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交通事故慰謝料の税金について

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

被害者の方にとって、やっと交通事故が解決したにもかかわらず、税金の未納を税務署から指摘されることは避けたいものです。本記事では、そのような不安の解消のために、交通事故で受け取った金銭と税金の関係について詳しく説明します。

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交通事故の慰謝料に税金はかかるのか?

一般的に、給料や相続財産等の金銭を受け取った場合、税金を納めないといけないイメージがあります。しかし、交通事故の慰謝料を受け取っても、税金を納める必要はありません。それは、交通事故の慰謝料は、被害者が事故によって被った損害を補填するためのもので、被害者が慰謝料を受け取ることで利益を得ている訳ではないからです。税金は利益を得た場合に課税されますので、交通事故に遭って賠償を受けた場合は、原則的に非課税扱いとなります。

非課税になる慰謝料

慰謝料だけでなく、交通事故に遭った際、様々な費目について損害賠償金を請求することができます。そのような被害者本人が受け取る損害賠償金については、全て非課税となります。例えば、休業損害についてはどうでしょうか? 休業損害は、給料の代わりに支払われているように思いますし、通常の給料であれば所得税や住民税が差し引かれて支払われます。しかし、休業損害も慰謝料と同じく交通事故の損害賠償金にあたりますので非課税となります。 休業損害は給与の代替ではなく、あくまでも、交通事故によって休業せざるを得なくなった損害を補填していると考えられています。もちろん、確定申告や年末調整をする必要はありません。このような所得に関する非課税の規定は、所得税法第9条1項17号や所得税法施行令第30条1号~3号の法律で定められていますので、あわせてご確認ください。 損害賠償請求や休業損害の税金について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

被害者が受け取った慰謝料

交通事故の慰謝料は原則的に非課税ですが、慰謝料の受取人が本人かどうかによって、課税の有無が変わるのでしょうか? 被害者本人が慰謝料を受け取った場合は、原則どおり非課税となります。ただし、被害者本人が受け取る慰謝料のなかでも、慰謝料の金額が、被った損害と比べて明らかに高額であると認められたものについては課税されるおそれがあります。 保険会社から支払われる慰謝料についてこのようなケースは考えられにくいですが、加害者から反省の意を込めて支払われる見舞金等が高額すぎた場合は注意が必要です。

死亡事故の被害者遺族が受け取った慰謝料

死亡事故では被害者本人が死亡慰謝料を受け取ることはできません。代わりに、被害者の相続人にあたる遺族が受け取ることになります。相続人が金銭を受け取るため、通常の相続のように相続税がかかるのではないかと思いますが、死亡慰謝料についても損害を補填している損害賠償金の一つであることに変わりありません。そのため、死亡慰謝料を遺族が受け取ったとしても、相続財産を取得したとみなされず、非課税になります。 死亡慰謝料について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

加害者から受け取った見舞金

交通事故に遭った被害を賠償する目的で支払われた金銭であっても、課税対象となるケースがあります。例えば加害者から、被害の程度に比べて多額の見舞金を受け取ったような場合です。 3週間程度の通院で怪我が完治した際に、3万円程の見舞金であれば損害補填の範囲内ですが、受け取った金額が100万円であった場合は明らかに損害額を超えているため、課税対象となります。 加害者から見舞金のような名目で金銭を受け取る場合は、被害に見合った金額なのか、一度確認すると良いでしょう。

物損の賠償金

身体に怪我もなく、車等の物品のみが壊れた物損事故の場合、加害者側から車の修理費用・代車費用等が支払われます。このような物損事故で支払われる賠償金も、原則的に非課税として扱われます。 ただし例外的に、壊れた物品が事業用であると、事故に遭わなければ利益を得るための物品であったと判断され課税対象になります。具体的には、事故車に載せていた売却目的の商品が壊れてしまった場合です。事故に遭わなければ商品を売って利益を得ていたと考えられ、壊れた商品の賠償金は商品代と同じ性質であり、事業用の物品に関する賠償金を受け取った場合は利益を得たとみなされます。 物損事故の賠償金について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

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課税対象になる交通事故慰謝料

基本的に、交通事故による被害への補償である慰謝料や賠償金は非課税となります。しかし、場合によっては、例外的に税金を支払わなければならないケースもあるようです。 では、税金が発生する例外とはどういった状況を指すのでしょうか?税金の種類ごとに、課税対象となるケースをみていきましょう。

所得税がかかるもの

交通事故では、損害を補填する以上の金銭を受け取った場合に所得税がかかります。 具体的には、2つ事例が考えられます。1つは、加害者から見舞金といった名目で多額の金銭を受け取った場合です。被害の程度と見舞金の額が不釣り合いであると、課税されるおそれがあります。 2つ目は、事業用に使っていた物品が壊れた際に受け取った賠償金です。通常、事業用に使っていた物品は売上を上げるための経費と考えられます。その経費が補填されることは、収入を得たとみなされて所得税が課されます。自営業者の方は確定申告する際に、賠償金の申告を忘れないようにしましょう。

