交通事故で自賠責保険の慰謝料はいくら?計算方法や注意点など
監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
この記事でわかること
自賠責保険は、すべての自動車に加入が義務付けられている保険です。しかし、その補償内容や慰謝料はいくらもらえるかなど、詳しく理解している方は少ないのではないでしょうか。 交通事故の被害に遭った場合、自賠責保険から慰謝料や治療費などが支払われますが、支払限度額があるため、十分な補償を受けられないケースも少なくありません。 この記事では、自賠責保険の慰謝料の相場や請求手続き、慰謝料に関する注意点などについて、詳しく解説します。
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目次
【動画で解説】交通事故で自賠責保険からは慰謝料はいくらもらえる?
自賠責保険とは?
自賠責保険は、交通事故の被害者への基本的な対人賠償の確保を目的とする「強制保険」で、すべての自動車や原付、バイクの所有者に加入が義務付けられています。 未加入の場合、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金のほか、免許停止処分となる可能性があります。 自賠責保険では、治療費や慰謝料などの「人身損害」は補償されますが、車などの「物損」は補償されません。
自賠責保険と任意保険の違い
自賠責保険と任意保険には、加入義務・補償範囲・過失による減額の点で大きな違いがあります。
【加入義務の違い】
- 自賠責保険:強制保険であり、すべての自動車・バイクの所有者に加入が義務付けられています。
- 任意保険:加入は自由で、必要に応じて選択します。
【補償範囲の違い】
- 自賠責保険:人身事故のみを補償し、治療費や慰謝料などに上限があります。物損や車の修理費は対象外です。
- 任意保険:人身事故に加え、物損や車両損害、対物賠償など幅広くカバーします。
【過失による減額の違い】
- 自賠責保険:被害者に重い過失(7割以上)がない限り、減額されません。
- 任意保険:過失割合に応じて補償額が減額されます。
自賠責保険の慰謝料相場はいくら?
交通事故で支払われる慰謝料は、「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」の3種類に分かれます。それぞれの概要は下表をご参考ください。
| 入通院慰謝料 | 怪我の治療のために、入院や通院せざるを得なくなった精神的苦痛に対する補償 |
|---|---|
| 後遺障害慰謝料 | 治療を続けても症状がなくならず、後遺障害が残った精神的苦痛に対する補償 |
| 死亡慰謝料 | 死亡によって受けた精神的苦痛に対する補償 |
それぞれの慰謝料に対する、自賠責基準の相場は以下のとおりです。
| 入通院慰謝料 | 治療や通院の日数に応じて、1日あたり4300円を基準に計算されます。 |
|---|---|
| 後遺障害慰謝料 | 後遺障害等級により大きく異なり、32万~1650万円の範囲で支払われます。 |
| 死亡慰謝料 | 被害者が亡くなった場合に一律400万円が支給されます。 |
上記の金額はあくまで自賠責保険の基準であり、任意保険基準や弁護士基準と比べると低額になるケースが多いです。 交通事故の慰謝料については、以下のページで詳しく解説しています。
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入通院慰謝料
自賠責保険の入通院慰謝料は、1日あたり4300円に、治療にかかった日数をかけて計算します。なお、2020年3月31日以前に起こった事故の場合は、1日あたり4200円です。
4300円×治療日数=入通院慰謝料
治療日数は、以下の①と②を比較して、少ない方の日数となります。
① 全治療期間(初診~症状固定まで)
② (実入院日数+実通院日数)×2
【計算例】
・ 全治療期間:6ヶ月(180日)
※1ヶ月は30日として計算
・ 実際に通院した日数:80日
➡180日>160日(80日×2)のため、治療日数は160日を採用
よって、入通院慰謝料は4300円×160日=68万8000円となります。 2020年3月31日以前に起こった事故の場合の入通院慰謝料は4200円×160日=67万2000円です。
通院期間の7日加算とは
自賠責保険の入通院慰謝料は、通院日数や治療期間に基づいて計算されます。ただし、診断書に次のような記載がある場合は、通院期間に7日を加算して計算します。
- 治癒見込
- 中止
- 継続
- 転医
