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後遺障害の【可動域制限】とは?

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員
監修 弁護士 谷川 聖治
弁護士法人ALG&Associates執行役員
愛知県弁護士会所属。私たちは、弁護士91名、スタッフ159名を擁し(2019年1月末現在)、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、福岡の10拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。

交通事故後、肩や腕が動かしにくい、ある一定の角度以上動かせないといった症状がある場合、可動域制限の後遺障害が残ってしまっているのかもしれません。

この記事では、「可動域制限とは?」「もらえる慰謝料の額は?」といった疑問に答えていきたいと思います。

可動域制限になってしまったら

後遺障害における可動域制限とは、上肢の3大関節(肩、肘、手首)又は下肢の3大関節(股、膝、足首)が、健康な状態に比べて曲がりにくくなってしまうことをいいます。 交通事故により骨折や脱臼、靭帯損傷したときに、可動域制限の後遺障害が残ることがあります。この後遺障害が残ると、自分の意思で手や足を使うことがほぼできなくなって介護が必要になったり、そこまで至らなくても、歩行が困難になったり、身体の重心移動に障害が出て転倒しやすくなったりすることがあります。他にも、この後遺障害によって生じる日常生活への影響は大きいです。 可動域制限があると診断されたら、病院で適切なリハビリ治療を受けるとともに、後遺障害等級認定を申請しましょう。

後遺障害等級認定の申請に必要な検査

X線画像検査、MRI画像検査

関節の可動域制限が後遺障害として認められるためには、機能障害の原因となる器質的損傷があることが必要です。 交通事故による、関節や関節付近の骨折や脱臼、靭帯や腱、筋肉等の軟部組織の損傷、神経の損傷といった器質的損傷を確認するため、できるだけ早期からX線やMRIといった画像検査を継続的に受けましょう。

可動域検査

関節の可動域制限が後遺障害として認められるためには、実際に可動域が規定値を下回っていることが必要です。 関節の可動域の測定は、「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領(厚生労働省)」等に則り行います。 簡単に説明すると、①障害を残す側の関節の可動域と健康な側の関節の可動域を測定して比較することによって、障害を残す側の関節の可動域が健康な側の関節に比べて何%制限を受けているか測定します。 障害を残す側を「患側」(かんそく)、健康な側を「健側」(けんそく)といいます。 また、②屈曲と伸展のように同一面にある運動については、屈曲と伸展両方の可動域の角度を合計した値によって、関節可動域の制限の程度を評価します(ただし、主要運動(*)と参考運動(*)に分かれる肩関節の屈曲と伸展の場合を除きます)。 *主要運動…関節ごとの、日常生活における最も重要な動作
*参考運動…日常生活において主要運動ほど重要でない動作

関節の可動域制限の原因

関節の可動域制限が残る原因としては、次の3つが挙げられます。
関節の器質的変化、神経麻痺、人工関節や人工骨頭の挿入・置換です。
これらは、交通事故による関節の破壊や、関節周辺部の骨折、靭帯や腱、筋肉の損傷等により起こります。具体的には以下のとおりです。

関節の器質的変化を原因とする場合 骨折や脱臼等による関節の器質的変化(関節自体が破壊され、靭帯・腱・筋肉といった関節外の軟部組織が変化すること)の結果、可動域制限が生じることがあります。

神経麻痺を原因とする場合 交通事故により、関節を動かすための神経が傷ついたり断裂したりする等の理由で神経麻痺が生じた結果、自力で関節を動かすことが困難になる場合があります。

人工関節や人工骨頭の挿入・置換を原因とする場合 人工関節や人工骨頭を挿入・置換した結果、関節可動域制限が生じることがあります。

可動域制限の後遺障害等級と慰謝料

以下の3つの状態のうち、いずれかが認められる場合に、可動域制限が後遺障害として認定される可能性があります。
なお、可動域制限は、後遺障害系列上、機能障害に分類されます。

