交通事故による聴力の後遺障害について|認定基準や慰謝料など
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
この記事でわかること
交通事故に遭ってから耳が聞こえづらくなったという方は、事故が原因で「聴力障害」を発症しているおそれがあります。 難聴や聴力障害は、将来にわたって日常生活で大きな不便を強いられてしまうため、その精神的苦痛に見合った慰謝料や、後遺障害がなければ得られるはずだった収入の補償である逸失利益などをきちんと損害賠償請求することが大切です。そのためには、聴力障害について適切な後遺障害等級の認定を受ける必要があります。 そこで本記事では、「交通事故による聴力障害」に着目し、後遺障害等級認定に必要な検査や聴力障害による慰謝料請求などについて、詳しく解説していきます。
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目次
交通事故による聴力の後遺障害(後遺症)
治療を続けても、聴力障害の後遺症が残った場合には、後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。交通事故と聴力障害は、一見直接的な関係はないように思えるものの、事故による怪我が原因で「聴力が低下した」あるいは「難聴を発症した」という被害者の方が多くいらっしゃいます。 後遺障害等級は、残った障害の程度により1級~14級に分類されており、聴力障害の等級は難聴の程度や耳鳴り・耳漏の有無などによってどの後遺障害等級が認定となるのかが判断されます。 後遺障害等級認定を受けると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の費目を損害として新たに請求することができます。
難聴・聴力障害で認定される可能性のある後遺障害等級と認定基準
聴力障害の症状が完治しなければ、日常生活に多大な不便や苦労をもたらします。そのため、後遺障害等級を獲得のうえ補償を受けることも可能です。以下では、障害の範囲を両耳もしくは片耳のケースで分け、得られる可能性のある後遺障害等級と認定され得る条件を網羅していきます。
両耳の聴力
双方の耳に不調をきたしている状況下において認定が見込まれる後遺障害の等級は、耳に残る障害の大きさをもとに区別されます。また、双方の耳に障害が残る場合には、左右の聴力の差により細かく規定されています。 両耳の聴力低下や聴力喪失で認定される可能性のある後遺障害等級は、下表のとおりです。
| 等級 | 条件 |
|---|---|
| 4級3号 | 両耳の聴力が完全に喪失したとき |
| 6級3号 | 両耳の聴力が等しい程度まで低下したとき (耳に接する状態でないと大きな声を認識し解釈することが不可能なくらい) |
| 6級4号 | 片方の耳の聴力が完全に喪失し、もう一方の耳の聴力が低下したとき (40cm以上の距離では普通の話声を認識し解釈することが不可能なくらい) |
| 7級2号 | 両耳の聴力が等しい程度まで低下したとき (40cm以上の距離では普通の話声を認識し解釈することが不可能なくらい) |
| 7級3号 | 片方の耳の聴力が完全に喪失し、もう一方の耳の聴力が低下したとき (1m以上の距離では普通の話声を認識し解釈することが不可能なくらい) |
| 9級7号 | 両耳の聴力に等しい程度の低下がみられるとき (1m以上の距離では普通の話声を認識し解釈することが不可能なくらい) |
| 9級8号 | 片方の耳の聴力が耳に接する状況でないと大きな声を認識し解釈することが不可能なほどまで低下し、もう一方の耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を認識し解釈することが困難である程度になったとき |
| 10級5号 | 両耳の聴力に等しい程度の低下がみられるとき (1m以上の距離では普通の話声を認識し解釈することが困難なくらい) |
| 11級5号 | 両耳の聴力に等しい程度の低下がみられるとき (1m以上の距離では小さな声を認識し解釈することが不可能なくらい) |
上表のとおり、“両耳の聴力の程度”によって、認定となる後遺障害等級が異なります。 また、どれくらいの距離のときに聴力低下が認められるのか、具体的な距離の目安についても細かく決められています。
片耳の聴力
片方の耳に不調が生じている場合は、聴き取りの機能がどれほど下がってしまったかが重要となります。また、障害の範囲が両耳であるか片耳であるかを問わず、どの等級の認定要件に該当するかは、オージオグラム等の検査で数値化された結果に基づいて判断されます。 片耳の聴力低下や聴力喪失で認定される可能性のある後遺障害等級は、下表のとおりです。 なお、片耳は両耳に障害が残る場合に比べ、後遺障害等級が低めに設定されているのが特徴です。
| 等級 | 条件 |
|---|---|
| 9級9号 | 片方の耳の聴力が完全に喪失したとき |
| 10級6号 | 片方の耳の聴力が耳に接する状況でないと大きな声を認識し解釈することが不可能なほどまで低下したとき |
| 11級6号 | 片方の耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を認識し解釈することが不可能なほどまで低下したとき |
| 14級3号 | 片方の耳の聴力が1m以上の距離では小さな声を認識し解釈することが不可能なほどまで低下したとき |
耳鳴りの後遺障害
