節の可動域制限

骨盤は太もも部分の骨である大腿骨と接して股関節を形成しているため、骨盤を骨折すると股関節の可動域に制限が出る可能性があります。骨盤のうち、大腿骨の上端である骨頭を受け止めている部分を「寛骨臼(かんこつきゅう)」といい、この寛骨臼を骨折すると人工関節に置換する手術が必要になることがあります。 股関節の可動域制限がある場合、可動域や人工関節等の有無によって、以下のような後遺障害等級に認定されます。

後遺障害等級 認定の要件
8級7号 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
「関節の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
・関節が強直したもの
・関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの
・人工関節、人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健常な下肢の1/2以下に制限されているもの
10級11号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
・関節の可動域が健常な下肢の1/2以下に制限されているもの
・人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、8級以外のもの
12級7号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
「関節の機能に障害を残すもの」とは、次に該当するものをいいます。
・関節の可動域が健常な下肢の3/4以下に制限されているもの

下肢の短縮障害

骨盤にゆがみが生じ、左右の下肢の長さに差が出た場合は、健常な下肢に比べて異常のある下肢が何cm短縮したかによって、以下のような後遺障害等級に認定されます。

後遺障害等級 認定の要件
8級5号 1下肢を5cm以上短縮したもの
10級8号 1下肢を3cm以上短縮したもの
13級8号 1下肢を1cm以上短縮したもの

神経症状

恥骨骨折により、痛みやしびれといった神経症状が残った場合の後遺障害等級は、12級13号もしくは14級9号が考えられます。 レントゲン等で骨折したことを医学的に証明することができれば12級13号に、特に検査で異常が認められなくとも、神経症状について医学的に説明することができれば14級9号に認定される可能性があります。

後遺障害等級 認定の要件
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

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交通事故による恥骨骨折の裁判例

【東京地方裁判所 平成27年(ワ)第1033号 損害賠償請求事件】

<事案の概要>

原告はバイクを運転していたところ、被告の運転する自動車と衝突し、左眼瞼裂創、左大腿打撲傷、骨盤骨折、左腓骨骨幹部骨折、左頬骨骨折等の傷害を負いました。 治療の末、症状固定と診断されましたが、原告には左坐骨骨折および左恥骨骨折に伴う左股関節の機能障害が残存しました。そこで、自賠責保険に後遺障害等級認定の申請を行ったところ、「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残す」として後遺障害等級12級7号に認定されました。

<争点>

被告は、原告の後遺障害は原告の就業に直接影響するとは考えにくいとして、後遺障害逸失利益について争いました。

<裁判所の判断>

本件事故当時、原告は建造物の解体作業等を行う工事現場の現場監督として、作業内容の確認や周知等の他、作業現場の巡視を行っていました。職務復帰後は元の建造物解体工事の現場に戻ったものの、股関節の痛みのために特に巡視業務に支障が生じ、別の現場に配置転換されることとなりました。この事実を受けて、裁判所は、原告に後遺障害逸失利益として1084万2067円の請求を認めました。 また、入通院慰謝料については150万円、後遺障害慰謝料については290万円の請求を認めています。原告には、10%の過失割合が認められましたが、総額として約1333万円の損害賠償請求が認められました。

交通事故で恥骨を骨折してしまったら弁護士にご相談ください

恥骨骨折は、単独の骨折であれば安静にすることで軽快するものがほとんどですが、骨盤の後方部分等を同時に骨折してしまうと、骨盤内部の臓器や血管も損傷している可能性が高く、命の危険にさらされます。 治療後に残る後遺症は多岐にわたるため、交通事故で恥骨骨折の被害を受けた場合は、適切な後遺障害等級を獲得できるようしっかりと申請する必要があります。 交通事故や医療に詳しい弁護士であれば、後遺障害等級認定の申請の際に、必要な検査や後遺障害診断書に記載すべき内容を医師に伝えたり、補強資料を添付したりといったサポートをすることができます。そのうえで弁護士基準を用いて慰謝料を算出するため、より高額な損害賠償金を請求できる可能性が高まります。 交通事故による身体的・精神的負担を軽減するためにも、ぜひ一度弁護士に相談することをご検討ください。

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