交通事故の示談後に追加請求や撤回はできる?後遺症や痛みが発覚したら
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
交通事故に遭い、相手方との交渉を経てようやく示談が成立しても、「追加で請求したい」「示談を撤回したい」と思う方は少なくありません。特に、早期解決を優先して、十分に内容を確認しないまま示談してしまった場合は、後から後悔することもあるでしょう。 この記事では、示談成立後の追加請求や撤回の可否をはじめ、示談後のトラブルを回避するためのポイントなどについて詳しく解説していきます。
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示談した後の追加請求や撤回は原則不可
一度示談した後の損害賠償金の追加請求や合意内容の撤回は、原則としてできません。 交通事故の示談とは、事故によって生じた治療費や慰謝料などの賠償内容について、当事者同士が最終的に合意する手続きです。 示談の成立時は、通常、示談書に署名・捺印を行いますが、これは示談内容に合意したことを意味します。そのため、一部の例外を除き、示談成立後の追加請求や撤回を行うことは原則として認められていないのが実情です。 後から後悔しないためにも、示談書への署名・捺印は慎重に行いましょう。
双方の合意があれば示談をやり直すことも可能
示談成立後の追加請求や撤回は原則として認められていませんが、当事者双方が合意すれば、示談内容を見直せる場合があります。珍しいケースではありますが、示談後に後遺障害が判明するなど、双方で「やり直した方が合理的」と判断する場面はあります。 示談をやり直す場合は、前回の示談書に記載されている条項の効力が及ぶ範囲を確認する必要があります。例えば、後遺障害について、「後に後遺障害が認定された場合には、賠償内容を別途協議する」といった留保条項が組み込まれていた場合です。 この場合は、留保条項によって、後遺障害部分の示談交渉が可能となります。 まずは、示談内容の見直しや追加請求が可能かどうかを確認しましょう。
示談後に追加請求や撤回が認められる5つのケース
示談後に追加請求や撤回が認められる主なケースには、以下の5つが挙げられます。
- ① 示談後に予想外の後遺症が発覚した場合
- ② 示談内容に錯誤があった場合
- ③ 示談を成立させる意思がなかった場合
- ④ 公序良俗に反する内容だった場合
- ⑤ 相手方から詐欺や脅迫を受けた場合
いずれも例外的なケースではありますが、追加請求や撤回が認められる可能性があるため、どのような場合に該当するのかを理解しておきましょう。
①示談後に予想外の後遺症が発覚した場合
示談後に後遺症が判明した場合は、示談成立時には予測できなかった損害として、追加請求が認められる可能性があります。 特に、高次脳機能障害などは事故直後に症状がみられず、示談成立後に初めて判明するケースも少なくありません。 このような場合は、「示談成立時には後遺症の存在や程度を予測できなかった」として、追加請求が認められる余地があります。 もっとも、追加請求を行うには、事故と後遺症との因果関係や、示談成立時に予測できなかった事情を客観的な証拠によって示す必要があります。 そのため、診断書や後遺障害等級認定に関する資料などを十分に収集しておくことが重要です。 詳しくは、以下のページをご覧ください。
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②示談内容に錯誤があった場合
示談の前提や重要な事実について誤解があり、法律上の「錯誤」に該当する場合は、示談の取り消しや再交渉が認められる可能性があります。 錯誤に該当するのは、以下のようなケースです。
- まだ支払われていない賠償金について、既に受け取っていると勘違いしていた
- 相手方が任意保険に加入していたにもかかわらず、自賠責保険の範囲しか請求できないと思い込んでいた
- 入通院慰謝料の中に後遺障害慰謝料も含まれていると勘違いしていた など
もっとも、単なる認識不足や計算ミスだけでは錯誤は認められません。示談の前提となる重要な事実について誤解があり、その誤解が示談内容に影響を及ぼしていたことが必要です。
③示談を成立させる意思がなかった場合
示談を成立させる意思がなかった場合には、示談の撤回が認められる可能性があります。示談は、当事者双方が内容を理解したうえで合意することが前提であるためです。 以下のようなケースでは、示談する意思が明確だったとはいえないと評価される可能性があります。
- 賠償項目を理解しないまま署名・捺印した
- 「保険金を受け取るために必要な事務手続き」と誤解して署名・捺印した
- 高次脳機能障害等により判断力が低下した状態で示談してしまった など
もっとも、示談の撤回が認められるためには、単に内容を十分に確認していなかっただけでは足りません。示談内容について、適切な意思表示ができていなかったことを裏付ける事情が必要となります。
④公序良俗に反する内容だった場合
公序良俗(こうじょりょうぞく)に反する内容だった場合は、示談の無効が認められる可能性があります。 公序良俗とは、社会一般の道徳観念や健全な社会秩序のことです。例えば、被害者の窮状につけ込み、著しく不当な内容で示談を成立させたような場合は、公序良俗違反となる可能性があります。 具体的には、以下のようなケースが考えられます。
