交通事故で腰椎捻挫となった場合の慰謝料や後遺障害等級について

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
交通事故後、腰痛に悩まされる方も多いのではないでしょうか? その原因は「腰椎捻挫」の可能性があります。 腰椎捻挫は、3~6ヶ月ほどで完治することもあれば、腰の痛みや下肢の痛み・しびれといった後遺症が残る可能性もあります。 とはいえ、腰椎捻挫は、見た目ではわかりにくく、慰謝料や後遺障害で争いとなるケースも少なくありません。 そこで、交通事故で腰椎捻挫と診断された場合に請求できる慰謝料と、腰椎捻挫の後遺症で認定される可能性のある後遺障害等級について、本ページで詳しく解説していきます。 腰椎捻挫と診断されて治療中の方や、後遺症でお悩みの方、示談交渉中の方などにとって、参考になれば幸いです。
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目次
腰椎捻挫とは
交通事故等による衝撃で腰に大きな負荷がかかると、腰椎捻挫となる場合があります。腰椎捻挫は、腰椎や腰まわりの軟骨・靭帯といった部分の損傷を伴う場合もあり、腰痛やしびれなどの症状を引き起こす原因となることがあります。 交通事故に遭って腰に痛みなどが現れた場合、早めに整形外科を受診して、医師の診察と適切な検査を受けましょう。
《腰椎捻挫の主な症状》
腰椎捻挫の主な症状は、腰や背中の痛み、しびれです。 ぎっくり腰のような強い腰の痛みを伴う場合や、歩行や重いものを持つことが困難になる場合もあります。 安静時よりも、動いたときに強い痛みが生じることもあります。 足に痛みやしびれが伴う場合は、骨折など別の傷病の可能性も考えられますので、主治医と相談しましょう。
治療期間はどのくらいなのか
腰椎捻挫の治療期間は、一般的に2~3ヶ月程度といわれています。 もっとも、事故状況や症状の程度などによっては、6ヶ月程度の治療が必要な場合もあります。 6ヶ月程度治療を継続しても症状が改善しない場合は、症状固定と診断される可能性が高くなります。
《症状固定とは?》
治療を継続しても、症状の改善が期待できない状態のことです。 医師より症状固定と診断されると、治療期間が終了します。 症状固定後に後遺症が残った場合は後遺障害等級認定の申請を検討しましょう。
交通事故で腰椎捻挫になった場合の慰謝料について
交通事故で腰椎捻挫と診断された場合、身体的にも精神的にも苦痛を感じると思います。 このような苦痛に対しては慰謝料を請求できます。慰謝料には次の2種類があります。
入通院慰謝料 | 交通事故の怪我を治療するために入院・通院を強いられた精神的苦痛に対する補償です。 |
---|---|
後遺障害慰謝料 | 交通事故で後遺障害が残ったことで生じる身体的苦痛・精神的苦痛に対する補償。請求するには、基本的に後遺障害等級認定を受ける必要があります。 |
慰謝料の算定に必要な3つの基準
交通事故の慰謝料は、次の3つの算定基準のいずれかを用いて計算します。 用いる算定基準によって、慰謝料の金額が変わります。 交通事故の被害者が受け取るべき適切な慰謝料額は、弁護士基準で計算した額が目安となります。
自賠責基準 | 強制加入である自賠責保険の基準です。3つの基準のなかで、もっとも慰謝料が低額になる傾向があります。 |
---|---|
任意保険基準 | 任意保険会社が独自で定めている基準です(詳細は非公開です)。 自賠責保険と弁護士基準の間の慰謝料額となる傾向があります。 |
弁護士基準 | 弁護士や裁判所が用いる基準です。 過去の裁判例をもとにした基準のため、3つの基準の中で、慰謝料額が最も高額になる傾向にあります。 |
腰椎捻挫の入通院慰謝料の相場
事故による腰椎捻挫で通院した場合、入通院慰謝料はどのくらいになるのでしょうか? 入通院慰謝料は、入通院期間や、実際に入通院した日数に基づいて計算されます。 自賠責基準と弁護士基準で計算した慰謝料の目安を表にまとめました。比較してみましょう。
通院期間 (実通院日数) |
自賠責基準 | 弁護士基準 (軽傷時) |
弁護士基準 (軽傷以外) |
---|---|---|---|
1ヶ月(15日) | 12万9000円 | 19万円 | 28万円 |
2ヶ月(30日) | 25万8000円 | 36万円 | 52万円 |
