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後遺障害等級12級の慰謝料と認定基準について

弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治

監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates

後遺障害等級12級は、14段階ある交通事故の後遺障害の中で、3番目に軽い症状だとされています。 骨の変形や顔の傷などの損傷部位・症状によって、12級の中で14の系列に区分されます。 12級が認定された場合、自賠責基準での後遺障害慰謝料は94万円です。 多くは、相手方からこの金額を基準とした慰謝料額を提示されますが、最低水準であるため、増額できる可能性があります。 このページでは、後遺障害等級12級に着目して、慰謝料を中心に解説していきます。 後遺障害等級12級の認定基準についても触れていきますので、ご自身の症状が該当するのかを判断する参考になれば幸いです。

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後遺障害等級12級の慰謝料の計算方法と相場

後遺障害等級12級が認定された場合、慰謝料はどのくらいになるのでしょうか? まずは、慰謝料の計算方法を確認しましょう。

《後遺障害慰謝料の計算方法》
後遺障害慰謝料には3つの算定基準があり、自賠責基準 < 任意保険基準 ≦ 弁護士基準の順で高額になります。
どの基準を用いるかによって、慰謝料額が大きく変わります。

後遺障害等級12級の慰謝料の相場
自賠責基準 弁護士基準
94万円 290万円

後遺障害慰謝料は、認定された等級に応じた相場がそれぞれの基準によって定められています。 12級の場合、慰謝料の相場は上記のとおりで、相手方からは、自賠責基準に近い金額を提示されることが多いですが、弁護士基準の金額まで増額できる可能性があります。

逸失利益の計算

交通事故の後遺障害を理由に請求できる賠償金には、後遺障害慰謝料のほかに、後遺障害逸失利益があります。 逸失利益とは、事故の後遺障害がなければ被害者が得られたであろう、将来の収入のことです。 逸失利益の計算方法を確認してみましょう。

《後遺障害逸失利益の計算式》
 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数

《労働能力喪失率と後遺障害等級》
後遺障害によって労働能力がどの程度減少したのか=労働能力喪失率は後遺障害の等級が上がるほど高くなるので、逸失利益も高額になります。
なお、後遺障害等級12級の場合、労働能力喪失率は14%です。

後遺障害逸失利益について、次のページもご参考ください。

後遺障害等級12級で請求できる損害賠償

後遺障害等級12級が認定された場合に請求できる損害賠償をまとめました。 後遺障害がなくても請求できる「傷害部分」と、後遺障害が認定されることで請求できる「後遺障害部分」の2つに分けて紹介していきます。

傷害部分の損害

治療が終了した時点(完治または症状固定)で確定する、事故が原因の損害

損害賠償 解説
傷害慰謝料
(入通院慰謝料)
事故で怪我を負ったことによる精神的苦痛に対する賠償のこと
入通院期間等を参照して額を決める
※弁護士基準の慰謝料が最も高額になります
治療費 入院費用、手術費用、リハビリ費用、薬代など必要な治療にかかった費用(実費) ※診療報酬明細書や領収書を保管しておきましょう
交通費 電車・バス・ガソリン代など通院するためにかかった費用(実費)
特別な事情がある場合に限りタクシー代が認められるケースもある
※領収書を保管しておきましょう
入院雑費 寝具・衣類などの日用雑貨費や新聞・テレビカードなどの文化費、通信費など
入院中の雑費購入費用が1日あたり1500円が認められる(自賠責基準では1100円) ※領収書を保管しておきましょう
文書費 事故証明書や後遺障害診断書などの文書作成・発行手数料(実費) ※領収書を保管しておきましょう
付添看護費 被害者が子供や高齢者など通院や入院に付添人が必要な場合の手当
入院の付添では1日あたり6500円(自賠責基準では4300円)
通院の付添では1日あたり3300円が認められる(自賠責基準では2100円)
※付添を委託した場合は相当の範囲内で実費が請求できます
休業損害 事故による怪我が原因で仕事を休んだために得られなかった収入のこと
事故以前に実際に収入を得ていない専業主婦(主夫)、高齢者などにも認められる場合がある
※算定方法には諸説あり、保険会社は安くなる算定方法を使う傾向にあります。

