弁護士費用特約とは | 適用範囲や使えないケース

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員
この記事でわかること
保険の契約時やテレビの宣伝などで、「弁護士費用特約」という言葉を耳にしたことはありませんか?交通事故の被害に遭い、弁護士に依頼したいと考えている場合、加入している自動車保険にこの特約が付いていれば、費用面の不安が大幅に解消されます。 このページでは、弁護士費用特約の基本的な内容についてお話していきます。「弁護士の力を借りたいけど、費用が心配……」とお悩みの方には、ぜひ知ってほしい内容です。一緒に理解を深めていきましょう。
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目次
弁護士費用特約とは
弁護士費用特約とは、交通事故に遭ったとき、相手方との示談交渉を弁護士に依頼したりするのにかかった費用を、保険会社に負担してもらえるオプションサービスです。 負担してもらえる金額には上限が設定されているものの、死亡事故の場合や重度の後遺障害が残ってしまった場合等を除き、限度額を超えるケースはあまり多くはありません。そのため、たいていの場合、自己負担ゼロで弁護士のサポートを受けられます。
あなたも加入しているかも?弁護士費用特約は加入率が高い
保険会社によって異なることもありますが、近年、弁護士費用特約への加入数は増えており、自動車保険に加入している人のうち、5~7割程度が弁護士費用特約に加入しているといわれています。しかし、弁護士費用特約に加入しているケースが多いにもかかわらず、事故に遭ったとき、契約当初にどのような特約を付けていたか覚えていなかったり、契約とセットで付いていたこと(自動付帯)を知らなかったりして、弁護士費用特約に加入していることに気づいていない方もいらっしゃいます。 また、自身が加入していなくとも、家族が加入している場合や、火災保険や医療保険といったほかの保険に弁護士費用特約が付いている場合には、利用できる可能性があります。 事故に遭ってしまったら、自身の自動車保険で弁護士費用特約に加入しているかどうか、加入していなかったとしてもほかの手段で利用できる状況にないか、一度確認してみましょう。
弁護士費用特約の適用範囲
自身が加入していなくとも、家族が加入している場合には弁護士費用特約を利用することができる可能性があります。
弁護士費用特約の適用範囲、つまり利用できる人の範囲は、下図のとおりです。弁護士費用特約を付けた自動車保険の「記名被保険者」本人のほか、その配偶者・同居の親族・別居している子(未婚)、弁護士費用特約を付けた自動車保険の契約車両に乗っていた人・契約車両の所有者も利用できます。
なお、「記名被保険者」とは、契約車両を主に運転する人のことです。多くの場合は契約者と同じ人になりますが、必ずしも同一である必要はありません。例えば、未成年であるため契約者となれない場合には、記名被保険者と契約者は別になります。
車に乗っていなくても弁護士費用特約は使える
車に乗っているときのみではなく、自転車に乗っているときや歩行中、バスやタクシーに乗っているときに交通事故に遭った場合でも、弁護士費用特約の補償の対象となる人は、特約を使うことができます。なお、保険内容によっては、適用範囲が異なるケースもあります。詳細は契約している保険会社の担当者にお問い合わせください。
弁護士費用特約の補償内容
法律相談費用は10万円まで補償
保険会社によっては、弁護士費用特約の補償内容の一つとして、交通事故に関して弁護士に相談するときにかかった費用(法律相談費用)も、負担してもらえる場合があります。 具体的には、1事故1名につき、10万円※1を限度額として補償されます。弁護士法人ALGの場合を例にすると、法律相談費用は30分につき5000円(LAC基準※2を適用)であるため、弁護士費用特約を使って1事故1名につき10時間分※3のご相談が可能です。通常、1回のご相談にかかる時間は1~2時間程度ですので、たいていのケースが補償枠内でご相談いただけます。
※1:限度額は保険会社ごとに定められており、弁護士費用と別枠で設けられているかどうかも保険会社によって違う場合があります。
※2:日弁連リーガル・アクセス・センター(通称:LAC)が定めた「弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準」。日弁連の協定保険会社以外はこの基準とは異なる算定方法を使用している場合があります。
※3:すでに同一事故について、弁護士費用特約を使って別の弁護士事務所等にもご相談いただいている場合は、残りの補償枠に応じた時間となります。
弁護士費用は最大300万円まで補償
