交通事故による顎関節症|後遺障害等級や慰謝料の相場など

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
交通事故に遭った時から、食べ物を噛むと顎が痛い、口が開けにくい等と感じるようになってしまった方は、事故時の衝撃で「顎関節症」を発症しているおそれがあります。顎関節症の症状は、食事や会話等、日常生活に支障を来す症状であることから、しっかり治療を受けるためにも、適正な賠償額を受け取りたいところです。 ここでは、交通事故によって発症し得る顎関節症の症状と、該当し得る後遺障害について、そして、請求できる慰謝料についてお話します。
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目次
交通事故による顎関節症とは
顎関節症(がくかんせつしょう)とは、“「顎が痛い」「口を開けると痛い」「顎を動かすと音がする」などの症状がでること”をいいます。 このような、顎に生じる痛みや音などの症状が代表的な症状です。 これらの症状の名称は、以下のとおりです。
- 顎の痛み=顎関節痛・咀嚼筋痛
- 口が開かない=開口障害
- 顎を動かすと音がする=顎関節雑音
交通事故により顎を強く打つことで、顎関節に変形やずれが生じてしまい、顎関節症となることがあります。 顎関節症が疑われる症状が現れた場合には、早めに整形外科や口腔外科を受診して、適切な治療と必要な検査を受けましょう。
交通事故で顎関節症になる原因
交通事故で顎関節症となる原因には、2つの要因があると考えられています。
【一次的要因によるもの】
一次的要因によるものとは、“事故の衝撃”を指します。
事故の衝撃で顎が変形したり、ずれたりすることで顎関節症が発症することです。
【二次的要因によるもの】
二次的要因によるものとは、“むちうちなどの他の怪我”を指します。
顎に受けた衝撃ではなく、むちうちなどの他の怪我が原因で顎関節症が発症することです。この場合、むちうちの症状である頭痛やめまい、手足のしびれ等の症状を伴うことがあります。
顎関節症が疑われる場合は、事故後すぐに整形外科や口腔外科を受診して治療を受けることが大切です。「すぐ治るだろう」と考え、放置することはやめましょう。
顎関節症の治療法
顎関節症を疑う症状が発症した場合は、早めに「整形外科」または「口腔外科」を受診しましょう。 顎関節症と診断するためには、他の疾患による症状でないことが要件となります。そのため、骨やそれ以外のところに要因がないか、レントゲン・CT・MRI検査等の画像診断を受けたり、心因的な要素や生活習慣からくる症状ではないか、問診にて聞き取りやテストを行います。 また、開口障害の有無を確認するために、開口量を測定する検査も行われます。 顎関節症と診断された場合には、主に下記の治療を行います。
- スプリント療法:マウスピースを利用して、下顎を正常な位置に戻す方法
- マニュピレーション法:麻酔をし、顎関節の関節円板を正常な位置に戻す方法
- 関節鏡下手術:重症である場合に、関節円板を正常な位置に戻す方法
- マッサージ・ホットパック:顎関節部の血行を促し、症状を緩和させる方法
その他、むちうち等の二次的要因からの発症が考えられる場合には、その要因に対する治療をしていくことになります。
顎関節症となった場合の後遺障害等級と慰謝料の相場
交通事故による顎関節症で後遺症が残ってしまう場合も少なくありません。 そのような場合には、残ってしまった後遺症について後遺障害等級認定の申請を行う必要があります。 後遺障害等級認定を受けられれば、新たな損害として“後遺障害慰謝料”と“後遺障害逸失利益”を請求することができます。 しかし、顎関節症は、顎関節運動の異常を主とする症状の総称であることから、顎関節症で後遺障害等級認定を受けることはできません。つまり、顎関節症が原因で生じた個別の症状に応じて認定されます。 なお、後遺障害慰謝料の相場は、下表のとおり、等級や用いる算定基準によって異なります。もっとも高い基準とされる弁護士基準での後遺障害慰謝料の相場は、110~2800万円です。
後遺障害等級 | 自賠責基準※ | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級2号 | 1150万円 | 2800万円 |
3級2号 | 861万円 | 1990万円 |
4級2号 | 737万円 | 1670万円 |
6級2号 | 512万円 | 1180万円 |
9級6号 | 249万円 | 690万円 |
10級3号 | 190万円 | 550万円 |
12級13号 12級相当 |
94万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
※自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。
後遺障害慰謝料について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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顎関節症で後遺障害等級認定を受けるためには、個別の症状で後遺障害等級認定の申請手続きを行う必要があります。 次項にて、症状別にもう少し掘り下げてみていきましょう。 なお、後遺障害等級認定を受けるためのポイントや申請方法について、以下のページもご覧ください。