後遺障害部分の損害》

事故の後遺障害が原因で生じる、将来の損害

損害賠償 解説
後遺障害慰謝料 後遺障害によって、事故後も受け続ける身体的・精神的苦痛に対する賠償のこと
認定された等級によって金額の目安が定められている
※弁護士基準の後遺障害慰謝料が最も高額になります
後遺障害逸失利益 後遺障害によって失われた将来得られたはずの収入・利益のこと
認定された等級ごとに定められた「労働能力喪失率」を用いて計算される
※後遺障害等級12級の場合は14%です

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後遺障害等級12級の認定基準と症状

後遺障害等級12級の代表的な症状は、骨の変形や関節の可動域制限、客観的に証明できる神経症状などがあります。 同じ12級の中で、後遺症が残った身体の部位や機能によって、1号~14号の系列に区分されます。 それぞれの認定基準を具体的にみていきましょう。

後遺障害等級12級の認定基準
後遺障害等級 認定基準
12級1号 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
12級2号 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
12級3号 七歯以上に対し歯科補綴(ほてつ)を加えたもの
12級4号 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
12級5号 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
12級6号 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
12級7号 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
12級8号 長管骨に変形を残すもの
12級9号 一手のこ指を失ったもの
12級10号 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
12級11号 一足の第二の足指を失ったもの
第二の足指を含み二の足指を失ったもの
又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの
12級12号 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
12級14号 外貌に醜状を残すもの

12級1号

一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

<主な後遺障害>
調節機能障害:ピント調節機能が2分の1以下になった場合 運動障害:頭を固定した状態で眼だけで物を追うことができる注視野が2分の1になった場合 ※いずれも片方の眼球に認められる場合
※加齢とともに衰退するため、55歳を超える場合は、原則、後遺障害として認定されない傾向にあります。

12級2号

一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

<主な後遺障害>
運動障害:まぶたが十分に開いたり閉じたりしないために、瞳孔や角膜が露出してしまう状態 ※片方のまぶたに認められる場合

12級3号

七歯以上に対し歯科補綴(ほてつ)を加えたもの

<主な後遺障害>
歯牙障害:7本以上の歯を損傷し、差し歯やブリッジ等で治療し、義歯での生活を余儀なくされている状態 ※日常生活に不便はなくとも、認定されます。
※事故前から虫歯等で抜けていた場合や、乳歯の場合は対象外となります。

12級4号

一耳の耳殻の大部分を欠損したもの

<主な後遺障害>
欠損障害:外側に張り出している部分(耳介)を2分の1以上失った場合 ※片方の耳に認められる場合
※程度によっては、外貌醜状によって後遺障害等級7級12号に適用される場合もあります。

12級5号

鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

<主な後遺障害>
変形障害:脊柱以外の骨が骨折し、治癒する際に著しい変形をしてしまった場合で、裸体となった時に変形が明らかにわかる状態 ※変形した骨の本数は問われません。

12級6号

一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

<主な後遺障害>
機能障害:片方の上肢の3大関節(肩・肘・手首)のうち、1つの関節に機能障害が残ってしまった場合 可動域制限:片方の上肢の3大関節(肩・肘・手首)のうち、1つの関節の可動域が4分の3以下になってしまった場合 手のひらの回内・回外運動の可動域が2分の1になってしまった場合 ※補装器具を要する、または習慣性脱臼がある場合も該当します。

12級7号

一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

<主な後遺障害>
機能障害:片方の下肢の3大関節(股関節・膝・足首)のうち、1つの関節に機能障害が残ってしまった場合 可動域制限:片方の下肢の3大関節(股関節・膝・足首)のうち、1つの関節の可動域が4分の3以下になってしまった場合 ※補装器具を要する、または習慣性脱臼がある場合も該当します。

12級8号

長管骨に変形を残すもの

<主な後遺障害>
変形障害:長管骨という腕や足の長い骨が骨折した際、治療しても癒着がうまくいかなかったり、骨がねじれたり曲がったりした状態 腕の長管骨:上腕骨、橈骨、尺骨
足の長管骨:大腿骨、腓骨、脛骨