7日加算により慰謝料の対象日数が増えるため、慰謝料が増額する可能性があります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残った精神的・身体的苦痛に対する補償です。慰謝料の金額は、以下の表のとおり、後遺障害等級に応じて決まります。 後遺障害等級とは、事故後に治療しても残った症状について、自賠責保険が認めた「後遺障害」の重さです。1級から14級まで存在し、等級が上がるほど、後遺障害慰謝料も高額になります。
| 後遺障害等級 | 自賠責基準での後遺障害慰謝料※ | |
|---|---|---|
| 別表第1 | 第1級 | 1650万円 |
| 第2級 | 1203万円 | |
| 別表第2 | 第1級 | 1150万円 |
| 第2級 | 998万円 | |
| 第3級 | 861万円 | |
| 第4級 | 737万円 | |
| 第5級 | 618万円 | |
| 第6級 | 512万円 | |
| 第7級 | 419万円 | |
| 第8級 | 331万円 | |
| 第9級 | 249万円 | |
| 第10級 | 190万円 | |
| 第11級 | 136万円 | |
| 第12級 | 94万円 | |
| 第13級 | 57万円 | |
| 第14級 | 32万円 | |
※新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。
交通事故で後遺症が残ってしまった場合の慰謝料については、以下のページで詳しく解説しています。
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死亡慰謝料
自賠責保険の死亡慰謝料は、被害者本人への慰謝料と近親者固有の慰謝料を合計した金額で構成されます。本人分は一律400万円で、さらに近親者分が加算されます。近親者固有の慰謝料は請求権者の人数によって異なり、被害者に扶養されていた家族がいる場合は200万円が加算されます。 請求権者になれるのは、基本的に民法第711条に定める範囲の近親者、つまり父母・配偶者・子です。ただし、事案によっては兄弟姉妹にも認められることがあります。
【例:被害者に配偶者と未成年の子が2人いた場合】
・ 本人分の慰謝料400万円
・ 近親者固有の慰謝料750万円
・ 扶養家族分の加算200万円
合計:1350万円
| 請求権者 | 近親者固有の死亡慰謝料 | 被扶養者がいる場合 |
|---|---|---|
| 1人 | 550万円 | 750万円 |
| 2人 | 650万円 | 850万円 |
| 3人以上 | 750万円 | 950万円 |
死亡事故の慰謝料については、以下のページでも詳しく解説しています。
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自賠責保険に慰謝料を請求する方法
交通事故で自賠責保険から慰謝料を受け取るには、正しい請求手続きが必要です。請求方法には「加害者請求」と「被害者請求」の2種類があります。ここからは、それぞれ手続きや必要書類を詳しく解説します。
加害者請求
加害者請求は、加害者または加害者側の任意保険会社が、まず被害者へ損害賠償金を支払い、その後、自賠責保険に保険金を請求する方法です。 加害者が任意保険に加入している場合、保険会社は、自社負担分と自賠責保険分をまとめて被害者に支払い、後に立て替えた分を自賠責保険へ請求します。 加害者側が手続きを行うため、被害者は手間がかからず負担が軽減されます。ただし、加害者側が必要書類を集めるため、被害者に有利な証拠が十分に提出されない可能性があり、適切な保険金を受け取れないリスクがあります。また、保険会社が加害者請求を行う際は、示談が成立しているケースが多い点も特徴です。
被害者請求
被害者請求は、加害者側の任意保険会社を介さず、被害者が直接自賠責保険へ治療費や慰謝料などの保険金を請求する方法です。必要書類を提出すると、示談成立前でも損害額などの調査や計算が行われ、請求から約1ヶ月で、支払限度額の範囲内で保険金が支払われます。不足分は加害者側の任意保険に請求します。 示談を待たずに保険金を受け取れる点がメリットですが、書類の準備や手続きは被害者自身で行うため、負担が大きくなります。 加害者が任意保険に加入していない場合や、被害者の過失割合が大きく任意保険が治療費の支払いを拒むケースでは、被害者請求を検討すべきでしょう。 被害者請求については、以下のページでも詳しく解説しています。
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自賠責保険の慰謝料はいつもらえる?
