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後縦靭帯骨化症(OPLL)とは? 交通事故との関係について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員
監修 弁護士 谷川 聖治
弁護士法人ALG&Associates執行役員
愛知県弁護士会所属。私たちは、弁護士91名、スタッフ159名を擁し(2019年1月末現在)、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、福岡の10拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。

そこで、後縦靭帯骨化症の後遺障害等級認定のポイントに焦点を当てて、解説していきます。

後縦靭帯骨化症(OPLL)とは

後縦靭帯骨化症(OPLL :ossification of posterior longitudinal ligament)とは、後縦靭帯が骨化してしまう疾患です。後縦靭帯は、脊椎(背骨)を構成する骨である椎骨と椎骨間のクッションである椎間板の後ろ側に沿って、脊柱管の前壁を縦に伸びている靭帯です。後縦靭帯が骨化する範囲が広がると、脊柱管が狭窄して、脊髄や神経根が圧迫されるため、脊髄症状や神経症状が生じます。頚椎、胸椎、腰椎いずれの部分にも生じますが、頚椎に生じることが最も多いです。 発症の原因は明らかではありませんが、40歳代以降の男性、特に糖尿病患者の方の発症が多いといわれています。また、それまで無症状だったものの、交通事故による傷害をきっかけに症状が発現することもあります。 厚生労働省により、特定疾患治療研究対象疾患(難病指定)とされており、治療費は公費負担とされています。

交通事故による後縦靭帯骨化症(OPLL)

後縦靭帯骨化症の原因は未だ解明されていませんが、交通事故による傷害によって発症することはないとされています。 しかし、後縦靭帯骨化症は、脊柱管を狭め脊髄や神経根を圧迫するため、少しの衝撃でも脊髄の損傷を引き起こし、後遺症の残存の原因となるおそれがあります。また、それまで無症状であっても、交通事故による衝撃で急激に悪化して症状が発現したり、事故後の検査で初めて診断されることもあります。 本来であれば脊髄損傷を生じることのない少しの衝撃によって、後遺症が残ってしまう場合があるため、後遺症の発生との因果関係が問題となりやすい疾患です。

後縦靭帯骨化症(OPLL)の症状

後縦靭帯骨化症では、後縦靭帯が骨化して脊柱管内の脊髄を圧迫し、脊髄症状や神経症状といった様々な症状を引き起こします。
引き起こされる症状は、主に①感覚神経、②運動神経、③自律神経に関連したものに分けられます。

①感覚神経
・手足のしびれ
・手足の痛み
・肩回りや指先の感覚障害

②運動神経
・運動障害
・歩行障害
・巧緻障害
例:箸をうまく使えない、字がうまく書けない、ボタンのかけ外しがうまくできない等

③自律神経
・膀胱直腸障害
例:尿失禁、便失禁、便秘、腎機能障害等

後遺障害等級と慰謝料

後縦靭帯骨化症は、交通事故により生じることはないとされています。そのため、そもそも交通事故との因果関係はないとして、交通事故による後遺障害の対象とはなりません。 ただし、交通事故により、手指のしびれや頸部の痛み、歩行障害等といった脊髄症状や神経症状が生じた場合には、脊髄症状及び神経症状の後遺障害の対象となり得ます。

脊髄症状・神経症状

脊髄症状及び神経症状とは、脊髄や神経が圧迫・損傷して生じる、様々な症状をいいます。
主な脊髄症状としては、歩行障害や巧緻障害、膀胱直腸障害等があり、主な神経症状としては、手足のしびれや痛み、感覚障害等があります。

請求できる後遺障害慰謝料

等級 自賠責基準 弁護士基準
別表1 1級1号 1600万円 2800万円
別表1 2級1号 1163万円 2370万円
3級3号 829万円 1990万円
5級2号 599万円 1400万円
7級4号 409万円 1000万円
9級10号 245万円 690万円
12級13号 93万円 290万円
14級9号 32万円 110万円