12級9号

一手のこ指を失ったもの

<主な後遺障害>
欠損・機能障害:片方の手の小指を失った場合 ※握力に影響があり、職種によっては大きな労働能力損失となります。

12級10号

一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの

<主な後遺障害>
欠損・機能障害:片方の手の人差し指、中指または薬指の用を廃した状態 ※「用を廃した」とは、以下のいずれかに該当する場合をいいます。

  • 指の長さが2分の1になった場合
  • 第2関節より先の可動域が2分の1になった場合
  • 指先の痛みや温度、あるいは触感等の感覚が完全に失われた場合

12級11号

一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの

<主な後遺障害>
欠損・機能障害:以下のいずれかに該当する場合をいいます。

  • 片方の足の人差し指を失った場合
  • 片方の足の人差し指と、親指以外のもう1本の指を失った場合
  • 片方の足の中指、薬指、小指の3本を失った場合

12級12号

一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの

<主な後遺障害>
欠損・機能障害:片方の足の親指、または他の4本の足の指が用を廃した場合 ※「用を廃した」とは、以下のいずれかに該当する場合をいいます。

  • 片方の足の親指の第1関節が、2分の1の長さになった場合
  • 片方の足の親指以外の指が、根元から第1関節の間で切断された場合
  • 親指は第1関節、それ以外の指は根元から第2関節にかけての可動域が2分の1以下になった場合

12級13号

局部に頑固な神経症状を残すもの

<主な後遺障害>
むちうち:慢性的な痛みや凝り、痺れ等がある状態 ※自覚症状の裏付けとして画像検査・神経学的検査による他覚所見があれば、認定される可能性があります。
※自覚症状の裏付けが医学的説明に留まる後遺障害等級14級相当の症状同様、認定判断が難しいとされる症状です。

12級14号

外貌に醜状を残すもの

<主な後遺障害>
醜状障害:人目に触れる箇所に大きな傷跡が残ってしまった場合 ※例えば、以下のような場合で、男女差はありません。

  • 頭にニワトリの卵大より大きい傷跡が残った場合
  • 顔に10円玉以上の大きさの傷跡や、長さ3cm以上の線上の傷跡が残った場合
  • 両腕や両足に、手のひらの3倍以上の傷跡が残った場合

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後遺障害等級12級が認定されるためのポイント

後遺障害等級12級は、等級認定の判断が難しい症状も多く、認定を受けられる確率は決して高くないのが実状です。 損害保険料率算出機構の統計によると、12級の認定率は、等級認定全体の約16%、交通事故全体では、わずか0.8%程度といわれています。 では、どうすれば後遺障害等級12級の認定が得られるのでしょうか? 12級に限らず、ほかの等級にも共通する、後遺障害等級の認定ポイントを押さえておきましょう。

《適切な後遺障害等級が認定されるためのポイント》
●症状を裏付ける、画像検査結果や神経学的検査結果などの他覚所見があり、事故様態と受傷した怪我の程度が一致するなどして、事故と後遺症の因果関係が証明できる ●事故直後から定期的に病院に通院し、適切な治療を続けている ●事故直後から症状が一貫して継続し、日常生活において慢性的に生じている

むちうちで12級を獲得したい場合

交通事故に遭われた多くの方が悩まされる「むちうち」は、後遺障害等級が認定される場合、12級か14級のいずれかに該当します。 12級と14級の違いは「他覚所見の有無」です。 これをふまえて、むちうちで12級を得るためのポイントを確認していきましょう。

むちうちの後遺障害等級の違い
むちうちの後遺障害等級 認定基準
12級13号 【局部に頑固な神経症状を残すもの】
自覚症状を他覚所見から証明できる
14級9号 【局部に神経症状を残すもの】
他覚所見はないが自覚症状に連続性・一貫性があり、事故との因果関係を医学的に説明できる

《むちうちで後遺障害等級12級を獲得するためのポイント》
むちうちで12級を獲得するためには、レントゲン・MRIといった画像検査や神経学的検査の結果などの他覚所見から自覚症状を医学的に証明する必要があります。

むちうちで12級13号を認定された解決事例

実際にむちうちで後遺障害等級12級13号が認定された、当法人の解決事例をご紹介します。

《被害状況》
ご依頼者様は本件事故により、頚椎損傷等のいわゆる「むちうち」を負い、手術を含め一定期間、入通院治療を続けた後、事前認定にて、後遺障害等級併合14級の認定を受けました。

《依頼経緯》
ご依頼者様には頚部の持病があったものの、主治医の説明では事故がなければ持病の症状は悪化せず、手術も必要なかったとのことでした。そこで、異議申立ての申請に向けた弁護士の助力を必要に感じ当法人にご相談いただきました。