3ヶ月(45日) | 38万7000円 | 53万円 | 73万円 |
4ヶ月(60日) | 51万6000円 | 67万円 | 90万円 |
5ヶ月(75日) | 64万5000円 | 79万円 | 105万円 |
6ヶ月(90日) | 77万4000円 | 89万円 | 116万円 |
※任意保険基準は、詳細が公表されていないため省略しています。
腰椎捻挫の後遺障害等級
後遺障害等級とは、事故の怪我が完治せずに残存した後遺症を後遺障害として認定するにあたって、後遺障害の症状や程度に応じて区分したもので、最も高い1級から最も低い14級があります。 後遺障害等級に応じて、後遺障害慰謝料や逸失利益も変化します。
《腰椎捻挫の後遺障害等級》
交通事故で腰椎捻挫と診断され後遺症が残った場合、認定される可能性があるのは次のような神経症状に関する後遺障害等級です。
等級 | 認定基準 |
---|---|
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
後遺障害等級を申請する際の注意点
後遺障害等級認定の申請をするにあたって、注意すべきポイントがあります。
●医師の後遺障害診断書が重要
等級認定のため、後遺障害診断書に記載された内容が審査されます。 診断書に記載された症状、程度、関係する医学的な所見等が不十分であると、適切な等級認定を受けられない可能性があり、必要な検査を受け、症状等を適切に主治医に伝えることが重要です。
●自分にあった申請方法を選択する
後遺障害等級認定の申請方法には、2種類あります。 それぞれの方法の特徴を知って、ご自身にあった方法を選択しましょう。
事前認定 (加害者請求) |
書類収集や提出など手続の大部分を、保険会社に一任する方法です。 自分自身で行うことは後遺障害診断書を加害者側の任意保険会社に提出するだけです。それゆえ、申請手続の負担が小さいというメリットがあります。 しかし、自身に有効な証拠を提出することが困難というデメリットもあります。 |
---|---|
被害者請求 | 自分自身で申請に必要な書類をすべて集めて、加害者側の自賠責保険会社に直接提出する方法です。 費用や手間はかかる点で負担が大きいというデメリットがあります。 しかし、認定に有効な証拠を提出できれば、納得できる結果が得やすくなるというメリットがあります。 |
後遺障害等級認定の申請方法について、次のページもご参考ください。
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腰椎捻挫で14級9号を認定してもらうためのポイント
腰椎捻挫で後遺症が残った場合、症状を医学的に説明できれば、後遺障害14級9号が認定されます。 具体的なポイントは、次のとおりです。
- MRIやCT画像の他覚的所見は乏しくても、神経症状の存在を医学的に説明できる。
- 事故直後から症状固定までの自覚症状に、連続性・一貫性がある。
- 6ヶ月以上、適切な頻度で継続して通院している。
- 後遺障害診断書に、有利な神経学的検査の結果や、日常生活への支障等を記載してもらう。
腰椎捻挫で12級13号を認定してもらうためのポイント
腰椎捻挫で後遺症が残った場合、症状を医学的に証明できれば、後遺障害12級13号が認定されます。14級の認定基準と似ていますが、12級では他覚的所見に基づいて「証明」できるかが重要です。 具体的なポイントは、次のとおりです。
- MRI・CT画像検査や、神経学的検査などの他覚的所見で異常が確認できる。
- 事故直後から症状固定までの自覚症状に、連続性・一貫性がある。
- 6ヶ月以上、適切に継続して通院している。
腰椎捻挫の後遺障害慰謝料の目安
頚椎捻挫で後遺症が残ってしまい、後遺障害等級が認定された場合、後遺障害が残ったことに対する慰謝料として、「後遺障害慰謝料」が請求できるようになります。 後遺障害慰謝料は、認定された等級に応じて、次のように目安が定められています。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
12級13号 | 94万円 | 290万円 |
※任意保険基準は、詳細が公表されていないため省略しています。
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交通事故の前から腰痛などの症状があった場合の慰謝料はどうなる?
