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交通事故で握力低下した場合の後遺障害認定のポイントや慰謝料相場

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

交通事故による怪我が原因で握力が低下した場合は、「事故による後遺障害」として認定される可能性があります。後遺障害として認定されると、認定となった後遺障害等級に応じて“後遺障害慰謝料”や“後遺障害逸失利益”などの賠償金が後遺障害部分の損害に対する補償として支払われます。 そこで本記事では、「交通事故による握力低下」に着目し、握力低下となる原因や握力低下で認定される可能性のある後遺障害等級などについて、詳しく解説していきます。

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交通事故による握力低下の原因とは?

交通事故による握力低下の多くは、次に挙げる怪我が原因であると考えられています。

  • ① むちうち
  • ② 頚椎椎間板ヘルニア
  • ③ 胸郭出口症候群
  • ④ 橈骨遠位端骨折

また、どの怪我を負ったのかによって必要とされる治療や検査はもちろんのこと、認定される可能性のある後遺障害等級も異なってきます。 では次項にて、どのように異なるのか、怪我別に詳しく解説していきます。

むちうち

傷病名が頚椎捻挫や外傷性頚部症候群等と診断される症状の総称をむちうちといい、交通事故の衝撃により首が鞭のようにしなる様子を由来とします。 むちうちは症状によっていくつかに類型化されており、そのうちの神経根症状型に分類される場合には、神経根が牽引されたり圧迫されたりして、手指の痺れや握力低下をもたらすことがあります。 むちうちの詳細については下記リンクページもご参照ください。

頚椎椎間板ヘルニア

背骨の骨と骨との間にある、クッションのような役割を果たしている軟骨を椎間板といいます。通常、椎間板は髄核というゼリー状の部分を繊維輪に覆われていますが、交通事故の大きな衝撃により、繊維輪に生じた亀裂から髄核の一部が飛び出してしまうことがあります。 飛び出した髄核が頚部の神経を圧迫している状態を、頚椎椎間板ヘルニアといいます。むちうちの神経根症状型にも分類されます。 頚椎椎間板ヘルニアは加齢によって現れる症状でもあるため、後遺障害等級を獲得できたとしても、既往症を疑われる場合には損害賠償金が素因減額される可能性もあります。交通事故との因果関係を証明するためには、画像検査の結果にて新鮮なヘルニアであることを示さなければならないため、より早い段階でMRI検査を受けなければなりません。

胸郭出口症候群 (きょうかくでぐちしょうこうぐん)

前斜角筋と中斜角筋の間や鎖骨と第一肋骨の間等の胸郭出口と呼ばれる狭い部分で、骨や筋肉により、腕神経叢(わんしんけいそう)という神経や鎖骨下動脈という血管が圧迫されている状態を、胸郭出口症候群といいます。 交通事故による胸郭出口症候群は、「首の前面についている斜角筋が事故による衝撃で傷つけられたこと」が原因だと考えられています。しかし、なで肩やスマホ首などの“日常生活で影響を受けた身体”に事故の衝撃が加わったことで胸郭出口症候群が発症する可能性があるため、事故によるものだと判断するのが難しいとされています。 なお、胸郭出口症候群が疑われる場合には、神経の再生過程をチェックするモーレイテスト、アドソンテスト、ライトテスト、エデンテスト、ルーステストといった誘発テストの結果が後遺障害等級認定において有力な証拠となり得ます。

橈骨遠位端骨折 (とうこつえんいたんこっせつ)

交通事故で地面に手をつく等して、手首から肘の間にある長い2本の骨のうち、親指側にある橈骨と呼ばれる骨の手首に近い部分を骨折した状態を、橈骨遠位端骨折といいます。 上記までと同じように痺れ等の神経症状や、手指の可動域制限、変形障害、正中神経の麻痺等による握力低下をもたらすことが考えられます。

握力低下で認定される可能性のある後遺障害等級

握力低下で認定される可能性のある後遺障害等級は、主に神経症状によるものである「12級13号」と「14級9号」が挙げられます。 しかし、橈骨遠位端骨折では神経症状の他に残存している症状に応じて、以下の後遺障害等級も認められる可能性があります。

【手指の可動域制限が認められる場合】
・10級10号
・12級6号

【変形障害が認められる場合】
・7級9号
・8級8号

【正中神経の麻痺が認められる場合】
・8級6号
・10級10号
・12級6号

なお、神経症状とは、交通事故の衝撃で神経や血管が圧迫・損傷することで引き起こされる痺れや痛みのことをいいます。めまいや頭痛なども同様に、事故による怪我の神経症状によって引き起こされます。

交通事故による握力低下の後遺障害慰謝料の相場

交通事故による握力低下で後遺障害等級認定を受けた場合には、“後遺障害慰謝料”を新たに請求することができます。握力低下で認定される可能性のある後遺障害等級は、12級13号と14級9号となるため、後遺障害慰謝料の相場は下表のとおりとなります。