《結果》
ご依頼者様からの聴取や、診断書等の医療記録を精査し、異議申立てをすることにしました。弁護士が主治医と複数回面談し、頚部画像所見に焦点を当てた意見書を作成してもらい異議申立てを行った結果、後遺障害等級12級13号が認定されて適正な損害賠償の請求が可能になりました。

後遺障害等級の申請は被害者請求がベスト

適切な後遺障害等級の認定を受けるために、後遺障害等級認定の申請は「被害者請求」がベストな方法といえます。

●被害者請求とは?
必要書類の収集から、相手方の自賠責保険会社への提出まで  すべての申請手続きを被害者ご自身が行う方法です。
申請手続を相手方の任意保険会社に一任する「事前認定」という方法もありますが、手続が不透明なうえ、適切な認定が得られない可能性があります。

●なぜ被害者請求がベストなのか?
被害者請求がベストな理由は納得のいく結果が得られやすいというメリットが大きいためです。
被害者ご自身の負担は大きくなりますが弁護士に手続を一任することができるので負担を軽減することができます。

被害者請求のメリットとデメリット
メリット ●申請に必要な書類を自分で精査できる
●有効な書類を提出できれば、納得のいく認定が得られやすくなる
●示談成立前に、一部補償の先払いが受けられる
デメリット ●多くの書類収集や保険会社とのやりとりなど、手間や費用の負担が大きい

被害者請求について、次のページもご参考ください。

後遺障害等級が認定されなかった場合、異議申立てができます

後遺障害等級が認定されず「非該当」だったとか、認定された等級が望む等級に満たないなど、後遺障害等級の認定結果に納得がいかない場合、被害者側が起こせるアクションとして「異議申立て」があります。自賠責保険の認定結果に不服がある場合に申立てができる制度で、回数の制限もないため、納得のいくまで何度でも異議申立てを行うことが可能です。 ただし、異議申立てを行う場合は、新しい医証や追加の検査受診等、前回の結果を補充するようなより強固な内容をもって手続を行う必要があります。そのため、弁護士への依頼も検討されたほうが良いでしょう。

異議申立て後、後遺障害等級12級が認定され慰謝料の増額に成功した解決事例

当法人で異議申立てを行った結果、後遺障害等級12級が認定され、慰謝料が増額した事例をご紹介します。

《事故概要》
ご依頼者様が原動機付自転車で走行中、後続の加害者車両が追い越そうとしてご依頼者様の側面部に衝突してきたという事故です。

《被害状況》
ご依頼者様は一定期間の通院治療の後、事前認定にて後遺障害等級14級の認定を受けました。

《依頼経緯》
相手方から賠償案の提示を受けましたが、そもそも後遺障害等級認定の評価がご自身の症状に見合った内容なのか疑問に感じ当法人にご相談いただきました。

《結果》
担当弁護士は後遺障害等級の認定理由などを精査したところ14級は不当と判断しました。そして、後遺障害診断書の見直しや診療録の写し等の医療記録から症状の推移や残存した症状について具体的に示した意見書を作成し、異議申立てを行いました。
その結果、後遺障害等級12級が認定され、相手方の当初提示額から約400万円増額した賠償金で示談が成立しました。

後遺障害等級12級について不明点・納得できないことがあれば、弁護士にご相談ください

「後遺障害等級12級が認定されるためにはどうしたらいいの?」 といった不明点がある場合や、 「12級の認定基準に当てはまるはずなのに14級が認定された」 など、認定結果に納得できない場合は、ぜひ交通事故に精通した弁護士にご相談ください。

ご自身での申請や事前認定では14級や非該当となるケースでも、弁護士であれば12級の認定が得られるケースも多くあります。 適切な認定が獲得できれば、その分受け取れる損害賠償の金額も増額します。 弁護士法人ALGは、交通事故事案だけではなく、医療分野にも特化した弁護士が在籍しているため、後遺障害をめぐる争いにも、医学的知識をもって対応することができます。 無料相談も受け付けておりますので、被害者請求や異議申立ての代行はもちろん、12級獲得に向けた通院のアドバイスなど、お困りのことがありましたら、まずは私たちに、お気軽にお問い合わせください。

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