弁護士に依頼することになった場合、着手金・報酬金・日当・訴訟費用・仲裁や和解、調停にかかる費用等が発生します。弁護士費用特約を使うことによって、これらの弁護士費用を1事故1名につき300万円※の限度で補償してもらえます。
※上限金額は保険会社ごとに定められていますが、300万円を限度額としている保険会社が多いです。
300万円を超えるケース
弁護士費用が300万円を超えるケースは、事故で被害者が亡くなってしまったり、重傷を負ってしまったりして、損害賠償金全体の額が大きくなる事案で考えられます。 例えば、症状固定(治療を続けてもこれ以上の改善は見込めないこと)の診断を受けるまでに2年を要する重傷を負い、弁護士に依頼したことで、後遺障害等級第9級を獲得し、示談交渉の末2000万円の経済的利益が生じたとします。 この場合、弁護士費用特約を使ったときに利用される報酬基準(LAC基準)に基づいて計算すると、着手金と成功報酬だけでも最低327万円はかかり、弁護士費用特約で補償してもらえる限度額を、27万円分超えてしまいます。また、そのほかにも、手続費用や調査費用等の実費、郵便代等の諸経費といったものが費用としてかかります。 ただし、このように弁護士費用特約の上限300万円を超えるのは、高額な賠償請求を行うケースがほとんどであるため、超過した分の金額は、獲得した賠償金から差し引いて、いただくことになります。したがって、弁護士費用を自費でお支払いいただいたり、依頼することにより費用倒れになったりすることは、極めてまれでしょう。
弁護士費用特約のメリット
交通事故発生直後から費用倒れの心配なく弁護士に相談・依頼できる
利用できる弁護士費用特約がなければ、物損事故や傷害の程度が軽い人身事故の場合、得られる損害賠償金が少額になり、弁護士費用の方が上回ってしまうおそれがあります。このようなケースでは、弁護士への依頼をためらってしまう方が多いかと思います。 しかし、弁護士費用特約を利用できれば、費用倒れを心配する必要はほとんどありません。弁護士費用は保険会社が負担してくれるからです。負担してくれる弁護士費用には限度額が定められているものの、高額案件でなければ、限度額を超えることはほとんどありません。そのため、むちうち等の比較的軽い傷害を負った場合でも、弁護士費用特約を利用することで、交通事故発生直後から、費用を気にせず安心して弁護士に相談・依頼できます。
慰謝料を含む損害賠償金額が大幅にアップする
弁護士に依頼すると、慰謝料を含む損害賠償金額が増額するケースが大半です。 慰謝料の算定基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があり、基本的には弁護士基準が最も高額になります。とはいえ、被害者自身で保険会社と示談交渉した場合、弁護士基準を適用してもらうことは難しいといえます。 しかし、弁護士が介入すれば、弁護士基準に基づき計算してもらうことができます。また、弁護士は、過失割合について適切な割合を認めるように交渉することや、後遺障害等級認定の申請前の段階から、後遺障害等級獲得に向けたサポートを行うことも可能です。 弁護士に相談・依頼することで、損害賠償金額が大幅にアップする可能性があります。
保険会社とのやりとりを弁護士に任せることができる
弁護士に依頼し、保険会社とのやりとりを任せられれば、被害者の方ご自身で示談交渉を行うという手間が省けます。 交通事故による負傷のせいで、身体的にも精神的にもダメージを負っているなかでの示談交渉は、さらなる消耗を招いてしまいます。自身が主張する交通事故態様や過失割合、後遺障害等級、損害賠償金等で示談交渉をするためには、それらを立証する資料を収集しなければなりません。しかし、それには専門的な知識が必須です。弁護士費用特約を使って弁護士に依頼すれば、このような労力がかかる示談交渉を任せることができます。
間違った対応をしないで済む
事故後、通院の仕方や、保険会社とのやりとり等には気をつけなければなりません。場合によっては、損害賠償金の算定時に不利になってしまい、賠償額が減ってしまうおそれがあります。 そのため、交通事故の被害に遭ってしまったら、早い段階で弁護士に相談・依頼することをおすすめします。個別の状況に応じた適切なアドバイス・サポートを受けられ、間違った対応をしないで済みます。費用が気になって迷いが生じてしまっても、弁護士費用特約の利用により、費用を気にせず早期に弁護士の力を借りることができます。
弁護士費用特約のデメリット
弁護士費用特約を使うことに、基本的にデメリットはありません。なお、自動車保険に弁護士費用特約を付ける際には年間の保険料が上がりますが、年間1500円程度(※保険会社によって違いはあります)であるため、万が一の備えとして付帯させておくことが望ましいでしょう。
弁護士費用特約を利用する際のポイント
弁護士は自分で選ぶことができる