慰謝料の支払い時期は請求方法によって異なります。加害者請求は、加害者側が立て替えた慰謝料を自賠責保険に請求する手続きであるため、慰謝料は相手方保険会社から支払われます。一般的には、示談成立後に支払われるため、時間がかかる傾向にあります。 一方、被害者請求や仮渡金制度を利用すれば、示談前でも慰謝料の受け取りが可能です。 治療費や生活費の負担を軽減するため、早めに資金を確保したい方には、被害者請求や仮渡金制度の活用がおすすめです。請求方法を正しく選べば、経済的負担を軽減できます。
| 請求方法 | もらえる時期 |
|---|---|
| 加害者請求 | 一般的に、相手方保険会社から示談成立時に支払われる。 |
| 被害者請求 | 示談成立前でも請求可能。自賠責保険に請求後1ヶ月ほどで支払われる。 |
| 仮渡金制度 | 示談成立前でも請求可能。自賠責保険に請求後1週間ほどで支払われる。 |
仮渡金制度について
治療費などの支払いに困っている場合、損害額が確定していなくても、自賠責保険から保険金の一部を前払いしてもらえる仕組みがあります。これを「仮渡金制度」といいます。 「仮渡金制度」には以下のような特徴があります。
- 仮渡金の金額は、傷害の場合は怪我の程度に応じて5万円、20万円、40万円、死亡の場合は290万円となっている
- 自賠責保険に、事故証明書、診断書などの必要書類を提出して申請すると、1週間ほどで仮渡金の受け取りが可能
- 仮渡金請求ができるのは一回だけ
- 最終的な示談金額が仮渡金より低くなったときは差額金を返す必要がある
自賠責保険と任意保険の両方から慰謝料をもらうことはできる?
自賠責保険と任意保険の両方から慰謝料の二重取りをすることはできません。ただし、自賠責保険には支払限度額があるため、治療費や慰謝料などの合計額がその上限を超える場合、不足分は任意保険でカバーしてもらえます。 例えば、通院が長引いたり、後遺障害が残るようなケースでは治療費や慰謝料が自賠責保険の上限額を超えることは少なくありません。その場合は、相手方保険会社へ不足分を請求することができます。
自賠責保険の慰謝料に関する注意点
自賠責保険には支払限度額がある
自賠責保険の補償には、法令で定められた支払限度額があります。被害者1名あたり、傷害による損害は120万円、後遺障害による損害は等級に応じて75万円~4000万円、死亡による損害は3000万円が上限です。損害額には治療費、慰謝料、休業損害などが含まれます。 しかし、重大事故や長期治療が必要な場合、損害額が限度額を超えるケースは少なくありません。その場合、不足分は加害者側の任意保険で補償されますが、加害者が任意保険に未加入の場合は、加害者本人に直接請求する必要があります。 自賠責保険はあくまで「基本的な対人賠償の確保」を目的とした制度であるため、より適正な賠償を受けるには任意保険へ弁護士基準で請求しなければなりません。
| 損害の種類 | 支払内容 | 限度額 |
|---|---|---|
| 傷害 | 治療費、入通院慰謝料、休業損害など | 120万円まで |
| 後遺障害 | 後遺障害慰謝料、逸失利益など | 75万円~4000万円 |
| 死亡 | 死亡慰謝料、逸失利益、葬儀費など | 3000万円まで |
限度額120万円の内訳
自賠責保険の傷害部分における補償上限は120万円です。補償内容には入通院慰謝料だけでなく、治療費、通院交通費、休業損害など、怪我に関連するすべての費用が含まれます。つまり、発生した損害の合計が120万円を超える場合、残りは加害者側任意保険や加害者へ直接請求する必要があります。
| 項目 | 補償内容 | 支払基準 |
|---|---|---|
| 入通院慰謝料 | 交通事故により怪我を負い、入通院を強いられた精神的苦痛への補償 | 1日につき4300円 |
| 治療費 | 診察料、入院料、投薬料、検査料、手術料などの費用 | 実費 |
| 通院交通費 | 通院や入院、転院するときにかかった交通費 | 実費 |
| 休業損害 | 交通事故による怪我が原因で仕事を休んだことにより生じた収入の減少分 | 原則1日につき6100円 |
| 付添費 | 通院や入院の際に付き添い看護した人に対する日当 | 入院1日につき4200円、自宅看護または通院1日につき2100円 |
| 義肢等の費用 | 義肢や義眼、補聴器、松葉づえなどの費用 | 実費 |
| 診断書等の費用 | 診断書、診療報酬明細書などの発行手数料 | 実費 |
| 文書料 | 交通事故証明書、被害者側の印鑑証明書、住民票などの発行手数料 | 実費 |
| 諸雑費 | 入院中の諸雑費 | 原則入院1日1100円 |
自賠責保険だけでは適切な慰謝料がもらえないケースもある
自賠責保険は基本的な対人賠償の確保を目的とした補償で限度額があります。そのため、怪我の程度や治療期間によっては、十分な慰謝料を受け取れないケースが少なくありません。不足分は任意保険で補償されますが、任意保険基準は自賠責基準と同程度か、やや高額になる程度でしょう。 慰謝料の算定には3つの基準があり、自賠責基準 ≦ 任意保険基準 < 弁護士基準の順で金額が高くなります。弁護士基準は裁判所の判断に基づくため、最も高額で、適正な補償を受けるためには弁護士のサポートを受けることが有効です。下表では、各基準の違いをまとめていますので、示談交渉を有利に進めるための参考にしてください。
