交通事故による高次脳機能障害とは?症状や後遺障害等級認定のポイント
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
交通事故で脳に損傷を受けると、後遺症として高次脳機能障害が残ることがあります。 高次脳機能障害は外見からは分かりにくいですが、記憶力の低下や集中力が続かないといった症状がみられ、仕事や日常生活に支障をきたすことが少なくありません。 症状が周囲に伝わりにくいことから、理解を得られなかったり、適切な後遺障害等級が認定されなかったりするケースもあります。 この記事では、交通事故による高次脳機能障害について、主な症状や後遺障害等級認定のポイントを分かりやすく解説します。
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高次脳機能障害とは
交通事故による高次脳機能障害とは、事故で脳が損傷したことにより、記憶・注意・判断・言語などを担う脳の働きに障害が生じた状態をいいます。外見上は目立ちにくく、本人も症状を自覚できないことが少なくありません。 しかし、仕事や日常生活に深刻な支障が出ることもあるため、適切な後遺障害等級認定を受けることが重要です。 事故後に「いつもと違う」と感じることがあれば、早めに医療機関を受診し、必要な精密検査やリハビリを受けましょう。 後遺障害等級認定や損害賠償の手続きに不安がある場合は、弁護士に相談すると安心です。
交通事故で高次脳機能障害が残るケース
交通事故で高次脳機能障害が残るのは、事故によって脳に損傷を負ったケースです。 事故で頭を強く打つなどして“頭部外傷”や“脳内出血”などを負った場合、後遺症として高次脳機能障害が残ることがあります。 脳に損傷をきたす主な傷病は、次のとおりです。これらの傷病名を診断された場合、「後遺症として高次脳機能障害が残る可能性がある」と認識しておきましょう。
| 脳挫傷 | 頭部に強い力が加わったことで、脳そのものに傷がついた状態をいいます。傷ついた部分から腫れや出血が発生し、場合によっては手術が必要になることもあります。 |
| 頭がい骨骨折 | 脳を囲む“頭がい骨”という骨が折れることです。頭がい骨が折れたからといって、必ずしも脳損傷が起きるわけではありませんが、陥没骨折していたり、骨折によって脳を覆っている髄膜が破れたりなどすると、脳損傷が起こる可能性があります。 |
| 脳出血 | 文字どおり、脳の血管が破れて出血している状態を指します。出血によって脳内の神経細胞を圧迫することで、様々な症状が現れ、出血した部位によって症状が異なることもあります。 主な原因は高血圧だといわれていますが、事故などによる外傷で脳出血が起こるケースもあります。 |
| びまん性軸索損傷 | 頭部に回転性の外力が加わったことで、脳内の神経細胞から伸びている“軸索”という部分が、断裂や伸展をして損傷を受けることをいいます。 頭部外傷後、意識を失っているにもかかわらず、CT等では明らかな異常が見つからないのが、この疾患の特徴です。 |
| 外傷性くも膜下出血 | 脳を包んでいる“くも膜”という薄い膜の内側で出血が広がっている状態を、くも膜下出血といいます。そのうち、頭部を強く打ちつけたなど、怪我が原因となるものが、外傷性くも膜下出血と呼ばれています。 |
高次脳機能障害の症状
交通事故による高次脳機能障害の症状は、「新しいことが覚えられない」「集中力が続かない」「感情のコントロールが難しい」などさまざまです。 外見上は普通に日常生活を送れているように見える場合もあることから、「見えない障害」とも呼ばれています。 具体的な障害や症状は、次の表のとおりです。
| 障害名 | 症状の一例 |
|---|---|
| 記憶障害 |
|
| 注意障害 |
|
| 遂行機能障害 |
|
| 社会的行動障害 |
|
| 失語障害 |
|
| 失行障害 |
|
| 失認障害 |
|
高次脳機能障害が残った場合の後遺障害等級認定
医師から症状固定と診断され、高次脳機能障害が残っている場合は、後遺障害等級認定を申請します。 後遺障害等級認定とは、交通事故による後遺症が「後遺障害」に該当するかどうか、また国が定めた1~14級どの等級に当てはまるかを審査・決定する手続きです。 後遺障害等級が認定されると、「後遺障害慰謝料」や「後遺障害逸失利益」を請求できます。
-
後遺障害慰謝料
事故で後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する補償 -
後遺障害逸失利益
事故の後遺障害の影響で減ってしまった将来の収入に対する補償
治療費・通院費用・入通院慰謝料などは後遺障害等級が認定されなくても請求できますが、上記の2つは等級認定されないと請求できないため注意が必要です。 後遺障害等級認定の申請方法を知りたい方は、以下のページをご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
高次脳機能障害の認定基準と慰謝料相場
高次脳機能障害で認定される可能性のある後遺障害等級は、【1級・2級・3級・5級・7級・9級・12級・14級】です。 それぞれの認定基準や後遺障害慰謝料の相場(自賠責基準・弁護士基準)を表にまとめましたので、ご覧ください。 なお、介護が必要となる重度の後遺障害は「別表1」、それ以外の後遺障害は「別表2」に区分されています。