- 慰謝料を著しく低額とする内容で示談していた
- 被害者の判断力の低下につけ込み、不当に不利な条件で示談していた
- 社会通念上著しく不公平な内容の示談を成立させていた など
もっとも、公序良俗違反が認められるケースは限定的であり、単に示談金額が低いというだけでは認められないのが一般的です。
⑤相手方から詐欺や脅迫を受けた場合
示談交渉の過程で、相手方から詐欺や脅迫を受けて示談書に署名・捺印してしまった場合は、示談の撤回が認められる可能性があります。 例えば、賠償金額について虚偽の説明をされたり、「今すぐ示談しなければ補償を受けられない」などと不当に圧力をかけられたりしたケースです。 このような場合には、自由な意思に基づいて示談したとはいえない可能性があります。 もっとも、実務上このようなケースは多くなく、示談の撤回を求める場合は、詐欺や脅迫の事実を裏付ける証拠が必要となります。そのため、やり取りの記録や録音データ、メールなどはできるだけ保存しておくことが重要です。
示談後のトラブルを回避するポイント
示談成立後に「新たな損害」が生じた際、加害者側とのトラブルを回避するためには、あらかじめ注意点を押さえて対応しておく必要があります。 ここでは、トラブルの予防につながるポイントについて解説します。
示談書に後遺症発覚時の再交渉を明記する
示談書は、現状だけでなく、将来的に起こり得ることも見据えた内容で作成するようにしましょう。 例えば、「示談成立後に追加で治療が必要となったり、後遺症が判明したりする場合は、再度協議を行う」などと盛り込んでおけば、示談をやり直すための根拠になります。 また、後遺障害等級認定の審査に時間がかかっている場合、「先に損害が確定している治療費や休業損害だけでも解決したい」と考える方もいるでしょう。その場合は、傷害部分と後遺障害部分を分けて示談交渉することも可能です。 それぞれ分けて示談交渉する場合は、「傷害部分のみ示談とし、後遺障害部分については別途協議する」といった条項を盛り込むことが必要です。 ただし、加害者や加害者側の保険会社は、不確定な要素を示談書に盛り込むことを渋るケースが多いため、交渉は難航するおそれがあります。 示談書の書き方や注意点などについては、以下のページをご覧ください。
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請求し忘れたものが無いか確認する
治癒または症状固定前の治療費といった「傷害部分の費目」については、示談後に請求を認めてもらうのが難しいため、請求漏れに注意が必要です。 傷害部分の損害賠償項目には、治療費や休業損害、入通院慰謝料のほかに、交通費、付添看護費、入院雑費、診断書作成料、装具・器具購入費といった細かな費用も含まれます。そのため、忘れずに勘定に入れましょう。 また、治療の途中で示談交渉を開始してしまうと、治療や後遺障害に関する費用を十分に請求できなくなる危険性があります。請求漏れをなくすためにも、示談交渉は治癒または症状固定の診断を受けてから開始するようにしましょう。 「症状固定」や「損害賠償請求の範囲・計算方法」などについては、以下の各ページをご覧ください。
交通事故の示談を弁護士に相談するメリット
示談の内容に疑問や不安があれば、示談成立前に弁護士に相談するとよいでしょう。 また、示談後であっても、追加請求や撤回の可能性、利用できる制度などを弁護士から教えてもらえます。 弁護士に相談するメリット7選については、以下のページをご覧ください。
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示談書の内容について相談できる
弁護士が示談書に盛り込む内容を検討することで、不利な示談書を取り交わすリスクを防止できます。 示談後に後遺症が判明するリスクなども踏まえ、示談書の内容には十分注意する必要があります。しかし、被害者自身の交渉に対して、保険会社が応じてくれないケースは少なくありません。 弁護士が介入すれば、保険会社は裁判に発展することをおそれ、交渉に応じる可能性が高まります。
示談の撤回や追加請求が可能か判断してもらえる
弁護士に相談すれば、法律上の論点を踏まえて、示談の撤回や追加請求の可能性を検討してもらえます。 内容や手続きに問題がある場合には、示談のやり直しを検討することも可能です。 弁護士は、以下のような点を重視して確認を行います。
- 示談後に発覚した後遺障害が「示談成立時点では予測できなかった損害」に該当するか
- 不当に低い金額で示談した可能性はないか
- 錯誤や詐欺・脅迫の要素はないか など
対応方法が分からない場合でも、弁護士に相談することで、示談のやり直しが可能かどうかを判断してもらえます。また、「示談のやり直し」「制度の活用」「現状維持」などの選択肢を比較したうえで、適切な対応を検討できるでしょう。
示談の撤回や追加請求の交渉をしてもらえる