耳鳴りとは、文字通り、実際には音が生じていないにもかかわらず耳の中で音が聞こえる症状のことをいい、「耳鳴(じめい)」とも呼ばれています。 耳鳴りで後遺障害等級認定を受けるためには、具体的に“30dB以上の難聴”を伴うことが必要です。 聴力障害の認定対象とされている難聴のレベルは40dB以上であることから、難聴の程度が少し緩和されています。また、耳鳴りで聞こえる音は、キーンという高音からジーという低音までと様々で個人差があります。 耳鳴りで認定される可能性のある後遺障害等級は、下表のとおりです。 聴力低下・聴力喪失における後遺障害等級表のように、症状について直接の定めがないため、症状の程度や治療経過などから総合的に判断されることになります。
| 等級 | 条件 |
|---|---|
| 12級相当 | 耳鳴りに係る検査によって難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できるとき |
| 14級相当 | 難聴に伴い常時耳鳴りのあることが合理的に説明できるとき |
耳漏の後遺障害
耳漏(じろう)とは、耳の中から液体が出てくる症状のことをいい、「耳だれ」とも呼ばれています。なお、液体の性質は耳漏の原因によって水っぽいものから膿のようなものまで様々です。 聴力障害の後遺障害等級に該当しない程度の症状でも、常時耳漏があり、30dB以上の難聴が認められる場合には、後遺障害として12級相当が認定となる可能性があります。 耳漏で認められる可能性のある後遺障害等級は、下表のとおりです。
| 等級 | 条件 |
|---|---|
| 12級相当 | 鼓膜の外傷性穿孔による耳漏について手術的処置を施した場合、聴力障害が後遺障害等級に該当しない程度であっても、常時、耳漏があるとき |
| 14級相当 | 外傷による高度の外耳道狭窄で耳漏を伴わないとき |
難聴や聴力障害の原因
そもそも、聴力に影響をもたらす病気や怪我の種類・症状にはどのようなものがあるのでしょうか? 交通事故による難聴や聴力障害の代表的な原因は、下表のとおりです。
| 難聴が生じる原因 | 症状 |
|---|---|
| 内耳振盪(しんとう)症 | 頭部打撲等で強い衝撃が加わると、リンパ液に振動が伝わって内耳の器官に障害を及ぼすことで、難聴やめまい等を引き起こします。内耳振盪症は、交通事故における聴力障害の原因のうち、最も多いものとされています。 |
| 側頭部骨折 | 側頭部に衝撃が加わり側頭部を骨折することで難聴が生じます。 |
| 外リンパ瘻(ろう) | 内耳と中耳の間にある前庭窓と蝸牛窓という2つの窓は、外からの圧力に弱く、何らかの衝撃で穴が開いてしまうと、内耳のリンパ液が中耳に漏れ出てしまい、難聴や耳鳴り、めまい、吐き気等を引き起こします。 |
また、交通事故により生じる聴力障害として、難聴のほかに「耳鳴り」も多く見られます。 耳鳴りによる後遺障害等級認定についての詳細は、以下のページをご覧ください。
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聴力障害の後遺障害等級認定に必要な検査
聴力障害で後遺障害等級の申請を行うためには、聴力障害を証明する検査を受ける必要があります。 主に必要となる検査は、「鈍音聴力検査」と「語音聴力検査」の2種類です。これらの検査は耳鼻科で受けることができるため、交通事故の患者を積極的に受け入れている耳鼻科の病院を選択するとよいでしょう。その方が、聴力障害を証明するために必要な検査機器や環境が整っている可能性が高く、他の医療機関を併用しなくてもよいからです。 では、聴力障害の後遺障害等級認定を受けるために必要な検査である、「鈍音聴力検査」と「語音聴力検査」は、具体的にどのような検査なのでしょうか? 次項にて、それぞれの検査について詳しく解説していきます。
純音聴力検査(オージオメーター・オージオグラム)
聴力検査のうち最も一般的なものです。 防音室でヘッドフォンを装着し、オージオメーターという機械から発せられる125Hz(ヘルツ)から8000Hzまでの7種類の高さの音を聞き取ります。それぞれの音の高さごとに音の大きさを変えて、聞こえる最も小さな音を調べ、その結果をオージオグラム(聴力図)に記入します。 このとき、空気を伝わってくる音を耳から聞く「気導聴力」と骨から伝わってくる音を聞く「骨導聴力」の両方を測定します。検査は日を変えて3回行い、2回目と3回目の数値の平均より「平均純音聴力レベル」を算出します。
語音聴力検査
日常会話で使われる言葉を、どの程度聞き取れるか調べるための検査です。 ヘッドフォンからランダムに流れる「ア・コ・ニ・タ…」といった語音や「1・6・7・2…」といった1桁の数字を聞き取り、用紙に記入します。被験者の様子をみながら流れる音声の大きさを変化させ、どのくらい聞き取れたか正解率を出します。この検査でわかる「言葉を聞き取る能力」のことを「語音明瞭度」といいます。
難聴・聴力障害で後遺障害等級認定された場合の慰謝料
交通事故による怪我が後遺障害として認められると、“後遺障害慰謝料”と“後遺障害逸失利益”を新たな損害として請求することができます。 なかでも後遺障害慰謝料は、後遺症を負ったことに伴う苦痛を補償するという目的があり、慰謝料の金額は等級ごとにある程度定められていますが、どの算定基準を用いるかによって差異が生じます。 交通事故における慰謝料の算定基準は、次の3つとなります。
| 算定基準 | 概要 |
|---|---|
| 自賠責基準 | 自動車損害賠償保障法に基づく、基本的な対人賠償の確保を目的とした基準 |
