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飛び出し事故の過失割合はどうなる?歩行者や子供の飛び出し事故

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

車で走行中、急に子供や歩行者が飛び出してきたことでヒヤッとした経験がある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

飛び出し事故は特に子供の飛び出しが多くありますが、飛び出し事故は歩行者側にも過失が認められることもあります。
自転車の飛び出し事故についても、自動車より自転車の方が「交通弱者」となり、自転車の飛び出し事故であっても自動車の過失割合が高くなってしまいます。

この記事では「飛び出し事故」に着目し、争点になりやすい過失割合についてわかりやすく画像を用いて解説していきます。

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目次

飛び出し事故における歩行者の過失割合はどうなる?

飛び出し事故の場合は歩行者にも過失が認められる場合があります。

交通事故の過失割合とは、相手がいる事故が起きた時に「自分の過失(責任)」と「相手の過失(責任)」を割合にして表したものをいいます。交通事故の態様は様々であり、過失割合はその態様に応じて決まります。過失割合が決まると損害賠償額に影響します。

飛び出し事故には様々なケースがあります。
子供の場合、飛び出す=危ないことだと認識ができているかどうかで過失の大きさが異なります。交通弱者である歩行者の場合は、車両に歩行者に対する注意義務があり、基本的に歩行者の過失は低くなります。自転車の場合は、様々な年齢の方が運転する「交通弱者」であり、過失割合の争点となることが多くあります。

交通事故では過失割合が大きな争点となります。次項で詳しく解説していきます。

横断歩道上の事故の過失割合は原則「自動車:歩行者=100:0」

横断歩道上の事故の過失割合は原則として自動車:歩行者=100:0となります。

歩行者は「交通弱者」と呼ばれ、事故の被害を受けやすく弱い立場にあります。交通ルールでは弱い立場の者ほど保護されるべきとの考え方から自動車のような強い立場のものには注意義務があります。そのため、歩行者が悪い飛び出し事故でも自動車の過失割合が大きくなりやすい傾向にあります。

子供の飛び出し事故と過失割合の考え方

子供の飛び出し事故

子供の飛び出し事故では、子供であることを考慮してある程度過失割合が付くことが多いです。なお、子供に「飛び出しによる危険を予測する判断能力(事理弁識能力)」がない場合、被害者の過失は親の過失で判断することも知っておきましょう。事理弁識能力は一般的に小学生になるころには身に付くと考えられています。

具体的な年齢での過失割合については次項で解説していきますが、ここでは「過失相殺」について触れたいと思います。
「過失相殺」とは被害者の過失割合に応じて慰謝料などの損害賠償額を減額するという考え方です。

例えば加害者:被害者に80:20の過失割合がつき、慰謝料が100万円だったとします。
そうなると100万円から20%を過失相殺し、実際に受け取る慰謝料は80万円となります。

6歳以上13歳未満の児童の場合

結論として、およそ6歳以上の子供には事理弁識能力が備わったとされており、大人と比べて5~20%程度の過失割合が低くなるケースが多いです。

しかし、これはあくまでも目安であり、子供の成長の度合いによって個人差があり、個別の事情が考慮されます。
子供に事理弁識能力があると判断される場合は、「子供自身の過失」で過失割合が判断されます。

6歳未満の幼児の場合

事理弁識能力のない小さな子供に責任を問うことは困難です。その代わりに、危険が予測できる場所で、親がしっかりと子供を監視し、手をつなぐなどの注意を払っていなかった場合には親に対し一定の過失が認められることがあります。

また、両親以外にも、親族やベビーシッターなど「被害者と身分上・生活上一体の関係にある者」については過失が認められることがあります。

子供の過失割合は示談交渉でもめやすい

子供の過失割合は示談交渉でもめやすい

大人同士でも争いになりやすい過失割合ですが、子供の場合は以下の理由でさらに揉めやすくなります。

  • ドライバーと証言が異なる
  • 事故状況をうまく言葉で表現できない
  • 子供にとって交通事故が大きなショックとなりあまり覚えていない
  • 子供の証言よりも大人の証言の方が説得力がある

こういった場合に泣き寝入りするのではなく、親が子供の証言を根気よく導き出すことが大切です。

幼児の場合では「目撃者の証言」や「加害車両の損害程度」から正確な事故形態を導き出すことが重要となりますが、素人には限界があります。そこで、弁護士などに相談し、調査を依頼することをおすすめします。

【ケース別】子供による飛び出し事故の過失割合は?

