センターラインオーバーの交通事故|過失割合や判例などを解説
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
この記事でわかること
センターラインを越えて走行車線に進入してきた車と運悪くぶつかってしまった場合、被害者にも過失はあるのでしょうか。 一般的に、もらい事故では被害者は無過失と考えられていますが、状況によっては被害者にも過失がつく可能性があるため注意が必要です。 本記事では、センターラインオーバーによる交通事故の過失割合について、詳しく解説していきます。
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センターラインオーバーによる事故の基本的な過失割合
センターラインオーバーによる交通事故の基本過失割合は、加害者対被害者=10対0です。 道路交通法18条1項では、車両は左側に寄って走行しなければならないと定められています。そのため、本規定に違反してセンターラインをオーバーした車両は、基本的に100%悪いと考えられます。
センターラインオーバー事故の過失割合が変動する修正要素
センターラインオーバー事故は、基本的に加害者に100%の過失があるとされていますが、状況によっては過失割合が変動する場合もあります。 例えば、「左側走行が不可能な場合」や「悪天候・夜間・見通しの悪さ」などの事情により、やむを得ずセンターラインを越えてしまった場合です。 加害者側にこのような事情が認められる場合には、過失割合が減算される可能性があります。 一方で、被害者側に「注意義務違反」や「スピード超過」などの過失が認められる場合は、被害者の過失割合が加算される可能性があるため、注意が必要です。
左側走行が不可能な場合
物理的に左側走行が不可能な場合、過失割合が変動する可能性があります。 例えば、被害者が前方を注視していれば衝突を回避できるなどの事情があれば、被害者側にも「注意義務違反」が認められ、加害者側の過失割合が減少します。
例:工事車両が停車していた、道幅が狭い
ケースバイケースですが、加害者側の過失は10~30%程度減少する可能性があるでしょう。
悪天候・夜間・見通しの悪さ
雨天・夜間・見通しの悪いカーブなどでは、被害者側にも、対向車がセンターラインオーバーしてくることを予測して回避行動(減速する等)を行う義務が生じます。 被害者側が、「見通しの悪いカーブで徐行しなかった」など注意義務を怠った場合は、被害者側の過失が5~20%程度、加算される可能性があるでしょう。 基本的な責任は、センターラインを越えた加害者側にありますが、被害者側に注意義務違反が認められれば、一定の過失がつくため注意が必要です。
被害者側にも過失があった場合
被害者側にも以下のような過失が認められる場合は、加算要素となり、過失割合が増える可能性があります。
- 前方への注意を怠った
- スマートフォンやカーナビなどを見ながら運転をしていた
- 法定速度を超えて走行していた
- 酒気帯び運転や居眠り運転をしていた
- 夜間に対向車や前走車がいるのにハイビームをしていた
- 見通しの悪いカーブで徐行しなかった など
このような過失が認められると、被害者側の過失割合が10~20%程度増える可能性があるため、注意が必要です。 センターラインを越えた加害者側の過失割合が、「どのような事故状況でも必ず100%になる」というわけではないことを理解しておきましょう。
センターラインオーバーの交通事故で被害者にも過失が認められた判例
センターラインオーバーの交通事故で、被害者にも過失が認められた判例を4つご紹介します。
センターラインオーバーで走行した車と二輪車が衝突した事故
【平成26年(ネ)624号、平成26年(ネ)820号 名古屋高等裁判所 平成26年11月28日判決】
<事案の概要>
控訴人(加害者)の運転する普通自動車が、前方の車両を追い越すため、渋滞車両の後方からセンターラインオーバーで走行したところ、被控訴人(被害者)の運転する普通自動二輪車と衝突した事案です。
<裁判所の判断>
控訴人にセンターラインオーバーの過失があることを前提に、裁判所は、本件事故現場は見通しが良く、控訴人は被控訴人との距離が約47.2mの地点で被控訴人の車を発見することができたのだから、控訴人も同様に気づくことができたと指摘しました。 そして、この時点で被控訴人が控訴人の車に気づいていれば、徐々に減速し、控訴人の車の手前で停止するか、控訴人の左側を極めて緩い速度で走行することが可能であったと考えました。 しかし、被控訴人は、27mから28mの距離になって初めて控訴人の車に気づき、かつ制限速度を超える時速約50kmで走行していました。 そこで、裁判所は、被控訴人には、前方不注視とスピード違反があるとして、本件事故の発生について責任があることを理由に、2割の過失を認めました。
センターラインオーバーした二輪車とカーブで転倒した車が衝突した事故
【平成23年(ワ)3122号、平成23年(ワ)4289号 京都地方裁判所 平成24年9月5日判決】
<事案の概要>
見通しの悪いカーブで、ブレーキをかけて転倒した原告(被害者)の普通乗用車と、センターラインをオーバーした所でほぼ停止していた被告(加害者)の自動二輪車が衝突した事案です。
<裁判所の判断>
裁判所は、脇見運転をし、かつ転倒して迫ってくる原告の車を認め左側に回避運動をとったにもかかわらず、なおセンターラインを越えて走行していた被告に、事故の主たる原因があるとしました。 一方で、見通しがやや悪いカーブにおいて、対向車との安全確認が十分できていないのに、不十分な減速で道路中央部付近を走行した原告にも若干の過失があるとして、原告(被害者)にも2割の過失を認めました。
交差点でセンターラインオーバーした原付とタクシーが衝突した事故
【平成23年(ワ)14255号 東京地方裁判所 平成24年5月25日判決】
<事案の概要>
見通しの良い交差点で、個人タクシーを運転する原告が青信号で交差点に進入したところ、目の前にセンターラインをオーバーして迫ってくる被告原動機付自転車の存在に突如気づき、衝突した事案です。
<裁判所の判断>
被告にはセンターラインをオーバーした過失があり、この過失によって本件事故は起こりました。 しかし、裁判所は、以下の理由から原告には前方不注意の過失があると判断しました。
- 原告が見通しの良い道路を走行していたにもかかわらず、すぐ目の前に接近するまで被告車の存在に気づかなかったこと
- 2車線ないし3車線の道路のセンターラインのすぐ近くで衝突したのだから、被告車と衝突する具体的危険を認識できる時間的余裕があったこと
- 事故当時には道路が空いており、左方に進路変更する等して衝突を回避することも可能であったこと
電柱回避でセンターラインをはみ出した大型貨物車と二輪車が衝突した事故
【平成28年(ワ)4049号、平成28年(ワ)6809号 大阪地方裁判所 平成29年6月30日判決】
<事案の概要>
路側帯上にある電柱を避けるため、センターラインを40cmほどはみ出した状態で走行していた被告車(大型貨物自動車)に驚いた原告車(自動二輪車)が、急ブレーキを踏んで転倒し、被告車と衝突した事案です。
<裁判所の判断>
裁判所は、センターラインをオーバーした過失により、被告に事故を発生させた責任があると判断しました。一方で、原告に対しても、センターライン寄りを走行し、前方不注視あるいは速度調節を怠った過失があるとして、事故を発生させた責任があるとしました。 さらに、被告のセンターラインオーバーが僅かだったことや、原告も前方を十分注視していれば回避が十分可能であったことからすると、どちらの過失が大きいとはいえないと判断しました。 最終的には、被告車が大型貨物自動車であることを考慮し、原告4.5割、被告5.5割の過失割合が妥当であると判断しました。
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