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交通事故で聴力障害が発症した場合の後遺障害と慰謝料について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates執行役員
監修 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates執行役員

交通事故に遭ってから耳が聞こえづらくなったという方は、事故が原因で聴力障害を発症しているおそれがあります。難聴になってしまうと将来にわたって日常生活で大きな不便を強いられてしまうため、その精神的苦痛に見合った慰謝料や、後遺障害がなければ得られるはずであった収入分の逸失利益をきちんと請求することが大切です。

交通事故後の聴力低下は後遺障害等級認定の可能性あり

交通事故と聴力障害には、一見直接的な関係はないように思えますが、事故による怪我が原因で聴力が低下した、ひどい場合は難聴を発症したという被害者の方は多くいらっしゃいます。 治療をしても聴力障害が後遺症として残ってしまった場合、後遺障害等級の認定を受けられる可能性は大いにあります。

聴力障害の後遺障害等級認定に必要な検査

後遺障害等級の申請をするためには、難聴の治療をして、症状が固定(これ以上治療をしても改善が見込めない状態になること)してから、検査をしなければなりません。必要な検査は純音聴力検査と語音聴力検査の2種類で、これらの結果を基礎として等級が認定されます。 治療・検査の受診先としては、交通事故患者を積極的に受け入れている病院が良いでしょう。近くて通いやすいという点から町医者にかかる方もいらっしゃいますが、その場合は検査機器や環境が整っていないおそれもあり、他の医療機関を併用することになります。また、後遺障害等級認定の申請時に必要な医師が作成する後遺障害診断書は、等級認定を左右する重要な書類のひとつです。後遺障害診断書を書き慣れた医師がいる、できるだけ交通事故患者の診療経験が豊富な病院を選択すると良いでしょう。

後遺障害診断書の重要性

純音聴力検査(オージオメーター・オージオグラム)

聴力検査のうち最も一般的なものです。防音室でヘッドフォンを装着し、オージオメーターという機械から発せられる125Hz(ヘルツ)から8000Hzまでの7種類の高さの音を聞き取ります。それぞれの音の高さごとに音の大きさを変えて、聞こえる最も小さな音を調べ、その結果をオージオグラム(聴力図)に記入します。このとき、空気を伝わってくる音を耳から聞く「気導聴力」と骨から伝わってくる音を聞く「骨導聴力」の両方を測定します。検査は日を変えて3回行い、2回目と3回目の数値の平均より「平均純音聴力レベル」を算出します。

語音聴力検査

日常会話で使われる言葉を、どの程度聞き取れるか調べるための検査です。ヘッドフォンからランダムに流れる「ア・コ・ニ・タ…」といった語音や「1・6・7・2…」といった1桁の数字を聞き取り、用紙に記入します。被験者の様子をみながら流れる音声の大きさを変化させ、どのくらい聞き取れたか正解率を出します。この検査でわかる「言葉を聞き取る能力」のことを「語音明瞭度」といいます。

難聴や聴力障害の原因

そもそも、聴力に影響をもたらす病気や怪我の種類及び症状にはどんなものでしょうか。また、それらが発症する仕組みは、交通事故とどう関連性があるのでしょうか。代表的なものを複数ご紹介します。

内耳振盪(しんとう)症

耳は、外側から外耳・中耳・内耳と大きく3つの部分に分けられます。そのうち内耳には聴力や平衡感覚をつかさどる器官があり、内耳全体はリンパ液で満たされています。 頭部打撲等で強い衝撃が加わると、リンパ液に振動が伝わります。それが内耳の器官に障害を及ぼし、難聴やめまい等を引き起こします。これを内耳振盪症といい、交通事故における聴力障害の原因のうち、最も多いものとなります。

側頭部骨折

頭の両側の耳がある部分は、側頭部と呼ばれます。側頭部に衝撃が加われば、近くにある耳にもダメージが及びやすくなり、側頭部骨折ともなれば、耳の器官に与える影響も大変大きいものになってきます。 その結果、難聴により音が聞こえない、または聞こえにくくなる状態やめまい及びふらつきといった症状を引き起こします。

外リンパ瘻(ろう)

内耳と中耳の間には、音が入ってくるための前庭窓と、音が出ていくための蝸牛窓という2つの窓があります。この2つの窓は外からの圧力に弱く、何らかの衝撃で穴が開いてしまうと、内耳のリンパ液が中耳に漏れ出てしまいます。この状態を外リンパ瘻といい、難聴や耳鳴り、めまい、吐き気等を引き起こします。

難聴・聴力障害で認定される可能性のある後遺障害等級と認定基準

聴力障害の症状が完治しなければ、日常生活に多大な不便や苦労をもたらします。そのため、後遺障害等級を獲得のうえ補償を受けることも可能です。以下では、障害の範囲を両耳もしくは片耳のケースで分け、得られる可能性のある後遺障害等級と認定され得る条件を網羅していきます。

両耳の聴力

双方の耳に不調をきたしている状況下において認定が見込まれる後遺障害の等級は、耳に残る障害の大きさをもとに区別されます。また、双方の耳に障害が残る場合には、左右の聴力の差により細かく規定されています。