信号機のない横断歩道で子供が飛び出した場合

歩行者が飛び出して車と衝突した事故の場合、歩行者側の過失割合は原則、横断歩道上の事故では5%、横断歩道以外の事故では10%の過失修正がなされます。
これを踏まえ、様々なケースを次項で解説していきます。

信号機がない横断歩道のケース

幼児の飛び出し 児童の飛び出し
歩行者 歩行者
0 100 0 100

信号がない横断歩道で飛び出し事故が起きた場合の過失割合は、被害者が幼児(6歳未満)であっても、児童(6歳以上13歳未満)であっても被害者:加害者=0:100です。

歩行者側に飛び出しがあった場合、歩行者側に5%程度加算修正されます。しかし歩行者が幼児・児童であった場合は、それぞれ5%・10%程度減算修正されます。
この修正要素には以下の2つがあります。

  • ①一方の過失相殺率を増加させる要素(加算要素)
  • ②一方の過失相殺率を減少させる要素(減算要素)

減算要素となる主な項目は、

  • 幼児・児童
  • 老人
  • 加害者の著しい過失

などです。

信号機がある横断歩道のケース

信号機がある横断歩道で子供が飛び出した場合

信号のある横断歩道における、直進者と子供の飛び出し事故の過失割合は以下の表のとおりです。上の表は直進車の場合、下の表は右左折車の場合を表しています。

信号の色で以下のように過失割合が異なりますので、ご確認ください。

①直進の車の場合
・歩行者信号が青、車両の信号が赤➡歩行者:車両=0:100
・歩行者信号が赤、車両の信号が青➡歩行者:車両=55:45

②車両が右左折車の場合
・歩行者信号が青、車両の信号が青の場合➡歩行者:車両=0:100
・歩行者信号が赤→黄→青に変更、車両の信号が赤の場合➡歩行者:車両=0:100
・歩行者信号が赤、車両の信号が青の場合➡歩行者:車両=35:65

歩行者と直進車 幼児の飛び出し 児童の飛び出し
信号機 歩行者 歩行者 歩行者
歩行者
信号変更なし
0 100 0 100
10 90 10 90
15 85 20 80
35 65 45 55
55 45 65 35
歩行者
信号変更あり
安全地帯がない場合
青→黄→赤 0 100 0 100
赤→青 5 95 10 90
青→黄→赤 15 85 20 80
黄→赤 15 85 25 75
歩行者
信号変更あり
安全地帯がある場合
青→黄→赤 15 85 25 75
黄→赤 25 75 35 45
歩行者と右左折車 幼児の飛び出し 児童の飛び出し
信号機 歩行者 歩行者 歩行者
歩行者
信号変更なし
15 85 20 80
15 85 20 80
15 85 25 75
0 100 0 100
15 85 25 75
35 65 45 55
歩行者
信号変更あり
赤→黄→青 0 100 0 100
赤→青 5 95 10 90

横断歩道付近や交差点以外の道のケース

横断歩道や交差点以外の道
幼児の飛び出し 児童の飛び出し
歩行者 歩行者
20 80 25 75

横断歩道付近や交差点以外の道路の場合とは、横断歩道が近くにない直進道路などです。
横断歩道付近や交差点以外の道路で起きた子供の飛び出し事故の過失割合は、上記の表の通りです。

基本の過失割合は歩行者:車両=20:80ですが、歩行者に飛び出しがあると10%ほど過失修正されます。しかし、幼児は10%程度、児童は5%程度減算修正されるため、上記の数字となります。

【ケース別】歩行者による飛び出し事故の過失割合は?