後縦靭帯骨化症(OPLL)と素因減額

後縦靭帯骨化症を発症していた場合、通常より、脊髄を損傷するおそれが大きいといえます。そのため、交通事故前から後縦靭帯骨化症の症状があった場合や、後縦靭帯の骨化の度合いが年齢相応の状態より悪かった場合には、後縦靭帯骨化症が後遺症の残存に影響したとして、素因減額がされることがあります。 素因減額とは、交通事故前から被害者に存在していた既往症や身体的特徴、心因的な要因等の「素因」が、事故による損害の発生に寄与したり、損害を拡大してしまったりした場合に、損害賠償額を減額することをいいます。 後縦靭帯骨化症を発症すると、脊柱管が狭まることで脊髄が圧迫され、少しの衝撃でも脊髄が傷つきやすい状態になるため、後縦靭帯骨化症は素因とみられることがあります。

素因減額の割合を少しでも減らすためには

後縦靭帯骨化症を発症しているすべての場合に素因減額が認められるわけではありません。 例えば、後縦靭帯の骨化の程度が年齢相応で、退行変性の限度を超えない場合や、そもそも脊髄を圧迫していた程度が大きくない場合には、素因減額が否定される、あるいは減額の程度が小さくなります。 したがって、後縦靭帯の骨化の程度が年齢相応であることや脊髄の圧迫度合いが小さいこと等を証明することで、素因減額の割合を少しでも減らすことができます。

お困りの方は弁護士に相談がおすすめ

後縦靭帯骨化症は、素因減額により慰謝料等の減額が認められやすい疾患です。素因減額の割合を少しでも減らすためには、後縦靭帯の骨化が退行変性の限度を超えないことや脊髄の圧迫の程度が小さいこと等を証明することが必要です。しかし、証明には医療知識も必要になってきますので、被害者の方だけで行うのは難しいでしょう。 そこで、後縦靭帯骨化症での素因減額でお困りの方は、ぜひ医療に強い弁護士にご相談ください。素因減額を回避するための事実の証明には、医療知識と法的知識の両方が必要になりますが、医療に強い弁護士であれば、その両方を兼ね備えています。 素因減額の割合を減らし、適正な額の賠償金を受け取るためにも、医療問題に強い弁護士が集まる弁護士法人ALGにご相談、ご依頼ください。

後縦靭帯骨化症(OPLL)による素因減額を最小限に抑えた裁判例

第一事件 大阪地方裁判所 平成24年(ワ)第11197号 損害賠償請求事件

第二事件 大阪地方裁判所 平成24年(ワ)第13770号 損害賠償請求事件

<事案の概要>

路外駐車場から本件道路に侵入した第一事件の原告(以下、本記事では「原告」と記載します。)車が、本件道路を走行中の第一事件被告(以下、本記事では「被告」と記載します。)車と衝突し、原告が外傷性頚部症候群や頸部挫傷等の傷害を負ったため、被告に対して損害賠償を請求した事案です(なお、第二事件は、被告が乗っていた車両の所有者が原告に対し修理費の支払いを請求した事件です。)。 原告は後遺障害の残存を主張しましたが、被告が、 ①頚椎の症状に関して他覚的所見がないこと
②原告が主張する椎間板の膨隆は、本件事故前に遭った事故(前件事故)で発症した後縦靭帯骨化症によるものと考えるのが合理的であること
を理由に後遺障害を否定したため、争いとなりました。

<裁判所の判断>

裁判所は、原告が、頸部痛や腰部痛、右手のしびれ等を訴え、医療機関の受診を継続していたこと、頚部CT検査で頚椎後縦靭帯骨化症と思われる石灰化像等が確認でき、頚椎後縦靭帯骨化症及び頚椎骨製椎間孔狭窄症が診断されたことを踏まえ、原告が頚椎捻挫等の傷害を負い、残存した頸部痛や腰痛、右手のしびれ等の症状は後遺障害等級14級9号に当たると判断ました。 そして、素因減額の可能性及び程度について、 ①前件事故後の検査にて、後縦靭帯骨化症の確定診断がされたとは認められないこと
②画像上脊柱管狭窄の所見はあるものの、脊髄や神経根への明らかな圧迫が認められるとの所見はないこと
といった理由を挙げ、後縦靭帯骨化症が原告の症状の経過や後遺障害の程度に影響を及ぼしたとは認められないと判断しました。 ただし、前件事故による後遺障害による影響は認められるとして、2割の素因減額を認める結果になりました。 後縦靭帯骨化症による素因減額を回避し、素因減額による損害賠償金の減額を最小限に抑えた裁判例です。

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