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頭蓋骨骨折の後遺症と慰謝料の計算について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員

頭蓋骨は、人体で最も重要といえる脳を守っている骨であり、損傷すると重篤な後遺症が残ってしまうおそれがあります。
交通事故で頭蓋骨を骨折した場合、どのような症状がでるのでしょうか。
また、どのような賠償を、どの程度受けられるのでしょうか。
ここでは、頭蓋骨骨折によって起きる症状や、受け取ることができる慰謝料などの解説をしていきます。

交通事故で頭蓋骨骨折してしまった時の慰謝料はいくらになる?

交通事故に遭い、頭蓋骨を骨折してしまったら、加害者に請求できる慰謝料はいくらになるのでしょうか。

ここでは、交通事故における「頭蓋骨骨折」にスポットを当て、その症状や残り得る後遺障害、そして慰謝料について解説します。
そもそも骨折とは、骨にひびが入ったり、欠けたり、へこんだり、折れたりなどして、骨が壊れてしまうことをいいます。骨の周囲には神経や血管が張り巡らされており、骨折によってそれらが傷つくとさまざまな症状が出ます。加えて、脳は「神経の中枢」ともいわれる非常に重要な器官であり、それを囲って守っている頭蓋骨を骨折するということは、脳が傷ついてしまう危険があるということです。
頭蓋骨骨折には、大きく分けて頭蓋円蓋部(とうがいえんがいぶ)骨折と、頭蓋底(とうがいてい)骨折があります。頭蓋円蓋部は、前頭骨・側頭骨・頭頂骨、後頭骨等から成り立っており、それらを支えている土台となるのが頭蓋底です。
詳細は後述しますが、頭蓋骨を骨折した直後は、強い痛みや周辺部の腫れがみられます。
また、時間を置いてから、意識を消失したり、激しい頭痛や嘔吐、めまい等に襲われたりする場合もあります。脳が損傷することで高次脳機能障害や麻痺といった後遺障害が残ってしまうケースも少なくなりません。
突然の交通事故によって負傷し、治療のために入通院を余儀なくされたり、後遺障害が残ってしまったりしたときの、被害者の方の肉体的・精神的苦痛は計り知れません。
そのような苦痛は、「損害」として、傷害慰謝料(入通院慰謝料)と後遺障害慰謝料を加害者に請求することができます。
慰謝料の算定には、3つの基準(自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準)があり、このうち保険会社によって基準が異なる任意保険基準を除き、自賠責基準と弁護士基準を使った計算例を後ほど記載します。

交通事故による頭蓋骨骨折の種類

頭蓋円蓋部骨折

頭蓋円蓋部の骨折は、線状骨折(頭蓋骨に、まっすぐ伸びた骨折線が入った状態)と、陥没骨折(頭蓋骨が内側にへこんだ状態)に分類することができます。
それぞれの詳細、症状等については以下で解説していきます。

線状骨折

線上骨折は、頭蓋円蓋部骨折で最も発生しやすいといわれており、レントゲン画像では黒い糸状・筋状の線として写ります。
治療としては、骨自体の治癒力に任せて安静にする「保存療法」が一般的です。しかし、線状骨折によって脳が損傷したり、急性硬膜下血腫(脳と、脳を覆っている膜のあいだに血の塊ができた状態)を併発していたりするおそれもあります。
それらが原因で後遺障害が残ってしまう場合もあるため、レントゲンのほか、頭部CTや脳内MRIの検査を受けるべきでしょう。

陥没骨折

陥没骨折は、外部からの衝撃により、骨が外側から内側に陥没してしまう骨折のことをいいます。頭蓋骨内にある脳は何層かの膜に守られていますが、陥没骨折により、骨が膜を突き破り、脳が損傷してしまうこともあります。
子供に比べて骨が固くなっている大人は、陥没骨折から粉砕骨折に移行しやすく、その断片で脳挫傷を併発するリスクが非常に高くなっています。
受傷直後の症状としては、疼痛や腫れに加えて、頭痛、嘔吐、ショック状態、意識障害等がみられます。
治療方法は、脳に損傷がなければ保存療法、損傷がある場合は手術が必要となります。陥没骨折は、脳挫傷のほかにも急性硬膜外血腫や硬膜下血腫を併発するリスクを抱えているため、こちらも精密検査を受けるべきです。

頭蓋底骨折

頭蓋底とは、頭蓋骨の底の部分で、さまざまな形・厚みの骨や脳を支える、土台のような骨のことをいいます。頭蓋底の周囲には、五感等を司る重要な神経などがあります。
頭蓋底骨折は交通事故等によって外部から強い衝撃が加わることで起こりますが、骨折とともに神経や脳に損傷が及ぶ危険があります。
また、激しい頭痛や、血液とともに頭の中にある脳脊髄液の漏出がみられる場合もあります。治療としては、保存療法をしつつ、回復がみられないときは手術を行います。
目安としては、鼻からの血液と混ざった脳脊髄液の漏出が、おおむね1週間から3週間程度で収まらなかった場合に手術を行います。
頭蓋底骨折は、骨折した部分によって以下の3つに分けられます。それぞれ、特徴について解説していきます。

前頭蓋底骨折

前頭蓋底は、脳の前頭葉部分に位置する箇所で、頭蓋底骨折の中で最も受傷頻度が高いといわれています。嗅覚や視覚等の神経が通っており、受傷直後は視野のかすみ、視力低下等の症状がみられます。