次項より、歩行者による飛び出し事故の過失割合について、歩行者と自動車の基本的な過失割合をもとに、ケース別に解説していきます。

横断歩道上での飛び出し事故

歩行者側に飛び出しがあった場合、過失割合が修正されるケースには、歩行者側に5%~10%程度の過失割合が加算されます。

まずは、歩行者が横断歩道を渡っているときに自動車と衝突した場合について画像を用いて解説していきます。
※「横断歩道上」には横断歩道から1~2m離れた場所も含まれます。

歩行者の横断中に信号が変わっていないケース(直進車)

交差点において歩行者が横断中に信号が変わっていないケースでは、歩行者側の信号機の色と車両の信号機の色が重要になります。車両が信号無視をした場合では100%車両に過失割合が付きます。詳しい過失割合は下記の表で示しています。

歩行者の飛び出しと過失割合

①青信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で直進した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

②黄信号(以下、「歩行者の信号が黄信号」という表現では、歩行者専用信号機の青点滅も含む)で横断を開始した歩行者が、赤信号で直進した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

③赤信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で直進した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

④赤信号で横断を開始した歩行者が、黄信号で直進した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

⑤赤信号で横断を開始した歩行者が、青信号で直進した自動車と衝突した場合。

自動車 歩行者
信号の色 過失割合 信号の色 過失割合
100 0
90 10
80 20
50 50
30 70

歩行者の横断中に信号が変わっていないケース(右左折車)

交差点において自動車が右左折をしている状況で、歩行者の信号が横断途中で変わらなかったケースでは、基本過失割合は下表のとおりになります。

歩行者の飛び出しと過失割合

①青信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

②黄信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

③赤信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

④黄信号で横断を開始した歩行者が、黄信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

⑤赤信号で横断を開始した歩行者が、黄信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

⑥青信号で横断を開始した歩行者が、青信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

⑦黄信号で横断を開始した歩行者が、青信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

⑧赤信号で横断を開始した歩行者が、青信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。

自動車 歩行者
信号の色 過失割合 信号の色 過失割合
100 0
90 10
80 20
80 20
70 30
100 0
70 30
50 50

歩行者の横断中に信号が変わったケース(直進車)

道路を横断する歩行者の安全確保のために道路上の交通を規制しているところ(安全地帯)がない道路において、歩行者の信号が横断途中で変わったケースでは、基本過失割合は下記の表のとおりとなります。なお、横断歩道を渡りきる直前に信号が変わった場合は横断途中で信号が変わらなかったケースと同じものとみなします。

自動車 歩行者
信号の色 過失割合 信号の色 過失割合
100 青→黄→赤 0
90 赤→青 10
90 青→黄→赤 10
80 黄→赤 20

歩行者の飛び出しと過失割合

①歩行者が青信号で横断を開始し、途中で黄信号に、さらに赤信号に変わったところで、赤信号で直進した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

②歩行者が赤信号で横断を開始し、途中で青信号に変わったところで、赤信号で直進した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

③歩行者が青信号で横断を開始し、途中で黄信号に、さらに赤信号に変わったところで、青信号で直進した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

④歩行者が黄信号で横断を開始し、道路の中央付近で赤信号に変わったところで、青信号で直進した自動車と衝突した場合。

安全地帯がある道路の場合

安全地帯がある道路において、歩行者の信号が横断途中で変わったケースでは、基本過失割合は下表のとおりになります。安全地帯がある場合、歩行者は事故回避のために安全地帯に留まる義務があると考えられているため、安全地帯がない場合に比べて歩行者の過失割合は高く設定されています。

自動車 歩行者
信号の色 過失割合 信号の色 過失割合
70 青→黄→赤 30
60 黄→赤 40

歩行者の飛び出しと過失割合

①歩行者が青信号で横断を開始し、安全地帯の手前または直後で黄信号に、さらに赤信号に変わったところで、安全地帯の先において、青信号で直進した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

②歩行者が黄信号で横断を開始し、安全地帯の手前または直後で赤信号に変わったところで、安全地帯の先において、青信号で直進した自動車と衝突した場合。

歩行者の横断中に信号が変わったケース(右左折車)