| 自賠責基準 | 基本的な対人賠償の確保を目的とした最低限の基準 |
|---|---|
| 任意保険基準 | 「自賠責保険では補いきれなかった損害の賠償」を目的とする、保険会社によって異なる内部基準 |
| 弁護士基準 | 「被害者の正当な補償」を目的とする、過去の裁判例をもとに定められた基準 |
損害賠償請求の計算における3つの基準については、以下のページでも詳しく解説しています。
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最低額である自賠責保険基準の金額から、おおよそ倍増した460万円で示談が成立した事例
<事案の概要>
依頼者は、自転車で走行中に左手から走行してきた車にノーブレーキで衝突され、肋骨骨折・肩甲骨骨折などの怪我を負いました。相手方保険会社からは236万円の示談金が提示されたため、今後の対応について当事務所に依頼されました。
<担当弁護士の活動>
担当弁護士が提示額を確認したところ、後遺障害に関する損害が自賠責保険基準の金額で算出されており、休業損害や入通院慰謝料についても増額の余地があると判断しました。そのため、弁護士基準で算出しなおし、相手方保険会社と交渉しました。
<結果>
担当弁護士が、怪我の大きさや依頼者の意向も踏まえて交渉した結果、当初提示額からおおよそ倍増した460万円で示談が成立しました。
自賠責保険の慰謝料に関するよくある質問
自賠責保険の方が慰謝料を多くもらえることはありますか?
ケースによっては、自賠責保険の方が任意保険より慰謝料が高くなるときがあります。特に、被害者の過失割合が大きい場合がポイントです。任意保険では過失割合に応じて慰謝料が減額されますが、自賠責保険は過失が7割未満であれば減額されません。そのため、過失が5割や6割程度の事故では、任意保険基準より自賠責保険基準で計算した方が高額になる可能性があります。 例えば、被害者の過失割合が3割で、「傷害」に対する賠償金額が120万円とします。 この場合、通常であれば、3割分の36万円が過失相殺で減額されますが、自賠責保険では、被害者の過失が7割未満であることから減額は行われません。 ただし、被害者の過失が10割の場合には自賠責保険から保険金が支払われませんので、注意が必要です。 過失相殺については、以下のページで詳しく解説しています。
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加害車両が複数ある場合、自賠責保険の慰謝料はどうなりますか?
加害車両が複数ある場合、自賠責保険の支払限度額は車両の数に応じて増額されます。例えば、人身事故で加害車両が2台なら、限度額は120万円×2=240万円となり、被害者はより多くの補償を受けられます。ただし、同じ損害について二重取りはできず、合計額が限度額を超えるケースはありません。 各保険会社の負担割合は事故状況や過失割合に基づいて調整されます。複数車両が関与する事故では、請求手続きが複雑になるため、適切な慰謝料を確保するには弁護士への相談が重要です。
交通事故で適正な慰謝料を受け取るためにも、自賠責保険への請求は弁護士にお任せください
自賠責保険へ被害者請求を行うには、書類準備や手続きが複雑で大きな負担となります。また、任意保険会社に請求しても、自賠責保険の支払い基準に近い賠償額を提示される場合もあります。 自賠責保険への被害者請求をお考えの方や、保険会社からの提示額に不安がある方は、適切な賠償を受けるために、弁護士への依頼がおすすめです。 弁護士に依頼すれば、被害者請求の手続きや後遺障害等級認定申請のサポートを受けられます。さらに、示談交渉も弁護士が対応するため、弁護士基準による慰謝料増額の可能性が高まります。 交通事故の被害者請求や慰謝料について不安や疑問を抱かれている方は、まずは弁護士にご相談ください。
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※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。
交通事故に遭いお困りの方へ
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本人原則負担なし※保険会社の条件によっては
本人負担が生じることがあります。
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※死亡・後遺障害等級認定済みまたは認定が見込まれる場合
※事案によっては対応できないこともあります。
※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。