弁護士費用特約を利用する際、どの弁護士に依頼するかは、自分で選ぶことができます。 保険会社から弁護士を紹介されることもありますが、必ずしも従わなければならないものではありません。ただし、紹介された弁護士以外に依頼したい場合は、後にトラブルが生じないよう、前もって保険会社に連絡し、同意を得ておいた方が良いでしょう。
弁護士費用特約を使っても、保険の等級には影響がない
保険の等級が下がるのは、物損事故や人身事故で対物・対人保険を使った場合や、車両保険を使った場合等です。個人の自動車保険に付いている弁護士費用特約を使っても、翌年の保険の等級に影響はなく、保険料が上がることもないので、ご安心ください。
弁護士費用特約が使えないケース
弁護士費用特約は、特約を付けている本人(記名被保険者)だけではなく、その配偶者等、広い範囲に適用されます。しかし、適用範囲内の人であっても、弁護士費用特約が使えないケースがあります。例えば、以下のようなケースです。
- 自身の故意または重大な過失によって事故が発生した
- 無免許運転をしていた
- 麻薬の使用等により正常な運転ができない状態で運転していた
- 飲酒運転をしていた
- 車同士でぶつかり合う等の闘争行為(いわゆるケンカ)や、自殺行為、犯罪行為によって事故が発生した
- 記名被保険者の配偶者等(同じ弁護士費用特約の適用範囲内の人)に対する損害賠償請求
- 台風や洪水、高潮、地震といった自然災害によって事故が発生した
- 正しい乗車位置に座っていなかったり、極めて危険な方法で乗っていたりした
- 自転車と歩行者がぶつかってしまった、犬に噛まれてしまった等、自動車に関わる事故ではなかった
弁護士費用特約の使い方
交通事故が得意な弁護士を探す
交通事故について相談・依頼するのであれば、やはり交通事故を得意としており、知識が豊富な弁護士を選んだ方が良いでしょう。弁護士費用特約を利用する際、弁護士は自分で選ぶことができますので、まずは交通事故案件を得意としている弁護士を探しましょう。 探し方としては、弁護士事務所や法律事務所のWebサイトを閲覧し、「交通事故に精通している」、「交通事故を得意としている」等の記載があるかどうか、過去の解決事例に交通事故の事例があるかどうかを確認する等の方法があります。 また、「示談時点」や「後遺障害等級認定後」ではなく、事故後のどの時点からでも、弁護士が表に立って代理人として動いてくれる事務所をおすすめします。 弁護士の探し方・選び方についてさらに詳しく知りたい方は、併せて以下のページもご覧ください。
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保険会社に連絡し、弁護士費用特約利用の同意を得る
交通事故が得意な弁護士を探し、「この弁護士にお願いしたい!」と決めたら、保険会社に連絡し、弁護士費用特約の利用について同意を得ます。通常、保険会社から利用を断られることはほとんどありません。しかし、保険会社に連絡せずに弁護士のもとへ行き、手続を進めてしまうと、弁護士費用特約が使えない事態になるおそれがあります。また、自己判断が間違っていて、実は自身の状況では弁護士費用特約が使えなかったことに後から気づくケースもあります。 弁護士に相談するときは、慌てて先に進めてしまうのではなく、まずは保険会社への連絡を忘れないよう注意しましょう。
弁護士に弁護士費用特約を使いたいと伝える
保険会社に連絡し、弁護士費用特約の利用について同意が得られたら、相談・依頼したい弁護士に、「弁護士費用特約を使いたい」と伝えます。たいていの弁護士事務所・法律事務所は弁護士費用特約の利用に対応しているので、基本的に拒否されることはないでしょう。 なお、特約を使いたい旨を伝える際は、向こうから尋ねられるとは思いますが、自身が加入している任意保険の保険会社や担当者名、連絡先といった情報も伝えます。そうすればその後の手続は弁護士と保険会社との間で行ってくれます。
弁護士を変更したくなった場合
弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼したものの、担当の弁護士が頼りなかったり、対応が不親切だったりして、弁護士を変更したくなることもあるかと思います。 弁護士費用特約を利用して依頼した弁護士でも、途中で変更すること自体はできます。ただし、保険会社の約款によっては弁護士の変更について制限があるケースがあります。また、すでに支払ってしまった着手金は返還されません。そのうえ新しい弁護士に改めて着手金を支払わなければならないということになれば、さらに費用がかかってしまうため、保険会社としては良い気はしません。よって、途中で弁護士を変更したい場合、必ず事前に保険会社に連絡し、相談するようにしましょう。 以下のページでは、弁護士を変更する方法についてさらに詳しく説明していますので、ぜひ併せてご覧ください。