中頭蓋底骨折

中頭蓋底は、脳の側頭葉部分に位置する箇所で、交感神経や滑車・動眼等の神経が通っています。受傷すると、顔面神経麻痺、耳鳴り、聴力低下、ものが二重にみえる、目線が合わない等といった症状がみられます。

後頭蓋底骨折

後頭蓋底は、脳の後頭葉や小脳部分に位置し、聴覚や舌咽等のさまざまな神経が通っています。受傷したことによって、自律神経や飲み込みの問題、動悸やめまいといった症状がでることがあります。

交通事故による頭蓋骨骨折の後遺障害について

交通事故によって頭蓋骨を骨折してしまった場合、脳自体や、頭蓋骨付近の神経を損傷してしまう危険があります。
つまり、骨折と併発する傷害も多く、後遺障害が残ってしまうリスクを伴うということです。代表的な後遺障害が、「高次脳機能障害」と「麻痺」です。以下で、それぞれの特徴について説明します。

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、脳外傷に起因する認知障害、行動障害、人格変化等といった症状がみられる後遺障害です。
後遺障害等級は、症状が重い順に、1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級、14級です。
高次脳機能障害については以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

高次脳機能障害|記憶障害をはじめとする8つの症状

麻痺

麻痺とは、四肢の運動機能や、精神作用・知覚機能が失われるといった症状がみられる後遺障害です。
四肢の麻痺の「程度」と「範囲」によって、後遺障害等級が認定されます。症状が重い順に、1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号です。
後遺障害等級と認定基準に関しては以下のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。

後遺障害等級と認定基準

視覚・嗅覚・聴覚等の傷害

頭蓋骨は顔の構成を支えており、脳を保護している重要な骨です。なかでも頭蓋底は脳を支える中心部でもあり、顔面や頭部の最深部位になります。
その頭蓋底を骨折してしまうと、視覚・嗅覚・聴覚等の神経も損傷してしまい、後遺症が残ってしまうおそれがあります。
後遺障害等級についても、それぞれの部位や後遺症の程度によって異なります。

詳しくは、以下の各記事をご覧ください。

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交通事故で頭蓋骨を骨折した場合の慰謝料の計算例

交通事故で頭蓋骨骨折を負った場合の慰謝料は、どのように算出されるのでしょうか。
【入院3ヶ月(90日)、通院365日、通院日数48日 後遺障害等級9級10号】のケースを例に、弁護士基準と自賠責基準で計算し、比較してみましょう。 

交通事故の慰謝料の計算方法

弁護士基準の計算例

弁護士基準は、通称「赤い本」と呼ばれている、『民事交通訴訟 損害賠償額基準算定』という書籍に掲載されています。
この基準は過去の裁判例をもとに設定されており、実際に裁判になった際の重要な基準とされています。
以下のとおり計算例を挙げますので、みてみましょう。

【入院3ヶ月(90日)、通院365日、通院日数48日 後遺障害等級9級10号】

入通院慰謝料:入院3カ月、通院1年なので、入通院慰謝料は236万円となります。
頭蓋骨骨折という重大な傷害であることから、慰謝料算定には別表Ⅰが使用されます。
さらに、通院日数は48日ですが、通院期間は1年であり、長期であるとはいえないため、いわゆる3.5倍基準は適用されないと思われます。

後遺障害慰謝料:後遺障害等級9級10号=690万円

合計:236万円+690万円=926万円

この例で算出した弁護士基準での慰謝料は、926万円が相場となります。 ※通称「赤い本」の入通院慰謝料基準別表

自賠責基準・任意保険基準では、十分な慰謝料が望めない理由

最も多くの慰謝料が望める算定方法は、弁護士基準であると耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思います。
同様の計算を自賠責基準で行うとどうなるのか、計算例を記載しますので比較してみてください。

<自賠責基準>

【入院3ヶ月(90日)、通院365日、通院日数48日 後遺障害等級9級10号】

計算式:入通院慰謝料:日額4300円※1×【入通院期間or(入院日数+実通院日数)×2の少ない方】 基準日数:入通院期間90日+365日=455日>(90日+48日)×2=276日 入通院慰謝料:4300円※1×276日=118万6800円 後遺障害慰謝料:後遺障害等級9級10号=249万円※1 合計:118万6800円+249万円※1=367万6800円 今回の例における自賠責基準での慰謝料の最高額は、367万6800円となります。 しかし、傷害部分の自賠責保険金の上限額は120万円と定められており、頭蓋骨骨折の場合は重症であるため、治療費等が120万円を越えるケースが多く、実際には傷害部分の入通院慰謝料をもらえないと思われます。

※1:自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。

弁護士に依頼するべき理由

交通事故による頭蓋骨骨折には、脳損傷や頭蓋骨付近の神経損傷の危険性も伴い、部位によってはさまざまな後遺障害が残るおそれがあります。
予期せぬ交通事故に遭い、被害に遭った方もご家族の方も、ご不安なことと思います。

  • 頭蓋骨骨折と診断されて非常に不安
  • 今後の見通しや適切な検査方法等が分からない
  • 保険会社とのやりとりが煩わしい
  • 症状に合った後遺障害等級を獲得できるか不安
  • 慰謝料はなるべく損することなく弁護士基準で請求したい

以上のような不安や負担等を解消する一番の近道が、弁護士に相談・依頼することです。交通事故に精通している弁護士に一任することで、不透明なことも確かな根拠に基づいて解決できます。
弁護士は、被害に遭われた方やご家族の「代理人」という責務を全うするため、さまざまな手法を駆使して的確に対応していきます。
少しでもご不安や戸惑い、疑問がおありの場合、弁護士への相談をぜひご検討ください。

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