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顎の痛み
顎関節や咀嚼筋に痛みが残っている場合は、顎関節症による神経症状で後遺障害等級12級13号または14級9号に認定される可能性があります。 両等級の違いは、“他覚的所見の有無”にあります。 生じている顎関節や咀嚼筋の痛みが、画像などの他覚的所見によって医学的に証明できる場合には12級13号が、他覚的所見はないが医学的に説明できる場合には14級9号に認定されます。
後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
口が開かない
口を大きく開けることができなくなる症状を、開口障害といいます。 開口障害は、顎関節症の代表的な症状であり、次のようなことが原因であると考えられています。
<口が開かなくなる原因について>
- 関節円板がずれて、関節の動きが制限されたため
- 痛みが強いため
- 口を大きく開けない状態が長時間続き、顎関節や咀嚼筋の可動域が制限されたため
なお、縦に指が3本入るくらいの開口量=40㎜が通常とされていることから、40㎜以下の開口量である場合に顎関節や咀嚼筋に異常がみられると判断されます。また、開口量の程度が大きいほど重い後遺障害等級に認定されます。
後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
1級2号 | 咀嚼及び言語の機能を廃したもの |
3級2号 | 咀嚼及び言語の機能を廃したもの |
4級2号 | 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの |
6級2号 | 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの |
9級6号 | 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの |
10級3号 | 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの |
12級相当 | 開口障害などを原因として咀嚼に相当時間を要するもの |
咀嚼障害とは
咀嚼障害とは、「食べ物を噛む・飲み込む」ということが困難となる障害を指します。咀嚼障害が認められる場合、その程度に応じて後遺障害等級が認定されます。 なお、具体的には、以下のような状態である場合に咀嚼障害として後遺障害等級が認められます。
- 咀嚼の機能を廃した場合 → 流動食しか食べられないような状態を指します。
- 咀嚼の機能に著しい障害がある場合 → 粥食などの飲食物しか口にできない状態を指します。
- 咀嚼の機能に障害を残した場合 → 噛めないものがある状態を指します。
- 咀嚼に相当の時間を要する場合 → 噛めるものの、相当な時間を要してしまう状態を指します。
顎を動かすと音がする
口を開けた際に音(クリック音)がするという症状の場合は、咀嚼機能に支障を来していないため、残念ながら後遺障害として認められることはありません。 なお、クリック音がする原因は、以下のとおりと考えられています。
- 関節円板がずれ、顎を動かしたときに引っかかっているため
- 顎関節を構成している骨が変形して擦れているため など
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交通事故による顎関節症で適切な慰謝料を獲得するためには?
顎関節症で認定される可能性のある後遺障害等級は、症状別に異なります。 そのため、適切な後遺障害等級認定を受けるためには、生じている症状を裏付ける証拠が重要です。 また、顎関節症の発症要因は二次的要因、つまり、顎周辺の怪我ではなく、むちうちなどの怪我が発症原因となり得ます。必要な検査を受けて顎関節症に該当するかどうかを慎重に検討しなければなりませんが、通院方法や根拠資料の収集をひとりで判断することは難しいでしょう。 そのため、交通事故の知識だけでなく、医学的な知識を兼ね備えた弁護士にご相談されることをおすすめします。そうすることで、適切かつ円滑に手続きを進めることが可能となります。
交通事故で顎関節症となった場合は弁護士法人ALGにご相談ください
交通事故による顎への強い衝撃や他の怪我が原因で、顎関節症が発症するケースは少なくありません。 顎関節症により、話すことや食べること等が困難となれば、日常生活に大きな支障を及ぼします。顎関節症で被った損害を十分に補償してもらうためには、適切な後遺障害等級認定を受ける必要があります。 後遺障害等級認定の確率を少しでもあげるために、交通事故だけでなく医学的知識を有する弁護士にご相談されることをおすすめします。弁護士に依頼することで、様々な面でサポートを受けられ、認定の確率をあげることが期待できます。どのように進めればよいのか不安な時にも相談できるため、精神的な負担も軽減されるはずです。 交通事故で顎関節症となりお悩みの方は、ぜひ弁護士法人ALGへご相談ください。
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