交差点において自動車が右左折をしている状況で、歩行者の信号が横断途中で変わったケースでは、基本過失割合は下表のとおりになります。

歩行者の飛び出しと過失割合

①歩行者が青信号で横断を開始し、途中で黄信号に、さらに赤信号に変わったところで、赤信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

②歩行者が赤信号で横断を開始し、途中で青信号に変わったところで、赤信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。

自動車 歩行者
信号の色 過失割合 信号の色 過失割合
100 青→黄→赤 0
90 赤→青 10

信号機のない横断歩道上を渡っていたケース

歩行者の飛び出しと過失割合

歩行者の飛び出しと過失割合

信号機の設置されていない横断歩道上を渡っていた歩行者が自動車と衝突した場合、基本過失割合は、歩行者:車両=0:100となります。

しかし、歩行者に飛び出しがあった場合は、基本過失割合から歩行者側に5%~15%の過失割合が加算されます。
信号機の設置してある横断歩道上の事故とは異なり、事故状況によっても歩行者の過失割合は異なってくるため、加算される割合も幅のあるものとなります。

相手方保険会社が提示している過失割合が、本当に妥当なのか、ご自身で判断することが難しい場合は、弁護士に一度相談されるのをおすすめします。

横断歩道や交差点の近くでの飛び出し事故

歩行者が横断歩道を渡っているときに自動車と衝突した事故の基本過失割合について解説していきます。飛び出し事故の場合には歩行者に5%~15%の過失割合が加算されます。

以降で横断歩道付近の事故について詳しく解説していきます。

歩行者が横断歩道の近くを渡っていたケース(直進車)

歩行者の飛び出しと過失割合

横断歩道の付近を渡っていた歩行者が直進してきた車両と衝突した場合、基本過失割合は歩行者:車両=30:70となります。横断歩道の付近とはどのくらいまでの距離なのかは、一概には決められておらず、道路の幅が14m以内の道路では横断歩道から20~30m以内、道路の幅が14m以上で交通量の激しい道路では横断歩道から50m以内の場所をいいます。

歩行者が横断歩道の近くを渡っていたケース(右左折車)

交差点において歩行者が信号機の設置されている横断歩道の近くを渡っていて、自動車が右左折をしているケースでは、基本過失割合は以下の表のとおりになります。横断歩道の近くとは、大体10~15m以内と考えられています。横断歩道から1~2m付近のところは「横断歩道上」に含まれるので、それよりも離れた場所となります。

歩行者の飛び出しと過失割合

①青信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

②黄信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

③赤信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

④黄信号で横断を開始した歩行者が、黄信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

⑤赤信号で横断を開始した歩行者が、黄信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

⑥青信号で横断を開始した歩行者が、青信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

⑦黄信号で横断を開始した歩行者が、青信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

⑧赤信号で横断を開始した歩行者が、青信号で交差点を右左折した自動車と衝突した場合。

自動車 歩行者
信号の色 過失割合 信号の色 過失割合
95 5
85 15
75 25
70 30
60 40
90 10
60 40
40 60

交差点に直進進入する前の自動車と衝突したケース

交差点において、歩行者が信号機の設置されている横断歩道の直近を渡っていて、自動車が交差点に直進進入する前のケースでは、基本過失割合は下表のとおりになります。

自動車 歩行者
信号の色 過失割合 信号の色 過失割合
90 10
80 20
70 30
50 50
30 70

歩行者の飛び出しと過失割合

①青信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で交差点に直進進入しようとした自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

②黄信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で交差点に直進進入しようとした自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

③赤信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で交差点に直進進入しようとした自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

④赤信号で横断を開始した歩行者が、黄信号で交差点に直進進入しようとした自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

⑤赤信号で横断を開始した歩行者が、青信号で交差点に直進進入しようとした自動車と衝突した場合。

交差点に直進進入した後の自動車と衝突したケース

交差点において、歩行者が信号機の設置されている横断歩道の直近を渡っていて、自動車が交差点に直進進入した後のケースでは、基本過失割合は下表のとおりになります。

自動車 歩行者
信号の色 過失割合 信号の色 過失割合
95 5
85 15
75 25
50 50
30 70

歩行者の飛び出しと過失割合

①青信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で交差点を直進進入し終えた自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