| 後遺障害等級 | 認定基準 | 自賠責基準 | 弁護士基準 | |
|---|---|---|---|---|
| 別表1 | 第1級1号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 1650万円 | 2800万円 |
| 第2級1号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 1203万円 | 2370万円 | |
| 別表2 | 第3級3号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | 861万円 | 1990万円 |
| 第5級2号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 618万円 | 1400万円 | |
| 第7級4号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 419万円 | 1000万円 | |
| 第9級10号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 249万円 | 690万円 | |
| 第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 94万円 | 290万円 | |
| 第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 32万円 | 110万円 | |
後遺障害等級認定において判断が難しいケース
交通事故で高次脳機能障害が残っても、症状と事故との因果関係が明確でない場合は、後遺障害等級認定の判断が難しくなります。 特に次のようなケースでは、因果関係の判断が慎重に行われます。
-
脳梗塞などの既往症があるケース
もともとの病気(既往症)による影響なのか、事故によって生じた症状なのかが分かりにくく、医学的な判断が必要になります。 -
事故後しばらく経過してから症状が現れたケース
発症のタイミングが遅いと、事故との関連性を医学的に証明することが困難な場合があります。
事故後はすぐに病院を受診し、後遺障害等級認定されるためのポイントを意識しながら継続的に治療を受けることが重要です。
高次脳機能障害で後遺障害等級認定されるための6つのポイント
医師に高次脳機能障害と診断されたからといって、必ずしも後遺障害等級が認定されるわけではありません。 適切な等級認定を受けるためには、次の6つのポイントを押さえておくことが重要です。
①高次脳機能障害特有の症状があること
後遺障害等級認定では、高次脳機能障害特有の症状があることが重要なポイントです。
〈高次脳機能障害でみられやすい症状〉
- 通院日を忘れる(記憶障害)
- 集中力が続かず、ミスが増える(注意障害)
- 家事を順序立てて進められない(遂行機能障害)
- 感情のコントロールができない(社会的行動障害)
これらの症状が認められると、後遺障害等級が認定される可能性が高まります。ただし、症状の程度によって認定される等級や後遺障害慰謝料の金額は異なります。
②診断書に頭部外傷や意識障害の記載があること
高次脳機能障害の後遺障害等級認定では、初診時の診断書に「交通事故による頭部外傷」の記載があることが重要です。また、カルテに「事故後の意識障害の経過」が記録されているかも確認しましょう。 高次脳機能障害は脳の損傷が原因で起こるため、こうした医療記録は「症状が事故によって生じた」という因果関係を判断するうえで欠かせない資料になります。 特に、事故後に意識障害が6時間以上続いた場合や、軽度の意識障害が1週間以上続いた場合は、後遺障害等級が認定される可能性が高まるとされています。
③CTやMRI画像で脳損傷が確認できること
後遺障害等級認定では、CTやMRI画像で脳の損傷が確認できることもポイントです。 画像に脳出血・脳萎縮・脳室拡大などの所見があれば、高次脳機能障害との関連性を説明しやすくなります。 ただし、脳萎縮などは事故後すぐには現れず、3ヶ月ほどかけて進行するとされています。初診時のCT検査では異常が見えないことも多いため、事故直後だけでなく、時間の経過に合わせて適切な時期に、複数回の画像検査を受けることが大切です。
④後遺障害診断書は詳細に記載してもらう
後遺障害診断書には、高次脳機能障害の実態がわかるよう、症状・検査結果・仕事や生活への影響などを詳細に記載してもらうことが大切です。 単に「高次脳機能障害あり」と記載されるだけでは、十分な評価につながりません。
<後遺障害診断書の記載ポイント>
- 受傷直後の意識障害
- 初診時の所見(意識レベルや瞳孔異常など)
- 治療過程における症状の推移
- 治療内容
- 経時的な画像検査や神経心理学的検査の結果
- 症状固定時に残った症状
- 自覚症状
- 仕事や日常生活への影響
これらの内容がしっかり記載されていると、後遺障害等級認定で適切に評価されやすくなります。 後遺障害診断書の書き方や自覚症状の伝え方については、以下のページで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