交通事故の前から、腰痛などの症状があると、加害者側の保険会社から「素因減額」を主張されて、慰謝料が減額されるおそれがあります。
《素因減額とは?》
被害者が事故前から治療中の傷病や過去の傷病といった素因が、事故損害の発生・拡大の一因であると考えられる場合等、一定の要件を満たす場合に、この素因を考慮して、慰謝料を減額するという考え方です。
《素因があると慰謝料は請求できない?》
素因があるからといって、慰謝料が請求できないわけではありません。 また、素因があるからといって、必ずしも慰謝料を減額されるとは限りません。 相手方から素因減額の主張をされた場合は、専門的な知識が必要となるため、弁護士への相談がおすすめです。
慰謝料以外に腰椎捻挫で受け取れる損害賠償
《損害賠償の一例》
- 診察費・入院費・手術代など、治療にかかった「治療関係費」
- 電車代・バス代など、通院にかかった「通院交通費」
- 通院・通院の付添を要した場合に請求できる「付添看護費」
- 車いす・介護ベッドなどの購入にかかった「装具・器具購入費」 など
このように、交通事故で腰椎捻挫の診断を受けた方が請求できる損害には、慰謝料以外に様々な種類があります。 また、実際に支払いが生じたもの以外にも、交通事故に遭わなければ得られたはずの「休業損害」「逸失利益」も請求することができます。 交通事故で受け取れる損害賠償について、次のページもご参考ください。
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休業損害
休業損害とは、交通事故の怪我が原因で仕事を休んだために減ってしまった収入のことです。 休業損害を請求できるのは、実際に収入のある会社員や自営業者だけではありません。 家事従事者の主婦(主夫)や、アルバイトの学生でも請求できる可能性があります。 休業損害について、詳しくは次のページもご参考ください。
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後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残らなければ得られるはずだった将来の収入や利益のことです。 具体的な額は、基本的に、基礎収入、認定された後遺障害等級により定められた労働能力喪失率、労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を用いて計算します。 逸失利益について、詳しくは次のページもご参考ください。
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弁護士に依頼することで腰椎捻挫の慰謝料が増額された解決事例
弁護士に依頼することで、腰椎捻挫の慰謝料が増額した事例は多くあります。 その中で、当法人の解決事例を2件ご紹介します。
既往症で後遺障害等級認定が非該当となったが、弁護士に依頼したことで14級9号が認定され慰謝料の増額に成功した事例
既往症で後遺障害等級「非該当」となった後、訴訟で弁護士が主張・立証した結果、14級9号が認定され、慰謝料が増額した事例をご紹介します。
《概要》
ご依頼者様は、対向車線から相手方車両に衝突され、腰椎捻挫で約1年間の通院治療を受けた後も腰痛が残存したため、事前認定の方法で後遺障害等級認定の申請をしました。 しかし、その結果は、前回事故と同一部位の受傷であることを理由に「非該当」でした。
《経緯》
「非該当」という後遺障害等級認定の結果に納得できなかったご依頼者様は、後遺障害慰謝料等の賠償金を請求したいと考え、当法人にご依頼されました。
《結果》
担当弁護士は、前回事故時の資料や本件事故に遭うまでの通院歴などの客観的資料をもとに訴訟提起し、 ●本件事故前に、前回事故による症状が消滅していること ●本件事故による腰椎捻挫で14級9号に相当する症状が残存していること などを主張・立証しました。 その結果、当方の主張はほぼ受け入れられ、14級9号相当の後遺障害があると認められ、約240万円の賠償金で、和解が成立しました。
主婦休損の交渉や後遺障害等級認定のサポートを行った結果、慰謝料の増額にも成功した事例
弁護士が主婦休損の交渉や、後遺障害等級認定のサポートを行った結果、慰謝料が増額した事例をご紹介します。
《概要》
ご依頼者様は、停車中に、前方から後退してきた相手方車両に衝突され、頚椎捻挫と腰椎捻挫を負われました。
《経緯》
事故当時、私病で休職されていたご依頼者様は、休業損害の請求と治療費の打ち切りに不安を感じられたことから、当法人にご依頼されました。
《結果》
担当弁護士が、ご依頼者様の症状の裏付けとなる医療照会等の結果を踏まえて、相手方保険会社と交渉した結果、約半年間にわたる一括対応の継続が認められました。 また、当法人の弁護士が後遺障害診断書の作成等のサポートを行ったことで、首の痛みと腰痛の症状に関して、それぞれ後遺障害14級9号が認定されました。 これの結果を踏まえて、主婦休損としての交渉を進めたことで、当方主張とおり、賠償金約340万円で示談が成立しました。
交通事故によって腰椎捻挫の怪我をしてしまった場合は慰謝料のことなど弁護士にお任せください
交通事故で腰椎捻挫と診断されると、慰謝料などの賠償金を加害者に請求できます。 また、治療を続けても後遺症が残った場合には、後遺障害等級認定申請を行い、等級が認定されれば、請求できる損害の種類が増えて、受け取れる賠償金が増額することもあります。 交通事故の腰椎捻挫に悩む方のなかには、適切な賠償金を受け取れていない場合も少なくありません。 もともと腰痛があった、症状を医学的に裏付けられなかったなど、適切な賠償金を受け取れていない事情はさまざまです。 しかし、弁護士が介入することで、こうした問題が解消できる可能性があります。 私たち弁護士法人ALGでは、交通事故問題に精通した弁護士が、医療問題に特化した弁護士と連携して、事故の腰椎捻挫でお困りの方の味方となり、適切な賠償金を受け取れるようにサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。
交通事故被害者専用 相談窓口まずは交通事故の受付スタッフが丁寧にご対応いたします
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※死亡・後遺障害等級認定済みまたは認定が見込まれる場合
※事案によっては対応できないこともあります。
※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。