後遺障害慰謝料の相場
等級 自賠責基準 弁護士基準
12級13号 94万円※1 290万円
14級9号 32万円 110万円

※1:令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準の93万円が適用されます。

なお、交通事故における慰謝料には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの算定基準があります。そのため、交通事故による握力低下で請求できる後遺障害慰謝料の相場は、認定される後遺障害等級だけでなく、用いられる算定基準によっても金額が大きく異なるため、注意が必要です。

自賠責基準・弁護士基準とは?
自賠責基準とは、自動車損害賠償保障法に基づく、基本的な対人賠償の確保を目的とした基準です。一方の弁護士基準は、過去の裁判例を基につくられた基準であり、3つの基準の中でもっとも高い基準となっています。

握力低下の慰謝料の計算例

ではここで、3つの基準にどれくらいの金額差があるのか、実際に計算してみていきましょう。 なお、任意保険基準は保険会社によって内容が異なり非公開であるため、割愛いたします。

【計算例】入院なし・通院期間300日・実通院日数280日・後遺障害等級14級9号(むちうち)の場合

<自賠責基準>

●入通院慰謝料
通院期間300日 × 日額4300円※2= 129万円
限度額が120万円であるため = 120万円
※2:令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準の日額4200円が適用されます。

●後遺障害慰謝料
32万円

<弁護士基準>

●入通院慰謝料
113万円(「赤い本」入通院慰謝料・別表Ⅱ  むちうち等他覚所見のない比較的軽傷の場合を参照)

●後遺障害慰謝料
110万円

比較してみると、自賠責基準よりも弁護士基準の方が入通院慰謝料と後遺障害慰謝料ともに高額となることが分かります。そのため、弁護士基準を用いて慰謝料を請求することが重要となります。

交通事故による握力低下で後遺障害認定を受けるポイント

握力低下で後遺障害等級認定を受けるためには、次のポイントを押さえることが大切です。

● 12級13号
「MRI等の画像検査で神経や血管の損傷を明らかにすること」、「握力低下等の自覚症状との因果関係を医学的に証明できること」が要件となります。画像検査は、交通事故と残存する症状との因果関係を立証するにあたって事故後早い段階で受けるほど結果に信憑性が生まれます。

● 14級9号
画像検査の結果からは原因を特定できなくとも、「神経学的検査等の結果から握力低下等の自覚症状との因果関係を医学的に説明できること」が要件となります。画像検査以外にも必要とされる検査を受ける必要があり通院頻度や日頃から医師に申告している自覚症状の内容も重要となります。

事故後、握力低下が疑われる場合には、直ちに病院を受診して必要な検査を受けることが大切です。些細な自覚症状についても、きちんと医師へ伝えるようにしましょう。 後遺障害等級認定について、さらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。

握力低下の後遺障害認定が認められ、約700万の賠償額を獲得できた解決事例

ご依頼者様は、信号機のない交差点を車で直進していたところ、相手方車両に衝突され、頚椎捻挫、腰椎捻挫、肋骨骨折等の怪我を負いました。その後、治療後に残ってしまった後遺症について後遺障害等級認定の申請を行いましたが、頚部痛と腰部痛に対する14級9号の認定を受けることしかできず、右手の握力低下について認定を受けることができませんでした。 そこで弁護士にて主治医と話し合い、握力低下の原因が右中指伸筋腱亜脱臼(通称ボクサーズナックル)と呼ばれる傷病であることが発覚したため、全ての診断書に「右中指伸筋腱亜脱臼」を追記してもらいました。また、実際に右手の指を曲げて拳を作る際に、指を伸ばす腱が横にずれて弾発音とともに痛みが生じる様子を撮影したうえで、異議申立ての手続きを行った結果、右手の握力低下について12級13号の認定を受けることができました。そして、賠償交渉の末、最終的に約700万円にて示談することができました。

交通事故で握力低下などの後遺障害が残ってしまったら弁護士法人ALGにご相談ください。

握力低下の原因が画像検査等で確認できる場合は、後遺障害等級認定を受けられる可能性が高まります。 しかし、握力低下の原因が判然としない場合には、画像検査等で客観的な証拠が見られないことが多く、握力低下と交通事故の因果関係を立証することが難しいため、後遺障害等級認定を受けられない可能性があります。そのため、必要な治療や検査を受けて後遺障害等級認定に必要な資料を前もって的確に収集することが大切です。 交通事故分野だけでなく、医学分野も得意とする弁護士であれば、後遺障害等級認定に向けた準備を適切に行うことが可能です。適切な後遺障害等級認定を受けるためにも、交通事故による握力低下などの後遺障害が残ってしまいお困りの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

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