  • 4級3号:両耳の聴力が完全に喪失したときです。
  • 6級3号:両耳の聴力が等しい程度まで低下したときです。具体的には、耳に接する状態でないと、大きな声を認識し解釈することが不可能なくらいとされています。
  • 6級4号:まず、片方の耳の聴力が完全に喪失したとき、加えて、もう一方の耳の聴力が低下したときです。具体的な低下レベルは、40cm以上の範囲であると、普通の音量の話声を認識し解釈することが不可能なくらいです。
  • 7級2号:両耳の聴力が等しい程度まで低下したときです。6級4号と同じく、40cm以上の位置であると普通の音量の話声の認識と解釈が不可能なくらいが基準とされています。
  • 7級3号:片方の耳の聴力が完全に喪失し、さらに、もう一方の耳の聴力が低下したときです。本等級及び号では、1m以上の範囲になると普通の音量の話声を認識し解釈することが不可能なくらいになった状況を指します。
  • 9級7号:両耳の聴力に等しい程度の低下がみられるときです。7級3号と同じく、1m以上の位置になると普通の音量の話声の認識と解釈が不可能なくらいが基準です。
  • 9級8号:まず、片方の耳の聴力について、耳に接する状況でないと、大きな声を認識し解釈することが不可能なほどまで低下した状況です。加えて、もう一方の耳の聴力に関して、距離が1m以上に及ぶと普通の音量の話声を認識し解釈することが難しくなったという条件があります。
  • 10級5号:両耳の聴力に等しい程度の低下がみられるときです。具体的には、1m以上の位置になると普通の音量の話声の認識と解釈が難しくなったものです。
  • 11級5号:両耳の聴力に等しい程度の低下がみられるときです。実際には、1m以上の位置になると小さな声の認識と解釈が不可能な程度になったものです。

片耳の聴力

片方の耳に不調が生じている場合、等級の決定においては、聴き取りの機能がどれほど下がってしまったかが基準になります。両耳に障害が残る場合に比べ、後遺障害等級が低めに設定されているのが特徴です。なお、障害の範囲が両耳であるか片耳であるかを問わず、どの等級の認定要件に該当するかは、オージオグラム等の検査で数値化された結果に基づいて判断されます。

  • 9級9号:片方の耳の聴力が完全に喪失したものです。
  • 10級6号:片方の耳の聴力が、具体的には、耳に接した状況でなければ大きな声を認識し解釈することが不可能なくらいにまで低下した場合とされています。
  • 11級6号:片方の耳の聴力が、具体的には、40cm以上の距離になると普通の音量の話声を認識し解釈することが不可能なほどまで低下した場合とされています。
  • 14級3号:片方の耳の聴力が、具体的には、距離が1m以上に及ぶと小さな声を認識し解釈することができない程度にまで低下した場合とされています。

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難聴・聴力障害で後遺障害等級認定された場合の慰謝料

交通事故で怪我をして、最終的に後遺障害等級を認められるに至った場合は、加害者側から様々な支払いを受けられます。なかでも後遺障害慰謝料は、後遺症を負ったことに伴う苦痛を補償するという目的があり、慰謝料の金額は等級ごとにある程度定められていますが、どの計算基準を用いるかによって差異が生じるものです。 そこで、後遺障害等級9級7号に該当する場合を例として、各基準でどれほどの金額差が現れるのか、比較してみます。

自賠責基準

自賠責基準とは、自賠責保険に対して損害賠償金を請求する際に適用される基準です。自賠責保険は、すべての車やバイクの所有者に加入が義務づけられている強制保険で、交通事故の被害者の人身損害を最低限補償することを目的としています。 後遺障害等級9級7号の場合、後遺障害慰謝料は249万円となります。

※新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準の245万円が適用されます。

弁護士基準

弁護士基準とは、弁護士が示談交渉に介入したり、裁判を起こしたりする際に用いられる基準です。過去の裁判例を参考にしていて、具体的な内容は、通称「赤い本(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)」に記載されています。 後遺障害等級9級7号の場合、後遺障害慰謝料の相場は690万円となります。

後遺障害等級認定を受けるためのポイント

難聴等の聴力障害で後遺障害等級認定を受けるためには、医療機関で治療をして、医師から症状固定と診断された後、純音聴力検査や語音聴力検査といった検査を行う必要があります。それらの検査の結果を踏まえたうえで、後遺障害等級の判断は下されます。 後遺障害等級を取得すると、後遺障害慰謝料の他に後遺障害逸失利益(後遺障害によって労働能力を喪失したことにより得られなくなった収入)を請求することができます。しかし軽度の聴力障害の場合、そもそも後遺障害等級には該当しないと判定されてしまったり、等級を得られても労働能力を喪失していると認められなかったりしてしまうことがあります。 弁護士であれば、後遺障害等級認定に向けたサポートをしたり、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益が適正な金額になるよう交渉したりすることができるので、お困りの際はぜひ一度ご相談ください。

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