⑤症状に合わせた検査を受ける
高次脳機能障害が疑われる場合、現れている症状に合わせて適切な検査を受けることが大切です。 記憶障害や注意障害など、症状によって必要な検査は異なります。 脳神経外科や神経内科では、CTやMRIなどの“画像検査”に加え、知能検査や記憶力検査といった“神経心理学的検査”が行われることもあります。 また、治療では不要と判断される検査でも、後遺障害等級認定や損害賠償請求のために必要なものもあるため、弁護士や主治医と相談しながら適切な検査を受けましょう。
⑥日常生活状況報告書を作成する
高次脳機能障害の後遺障害等級認定では、ご家族や周囲の方が作成する「日常生活状況報告書」が重要なポイントとなります。 高次脳機能障害は「目に見えない障害」ともいわれ、医師の診断書だけでは症状や生活への影響が十分に伝わらないことがあります。また、被害者本人が症状を自覚していないことも少なくありません。 周りから見た日常の困りごとや行動の変化を「日常生活状況報告書」に記載してもらうことで、後遺症の実態や生活への影響が伝わり、適切な評価につながる可能性があります。
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交通事故による高次脳機能障害を弁護士に相談するメリット
交通事故による高次脳機能障害を弁護士に相談すると、適正な後遺障害等級認定を目指しやすくなるなどのメリットがあります。
<弁護士ができること>
- 適正な後遺障害等級認定のために受けるべき検査などのアドバイスができる
- 後遺障害診断書をチェックできる
- 必要資料を揃え、被害者請求を代理できる
- 等級認定の結果に納得できない場合、異議申立てを行える
- 慰謝料などを「弁護士基準」で請求するため、増額が期待できる
高次脳機能障害は症状が正しく評価されず、適正な認定を受けられないことも少なくありません。 しかし、後遺障害等級認定の結果によって賠償額が大きく変わるため、早めに弁護士へ相談することが大切です。
高次脳機能障害に関する弁護士法人ALGの解決事例
優先道路とヘルメット着用が争われたが依頼者に有利に解決した事例
<事案の概要>
ご依頼者は、原動機付自転車を運転中に自動車と衝突・転倒した際に脳挫傷などの傷害を負い、高次脳機能障害の後遺症が残りました。治療後に後遺障害等級認定を申請した結果、第7級4号が認定されました。 これを踏まえ、相手方保険会社に後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求しましたが、話し合いによる解決が難しかったため、裁判を起こして適正な賠償を求めました。
<担当弁護士の活動および解決結果>
ご依頼者は、高次脳機能障害を負いながらも復職していたため、裁判では「後遺障害が仕事に与える影響」が大きな争点となりました。 また、事故現場が優先道路であったかどうかやヘルメットの着用状況についても争われました。 担当弁護士は、医療記録や医学文献をもとに高次脳機能障害の残存を立証しました。あわせて、事故状況に関する資料を精査し、相手方が優先道路であることを認識していたと主張しました。 その結果、後遺障害等級第7級4号を前提としつつ、慰謝料や逸失利益は8級相当として評価する和解が成立しました。 過失割合についても当方の主張がおおむね認められ、想定していた水準の賠償金を獲得することができました。
適正な後遺障害等級と約1400万円の損害賠償を獲得することができた事例
<事案の概要>
ご依頼者は車に同乗中、赤信号を無視した相手方車両に衝突され、外傷性くも膜下出血などの重傷を負いました。 救急搬送時には意識障害が認められ、その後はリハビリを経て、物忘れなどの高次脳機能障害の後遺症が残りました。
<担当弁護士の活動および解決結果>
後遺障害等級認定の申請にあたり、担当弁護士はご家族から日常生活での物忘れや認知機能の変化などを丁寧に聞き取り、残存している高次脳機能障害の症状を適切に「後遺障害診断書」へ反映できるよう努めました。その結果、後遺障害等級第9級10号が認定されました。 示談交渉では、ご依頼者がご高齢の主婦であることから、休業損害や逸失利益について厳しい主張がなされました。 しかし、弁護士が十分な準備と粘り強い交渉を重ねた結果、当方の請求額に近い約1400万円の賠償金を獲得することができました。
交通事故で高次脳機能障害が疑われる場合は、まず一度弁護士にご相談ください!
高次脳機能障害は目に見えにくいため、症状や日常生活への影響を証明するのが難しい障害です。実際に、後遺障害等級などをめぐって争われるケースも少なくありません。適正な賠償を受けるためには、高度な医学的知識などが求められるでしょう。 弁護士法人ALGには、医療問題と交通事故問題の双方に精通している弁護士が多数在籍しています。 そのため、高次脳機能障害などの重い後遺症が問題となるケースについても、安心してお任せいただけます。 交通事故の被害に遭い、高次脳機能障害などの後遺症でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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