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弁護士費用特約が特に効果的なケース
被害者に過失がないケース
信号待ちで停車中に追突されたというような、いわゆる“もらい事故”の場合等、被害者に過失がない交通事故のケースでは、弁護士費用特約が効果的です。被害者に過失がない事故の場合は、保険会社に示談交渉を代行してもらうことができません。というのも、弁護士以外が報酬を得る目的で示談交渉をすることは、法律で禁止されているからです。 したがって、被害者自身で加害者または加害者側の保険会社と示談交渉をしなければなりません。このような場合に、弁護士費用特約を使って弁護士に示談交渉を任せられれば、身体的にも精神的にも負担は軽くなります。
後遺症が残りそうなケース
後遺症が残りそうな場合は、後遺障害等級認定が必要になります。後遺障害等級が認定されるか否かは、実際に後遺障害診断書を提出し、申請してみなければわかりません。しかし、ご自身ですべての手続を行うことは難しいと言わざるを得ず、認定されるためには、弁護士への事前相談が非常に有用となります。 なお、後遺障害等級が認定された場合は、受け取れる損害賠償金が高額になるため費用倒れにはならないでしょう。一方、後遺障害等級が認定されなかった場合には、損害賠償金が高額になるとはいえず、費用倒れになるおそれがあります。しかし、そのような場合にも、弁護士費用特約を使えば費用倒れを気にする必要がないため、ためらうことなく弁護士に相談・依頼することができます。
加害者が無保険のケース
加害者が自動車保険に加入しておらず、無保険であるケースでも、弁護士費用特約が有用です。 加害者が無保険である場合、相手方が示談交渉に応じなかったり、訴訟を起こしても出廷しなかったりするほか、資力がないことを理由に損害賠償金が受け取れず、被害者が泣き寝入りすることが多くあります。また、自賠責保険は被害者の最低限の補償をするのみのものであるため、加害者が自賠責保険にしか加入していなかった場合、被害者が十分な損害賠償金を受け取れないおそれがあります。 そこで、弁護士費用特約を使って弁護士に依頼することで、無保険の加害者に対しても法的に損害賠償請求の手続を進めていくことができるため、加害者が支払いに応じない場合でも、強制執行により損害賠償金を回収できる可能性が高くなります。また、結果的に加害者から損害賠償金を回収できなかったとしても、弁護士費用特約を使えば基本的に被害者の費用負担はないため、費用倒れを気にする必要はありません。
請求できる損害賠償金額が小さい交通事故のケース
弁護士費用特約を使えば、弁護士費用は保険会社が負担してくれるため、被害者は加害者から回収できた損害賠償金額分の利益を得られます。そのため、たとえ請求できる損害賠償金額が小さい交通事故であったとしてもきちんと賠償を受けられますし、費用倒れを気にすることなく弁護士に依頼できます。
弁護士費用特約が使えるか、弁護士に相談・確認を
弁護士費用特約を使える状況であるなら、積極的に利用すべきです。弁護士費用特約の保険料を支払っているにもかかわらず利用しなければ、相手方とのやりとりによりストレスがかかってしまううえに、適正な金額の損害賠償金を得られないおそれもあります。 まずは、自身が加入している保険会社に連絡し、弁護士費用特約を使える状況にあるかどうか確認してみましょう。ただし、保険会社によっては弁護士費用特約の利用を良く思わず、「弁護士に相談・依頼する必要はないのではないか」と言われるケースもあります。 たとえそのような態度をとられたとしても、弁護士費用特約を利用してはいけないというわけではありません。保険会社に確認することが難しいときは、弁護士にその旨を相談してみましょう。弁護士費用特約を使える状況にあるかどうか、適切に判断いたします。 交通事故の被害に遭われたとき、弁護士の力を借りることには、多くのメリットがあります。とはいえ、費用が気になるのは当然です。「果たして自分は弁護士費用特約を使えるのだろうか?」「保険会社の確認結果に疑問がある……」といったお悩みを抱えている方は、弁護士に相談し、確認してもらうことをおすすめします。
交通事故被害者専用 相談窓口まずは交通事故の受付スタッフが丁寧にご対応いたします
交通事故に遭いお困りの方へ


交通事故事件の経験豊富な
弁護士が全面サポート
弁護士費用特約を使う場合
本人原則負担なし※保険会社の条件によっては
本人負担が生じることがあります。
弁護士報酬:成功報酬制
※死亡・後遺障害等級認定済みまたは認定が見込まれる場合
※事案によっては対応できないこともあります。
※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。