示談の撤回や追加請求の交渉を任せられることは、弁護士に依頼する大きなメリットの一つです。 示談後に後遺症が判明した場合、事故との因果関係を証明し、適切な後遺障害等級認定を受けるための医学的知識が欠かせません。 交通事故だけでなく医学分野にも精通した弁護士が交渉すれば、示談の見直しや損害賠償金の増額につながる可能性が高まるでしょう。 弁護士法人ALGには、交通事故や医療分野を集中的に取り扱う弁護士が複数在籍しています。弁護士同士が連携しながら対応することで、より充実した法的サポートの提供や交渉が可能です。 示談交渉を弁護士に依頼すべきケースやメリットについて詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
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傷害部分の示談後に後遺障害等級14級9号が認定された事例
ご依頼者様は、3台の玉突き事故に遭い、頚椎捻挫を負いました。その後、事故から約4ヶ月が経過した時点で、相手方保険会社から治療費の打ち切りを打診されました。 弁護士は直ちに保険会社との交渉を開始し、事故から約6ヶ月が経過するまで治療費の支払いを延長することに成功しました。しかし、治療を継続しても頚部痛などの症状が残存したため、後遺障害等級認定を申請したものの、結果は非該当でした。ご依頼者様は異議申立てを希望されていましたが、示談成立までの期間が長引くという懸念もありました。 そこで弁護士は、傷害部分について先行して示談を行い、異議申立てが認められた場合には、後遺障害部分を別途協議する方法を提案し、保険会社との合意を取り付けました。 その結果、傷害部分の示談成立後に後遺障害等級14級9号が認定され、最終的に約330万円で示談が成立しました。
交通事故の示談後に関するよくある質問
交通事故の示談後に加害者に対してお詫びを求めることはできますか?
交通事故の示談後に、加害者に対してお詫びを求めるのは難しいといえます。 示談成立後に、加害者が一度も謝罪の連絡をしてこないケースは珍しくありません。 被害者としては加害者に謝罪の意を示してほしいところですが、残念ながら、法的に加害者に謝罪を強制する手立てはないのが実情です。
交通事故の示談後、慰謝料はいつ振り込まれますか?
慰謝料の支払いは、示談成立後1~2週間程度で振り込まれるケースが多いです。 ただし、賠償金が高額な場合や休日を挟む場合、書類の不備がある場合などは、振り込みまでに通常より時間を要することがあります。 できる限り早く慰謝料を受け取るためには、必要書類に不備がないか十分に確認したうえで、速やかに提出することが大切です。 詳しくは、以下のページをご覧ください。
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交通事故の示談後に嫌がらせを受けたらどうしたらいいですか?
示談したにもかかわらず、相手方から嫌がらせを受けた場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。 警察に被害届を出す場合も、まず弁護士に相談することで、証拠の収集をはじめ適切な対応を行ってもらえます。 また、被害者が加害者に嫌がらせを行うケースもありますが、トラブルを招きかねないため控えましょう。 嫌がらせをさせない・しないためにも、当事者双方が十分に納得しているか確認したうえで、示談を成立させることが重要です。
交通事故の示談後も通院や治療を続けることはできますか?
はい、示談後も通院や治療を続けることは可能ですが、原則として治療費を追加で請求することはできません。 交通事故による治療費の補償は、通常、「治癒」または「症状固定」までが対象となるため、それ以降は自己負担となるのが基本です。 まだ治療が必要な場合は、安易に示談すると補償を受けられなくなる可能性があるため注意しましょう。
交通事故の示談後に裁判を起こすことは可能ですか?
はい、示談後に裁判を起こすこと自体は可能ですが、原則として示談で合意した範囲については裁判で争えない点に注意が必要です。示談は、当事者間の紛争を最終的に解決するための合意だからです。 したがって、「示談成立時には予測できなかった損害」などに限り、裁判で争うことができます。 ただし、裁判で争えるかどうかは個別の事情によって異なるため、事前に弁護士へ相談することをおすすめします。
交通事故の示談後に後悔しないために、弁護士がサポートさせて頂きます
示談後の追加請求や撤回が例外的に認められるケースはあるものの、その範囲は限定的です。基本的には、一度示談が成立すると後から覆すことは難しい点を念頭に置きながら、示談交渉に臨む必要があります。 示談成立後のことも含めて不安がある場合は、事前に弁護士への相談をご検討ください。弁護士であれば、示談内容を確認するだけでなく、将来的なリスクも見据えたうえで適切なアドバイスを行うことができます。 弁護士法人ALGには、交通事故案件を数多く取り扱ってきた弁護士が在籍しており、示談後の対応についても適切なサポートが可能です。後悔のない解決を目指すためにも、ぜひお気軽にご相談ください。
交通事故被害者専用 相談窓口まずは交通事故の受付スタッフが丁寧にご対応いたします
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