関節の「用を廃したもの」

関節の用を廃したものとは、次のような場合をいいます。

  • 関節が強直(*)した場合
  • 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にある場合
  • 人工関節・人工骨頭を挿入・置換した関節のうち、その可動域が健康な側の可動域角度の1/2以下に制限されている場合

*強直…関節が強張って完全に動かないこと、又はこれに近い状態
なお、「これに近い状態」とは、関節可動域が原則として健康な側の関節可動域角度の10%程度以下に制限されているものをいいます。

関節の「著しい機能障害」

関節の著しい機能障害とは、次のような場合をいいます。

  • 関節の可動域が、健康な側の可動域角度の1/2以下に制限されている場合
  • 人工関節・人工骨頭を挿入・置換した関節のうち、可動域が健康な側の可動域角度の1/2以下に制限されている場合以外

関節の「機能障害」

関節の機能障害とは、関節の可動域が、健康な側の可動域角度の3/4以下に制限されている場合をいいます。

上肢

上肢の可動域制限として認められる可能性のある後遺障害等級と障害の内容は、下記の表のようなものです。 可動域制限(上半身)の後遺障害

下肢

下肢の可動域制限として認められる可能性のある後遺障害等級と障害の内容は、下記の表のようなものです。 可動域制限(下半身)の後遺障害

可動域制限についてのご相談は弁護士へ

大きな事故で骨折や脱臼をした場合、関節の可動域制限が残ることがよくあります。関節に可動域制限が生じると、日常生活に大きな影響が生じるため、適正な賠償を受けたいと考えられると思います。 そのためには、適切な後遺障害等級が認定される必要があります。なぜなら、交通事故の損害賠償において、後遺障害に関する賠償は大きな比重を占めるからです。 可動域制限の後遺障害等級認定を獲得するためには、認定の際に作成される、後遺障害診断書だけでなく、継続的な検査や画像による所見が重要となってきます。さらに、可動域は測り方や体調等によって、5~10度程度の誤差は出てしまうものなのにもかかわらず、ほんの少しの角度の差で、受けられる後遺障害等級認定が大きく異なります。 この点、特に医療に強い弁護士なら、リハビリ中のアドバイスから後遺障害診断書の作成のアドバイス、適切な治療の受け方まで、被害者の方をサポートすることができます。 関節の可動域制限等で後遺障害等級認定を申請することをお考えの方は、ぜひ弁護士、特に医療に強い弁護士にご相談ください。適正な賠償を獲得できる可能性が大きく高まるでしょう。

可動域制限が認められた裁判例

東京地方裁判所 平成15年(ワ)第20670号 損害賠償請求事件

<事案の概要>

被告車(パトカー)が、一方通行の規制のある道路を逆走して交差点に進入したところ、被告車の左方から進行してきた原告車と衝突し、原告が右上腕骨頸部骨折、右肩関節脱臼骨折の傷害を負った事案です。 原告の主張する後遺障害逸失利益や後遺障害慰謝料等について、被告が争いました。

<裁判所の判断>

まず、被告は、自賠責保険が認定した後遺障害12級6号(1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの)について争いましたが、裁判所は、自賠責保険の認定は自然かつ合理的であるとして、自賠責保険の認定と同様の認定をしました。 そして、労働能力喪失率について、原告は指圧師であり、後遺障害による業務への影響は大きいと推認されるとして、規定の後遺障害等級12級における労働能力喪失率(14%)以上の労働能力喪失率(20%)が相当であるとしました。加えて、原告が症状固定時に70歳と高齢であること、原告の仕事には相当の体力を要すること等を考慮し、就労可能期間を5年としたうえで、後遺障害逸失利益として、608万192円を認めました。

後遺障害慰謝料については、後遺障害等級表通り290万円が相当であると認め、後遺障害に関連する損害賠償額として、被告に対し、合計898万192円の支払いを命じました。

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