②黄信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で交差点を直進進入し終えた自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

③赤信号で横断を開始した歩行者が、赤信号で交差点を直進進入し終えた自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

④赤信号で横断を開始した歩行者が、黄信号で交差点を直進進入し終えた自動車と衝突した場合。


歩行者の飛び出しと過失割合

⑤赤信号で横断を開始した歩行者が、青信号で交差点を直進進入し終えた自動車と衝突した場合。

歩行者が交差点またはその直近を横断していたケース

[12]~[15]では、歩行者が交差点またはその直近を横断していたケースについて解説します。「交差点の直近」とは、交差点の状況等によっても異なりますが、大体交差点から10m以内の場所をいいます。

歩行者の飛び出しと過失割合

[12]
幹線道路または広狭差のある道路における広路を横断していた歩行者が、直進していた自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=80対20」となります。


歩行者の飛び出しと過失割合

[13]
幹線道路または広狭差のある道路における広路を横断していた歩行者が、交差点を右左折した自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=90対10」となります。


歩行者の飛び出しと過失割合

[14]
幹線道路または広狭差のある道路における狭路を横断していた歩行者が、直進または右左折した自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=90対10」となります。


歩行者の飛び出しと過失割合

[15]
広狭の優先関係がない交差点において、道路を横断していた歩行者が、直進または右左折した自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=85対15」となります。


歩行者の飛び出しと過失割合

[16]
[8]~[15]以外の場所において、道路を横断していた歩行者が、直進していた自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=80対20」となります。

対向・同一方向に進行する歩行者と自動車の事故

以降では、歩行者が道路を横断する場合以外の事故について解説します。まずは自動車と対向・同一方向に進行する歩行者と自動車の事故の基本割合について記載しています。飛び出し事故の場合には歩行者側に5%~10%の過失割合が加算されることがあります。

歩行者の飛び出しと過失割合

[17]
歩車道の区別がある道路で、歩道上を通行していた歩行者が、車道から道路外へ、もしくは道路外から車道へ進入しようとした自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=100対0」となります。


歩行者の飛び出しと過失割合

[18]
路側帯上もしくは歩行者用道路を通行していた歩行者が、自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=100対0」となります。


歩行者の飛び出しと過失割合

[19]
道路に歩車道の区別があるものの、工事中といった理由で歩道が通行できない状態になっており、やむを得ず車道を通行していた歩行者が、自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=90対10」となります。 ただし、このように歩道が通行できず車道通行が許される場合であっても、歩行者はできるだけ車道側端(大体道路端から1m以内)を通行することとなっています。


歩行者の飛び出しと過失割合

[20]
道路に歩車道の区別があるにも関わらず、車道側端を通行していた歩行者が、自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=80対20」となります。


歩行者の飛び出しと過失割合

[21]
道路に歩車道の区別があるにも関わらず、側端以外の車道を通行していた歩行者が、自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=70対30」となります。


歩行者の飛び出しと過失割合

[22]
歩車道の区別がない道路では、対向車から目視しやすくするために、歩行者は道路の右側を通行しなければなりません。そのような道路において、右側通行をしていた歩行者が、自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=100対0」となります。


歩行者の飛び出しと過失割合

[23] 歩車道の区別がない道路において、左側通行をしていた歩行者が、自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=95対5」となります。


歩行者の飛び出しと過失割合

[24]
歩車道の区別がない幅員8m以上の道路で、道路の中央部分を通行していた歩行者が、自動車と衝突した場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=80対20」となります。


歩行者の飛び出しと過失割合

[25]
歩車道の区別がない道路で、[22]~[24]以外のケースの事故が起きた場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=90対10」となります。

後退中の自動車と歩行者の事故

道路を横断していた歩行者が、後退してきた自動車と衝突した事故の基本過失割合について解説していきます。

歩行者の飛び出しと過失割合

[27]
歩行者が後退中の自動車の直後を横断していた場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=80対20」となります。


歩行者の飛び出しと過失割合

[28]
歩行者が後退中の自動車の直後以外を横断していた場合、基本過失割合は「自動車対歩行者=95対5」となります。

自転車の飛び出し事故の過失割合は?