相続税がかかるもの

交通事故で相続人が受け取る死亡慰謝料や死亡逸失利益は非課税ですが、被害者が損害賠償金を受け取る権利(債権)を相続した場合は課税対象となります。具体的に以下のようなケース考えられます。

①被害者が示談締結後に賠償金を受け取ることなく死亡してしまった場合 ②裁判で和解や判決が確定しているにもかかわらず、被害者が賠償金を受け取る前に死亡してしまった場合 このように、示談や裁判等で被害者が賠償金を受け取れることが確定した後に、被害者が死亡した場合は、相続人は賠償金を得たのではなく、債権を相続し金銭を受領したとみなされ、相続税が課税されてしまいます。

贈与税がかかるもの

交通事故で亡くなられた方が、“別途”死亡保険に加入していて死亡保険金をもらうときは、課税対象となるケースがいくつか挙げられます。 例として、贈与税がかかるケースは、死亡保険の契約者・被保険者・保険金の受取人がそれぞれ異なる場合です。さらに、相続税や所得税がかかるケースも想定しておきましょう。相続税がかかるのは、法定相続人にあたる方が保険金を受け取る場合であり、所得税がかかるのは、契約者が保険金の受取人も兼ねる場合です。 このように、契約内容や、誰がどの立場なのかによってさまざまな税金がかかることがありますので、確認が必要です。

保険会社から保険金を受け取った場合

交通事故に遭った場合に受け取る金銭は、加害者から支払われる慰謝料だけではありません。むしろ、保険会社から保険金として受け取る方が多いでしょう。保険の種類は様々ですが、その種類ごとに課税区分が違います。 基本的には、被害者が生きている間に支払われる保険金は非課税ですが、それ以外の場合は課税対象となることがあります。保険の種類ごとに課税の有無をまとめましたので、図表とあわせてみてみましょう。

【死亡保険金の課税の有無と範囲】
保険の種類 課税の有無・範囲
自賠責保険 非課税
対人賠償保険
無保険車傷害保険
人身傷害保険 被害者の過失割合相当分課税
自損事故保険 全額課税
搭乗者傷害保険
傷害保険

自賠責保険・対人賠償保険・無保険車傷害保険

交通事故被害では、加害者の自賠責保険からの保険金支払いが原則です。さらに、多くの場合、加害者の対人賠償保険からも支払われます。 しかし、死亡したりや後遺障害を負ったりしたのに、加害者が保険に加入していなかった場合等には、「無保険車傷害保険」という被害者が加入している保険からの補償を受けることもあります。これら、事故において支払われる基本的な保険金、またその補填となる無保険車傷害保険による保険金は、課税対象にはなりません。

人身傷害保険

被保険者や契約車に乗っていた人が死傷した際に保険金が支払われる保険で、被害者生存中に支払われる保険金は全て非課税です。しかし、被害者時の死亡保険金のうち加害者の損害賠償金の性格を有しない「被害者の過失割合に相当する部分」は課税されます。

自損事故保険

自損事故保険は、被害者の自動車保険に付帯させる保険であり、被保険者自らの過失で事故を起こした場合に保険金が支払われる仕組みです。被害者が生きている間に支払われた保険金については、全て非課税となります。しかし、被害者が亡くなった場合に支払われる死亡保険金については、全額課税の対象とされます。

搭乗者傷害保険

被害者加入の自動車保険のオプションとして付けられている保険で、契約車に乗っていた人が事故により死傷した際に、乗車していた全員へ契約で定めた保険金が支払われます。この場合、受け取った保険金は原則非課税ですが、死亡保険金は全額が課税されます。

傷害保険

被害者の状態次第で税金の要否が変わります。怪我をしたことにより生存中に傷害保険から保険金が支払われる程度であれば、一律税金はかかりません。一方、被害者の死亡を原因として支払われる保険金は、課税対象となりますので注意しましょう。

交通事故慰謝料を受け取ったときの税金が気になる場合は弁護士にご相談ください

交通事故で受け取る金銭は、基本的に非課税ですが、受け取り時期や金額、保険の種類等によっては課税対象となる場合があります。 税金の未納は、故意でないにもかかわらず、追徴や罰則を課されるケースもあり、個人で課税の有無を判断するのは危険です。 特に、死亡事故の場合は相続も絡んだ問題のため、より複雑になる傾向にあります。 まずは、交通事故の専門家である弁護士に慰謝料の交渉段階から相談し、受け取る慰謝料が課税されるかどうか一緒に確認しながら、解決されることをおすすめします。

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