| 任意保険基準 | 自動車保険会社が独自に設けている基準(※基準の内容は、基本的に非公開) |
| 弁護士基準 | 過去の裁判例を基につくられた基準 |
では、自賠責基準と弁護士基準の各等級における後遺障害慰謝料について、相場を表でみてみましょう。
| 等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 4級(3号) | 737万円 | 1670万円 |
| 6級(3号・4号) | 512万円 | 1180万円 |
| 7級(2号・3号) | 419万円 | 1000万円 |
| 9級(7号・8号・9号) | 249万円 | 690万円 |
| 10級(5号・6号) | 190万円 | 550万円 |
| 11級(5号・6号) | 136万円 | 420万円 |
| 14級(3号) | 32万円 | 110万円 |
表をみると、自賠責基準よりも弁護士基準の相場が2倍以上高いことがわかります。 3つの基準のうち、もっとも高額となるのは「弁護士基準」です。 慰謝料の3つの基準について、さらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
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交通事故による聴力低下で後遺障害等級認定を受けるための3つのポイント
難聴や耳鳴り、耳漏などの聴力障害で後遺障害等級認定を受けるためには、次の3つのポイントを押さえることが重要です。
- ① 後遺障害等級認定に必要な検査を受ける
- ② 正確な後遺障害診断書を作成してもらう
- ③ 自分に合う後遺障害等級認定の申請方法を選ぶ
これらのポイントを押さえたうえで後遺障害等級認定の申請を行うと、適切な後遺障害等級認定を受けられる可能性をより高めることができます。また、後遺障害として認められれば、“後遺障害慰謝料”と“後遺障害逸失利益”を新たに損害賠償請求でき、受け取れる賠償金を大幅に増やすことに期待できます。 では、次項にて押さえるべき3つのポイントについて、詳しく解説していきます。
①後遺障害等級認定に必要な検査を受ける
聴力障害で後遺障害等級認定を受けるためには、「事故が原因で聴力障害が残った」ということを証明するために必要な検査を行わなければなりません。 聴力障害が見受けられる場合、以下のような検査を耳鼻科で行います。
<難聴>
- 鈍音聴力検査
- 語音聴力検査
<耳鳴り>
- ピッチ・マッチ検査
- ラウドネス・バランス検査
上記の検査をしていない状態で後遺障害等級認定の申請を行うと、検査を受けるようにと書類を戻されたり、非該当とすぐに判断されてしまうおそれがあります。
②正確な後遺障害診断書を作成してもらう
後遺障害等級認定の申請には、必ず医師の作成する「後遺障害診断書」が必須となります。 後遺障害診断書の内容は、後遺障害等級の審査を行ううえでもっとも重要視される書類といっても過言ではありません。内容次第では、等級認定を左右するほどの書類となるため、自覚症状や検査結果などを漏れなく正確に記されている後遺障害診断書であることが大切です。 正確な後遺障害診断書を作成してもらうためには、後遺障害診断書を書き慣れている医師が在籍する病院を選択するとよいでしょう。交通事故の患者を受け入れており、交通事故による怪我の治療経験が豊富な病院に絞ると、より早く見つけられるはずです。 後遺障害診断書の詳細については、以下のページをご覧ください。
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③自分に合う後遺障害等級認定の申請方法を選ぶ
後遺障害等級認定の申請には、下表の2つの方法があります。
| 事前認定 | 相手方保険会社に書類の準備や申請を任せる方法 |
|---|---|
| 被害者請求 | 被害者自身が書類の準備や申請を行う方法 |
2つの方法のうち、おすすめする申請方法は被害者請求です。 事前認定の場合は、書類を準備する手間や労力がかからないというメリットがありますが、後遺障害を証明するための重要な書類を相手方保険会社が添付してくれるとは限りません。そのため、提出する書類を自分で選び申請できる被害者請求の方が後遺障害等級の認定が有利になる可能性があります。適切な後遺障害等級認定を受けるためには、被害者請求で申請を行うようにしましょう。 後遺障害等級認定の申請方法について、さらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
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交通事故による聴力低下で後遺障害についてお悩みの方は弁護士法人ALGにご相談ください!
聴力障害で後遺障害等級認定を受けるためには、適切に通院し、必要となる検査を正しく受けることが大切です。しかし、どのように通院すればよいのか、必要となる検査はどの検査で、後遺障害診断書をどのように作成してもらえばよいのか、判断に迷われる方がほとんどでしょう。 この点、弁護士であれば、通院の仕方や必要となる検査の受け方などについて具体的にアドバイスできます。適切な後遺障害等級認定に向けた様々な対策を事前に練ることができるため、ぜひお気軽に弁護士法人ALGへご相談ください。
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