信号機のない交差点で自転車が飛び出してきた場合の基本過失割合は自転車:車両=20:80です。

自転車はバイクよりも小さく、運転者の身体がむき出しになっているため、事故に遭うと大きな被害を受けやすい「交通弱者」に当たります。道路交通法では交通弱者は守られるため、自転車の過失割合はその分低くなります。

しかし、自転車側が交通違反をした場合は自転車の過失割合が高くなるように基本過失割合が修正されます。

自転車の飛び出し事故の詳細については、以下ページもあわせてご覧ください。

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飛び出し事故の過失割合に納得できない場合の対処法

飛び出し事故の過失割合に納得ができない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、道路状況や車の損傷部分、損傷具合、目撃者の証言などさまざまな証拠をもとに正しい事故状況を導き出し、それを正しく相手方に伝え、実情に合った過失割合を相手方と合意できる可能性が高まります。

相手方保険会社が提示する金額は独自の算定基準から算出しているため、適切とは限りません。
示談交渉では、安易に相手方からの示談案を飲まないようにすることが大事です。相手方から示談金の提示があったら、適切な金額なのか弁護士に確認してもらいましょう。

飛び出し事故に関する判例・解決事例

歩行者の飛び出し事故に関する判例

加害者が夜間自動車で走行中、約14m先の道路を右方から左方に横断していた被害者をはねてしまったという事故です。被害者は高次脳機能障害を伴う脳挫傷および胸椎骨折の傷害を負い、症状固定後に後遺障害等第級2級1号の認定を受けました。

裁判所は、本件事故現場が市街地であること、被害者が加害車両の対向車両の通過後にさほど間を置くことなく小走りで反対車線側歩道から道路の横断を開始して事故に至ったことを総合勘案すると本件事故における被害者の過失は25%、加害者の過失75%と認めるのが相当としました。

過失相殺がなされる前の損害賠償額としては、治療費227万6379円、将来の介護費3041万7822円、入通院慰謝料315万円、休業損害378万2465円、後遺障害逸失利益3239万3400円、後遺障害慰謝料2370万円を認めました。(金沢地方裁判所 平成22年6月29日判決)

粘り強い交渉の結果、過失割合を10%有利に修正できた解決事例

被害者の児童は、塾からの帰宅時に塾の目の前の道路を横断しようとしたところ、加害者の車と衝突したというものです。被害者は骨折の傷病を負いましたが、幸い後遺症は残りませんでした。相手方保険会社との争点は「過失割合」です。相手方保険会社は被害者の飛び出しを理由に、一貫して過失割合は「加害者80:被害者20」であると主張してきたため、当事務所に依頼されました。

当方弁護士が事故の刑事記録を精査したところ、相手方保険会社の主張には、①本当に飛び出しの事情があったのか、②仮に飛び出しがあったとしても、加害者側が安全確認義務を怠ったのではないか、等の問題点があることを見出しました。相手方保険会社に類似する裁判例を提示し、粘り強く交渉を行うと、最終的に過失割合は10%有利に過失修正され、「加害者90:被害者10」となりました。その結果、80万円の増額に成功しました。

過失割合でもめている・納得いかない場合は、交通事故の専門家である弁護士にご相談ください

歩行者との事故や、子供の飛び出し事故では「過失割合」が争点になるケースが多くあります。
相手方保険会社から提示された金額に納得ができない場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談しましょう。

特に子供の飛び出し事故では子供が事故についてショックで覚えていないことや、うまく表現できないことがあります。また、子供の証言よりも大人の証言の方が信ぴょう性があるため、過失割合が不利になってしまうこともあります。

事故の態様を証明するには、目撃者の証言や現場検証が必要となることもあり、素人では根気のいる作業です。
交通事故に詳しい弁護士であれば事故状況を調査して立証活動をすることで、有利に過失修正される可能性が高まります。

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弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治
監修 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
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