メニュー

交通事故弁護士

脊髄損傷の後遺障害と治療法について

「もしも交通事故に遭ってしまったら…」考えるだけでも不安ですよね。 この記事では、交通事故により脊髄を損傷して、後遺障害が残ってしまった場合にどうしたら良いのかとお困りの皆様に向けて、脊髄損傷の詳細と対処法について説明していきます。

脊髄損傷とは? 交通事故で脊髄損傷になったら?

脊髄損傷とは、文字どおり脊髄を損傷することです。脊髄は、脊椎(背骨)の中にある中枢神経で、脳から送られる信号を手足等の末梢神経に伝達し、また、末梢神経からの信号を脳に伝達する重要な神経です。 脊髄は脊椎に守られていますが、交通事故等で外部から脊椎に強い力が加わり骨折や脱臼することで、脊髄の圧迫・断裂等といった損傷を受けます。 脊髄という重要な神経を損傷することにより、脳と手足等の末梢神経間の情報の伝達に障害が生じ、手足等の運動や知覚に影響が出ます。 脳と同じ中枢神経である脊髄は、末梢神経と異なり、損傷の修復や再生はできません。そのため、脊髄損傷によって生じた症状は、完治することはありません。 このように、脊髄は大変重要な神経ですから、脊髄損傷は生活に多大な影響をもたらします。脊髄損傷が疑われる場合には、必ず病院に行って必要な検査を受けましょう。そして、脊髄損傷と診断されたときには、病院で適切な治療を受けることが大切です。

病院で治療を受ける

脊髄損傷を診断する際には、MRI検査、CT検査等の画像検査結果が重視されます。

  • MRI検査…磁力を使って、身体の内部組織を詳しく調べる検査方法です。軟部組織(神経や血管等)を十分に撮影することができるため、脊髄そのものの障害を調べるために最も重要な検査です。
  • CT検査…X線を使って身体の内部を画像化して調べる検査方法です。造影剤を使用すること(脊髄造影検査)で、より詳しい状態を確認できます。

画像検査で脊椎に骨折や脱臼がないか、脊髄の圧迫や断裂がないか等を調べ、異常が見つかった場合には、迅速に治療に移ることになります。

脊髄損傷の治療法としては、次のようなものがあります。

  • 関節固定術:症状の進行を抑えるため、あるいはリハビリを早期から行えるようにするために行う手術です。
  • 薬物療法:脊髄損傷後に進行する壊死等を防ぐために行われるステロイド剤の投与(ただし、実効性には争いがあります)や、麻痺等による筋肉の萎縮を緩和するために行われる筋弛緩薬の投与です。

こうした治療により状態が落ち着いたら、社会復帰に向けたリハビリを本格化します。

脊髄損傷の種類

脳は情報処理器官であるため、脊髄損傷が起こると脳からの情報が届かなくなり、損傷部位より下の部分の運動や感覚の知覚ができなくなります。 脊髄損傷は、症状の程度に応じて、完全損傷と不完全損傷の2種類に分けられます。 以下、それぞれ説明します。

完全損傷

脊髄が断裂し、末梢神経への情報の伝達が完全にできなくなってしまう状態 脊髄が断裂することにより、情報の伝達が完全に不可能になり、損傷部位より下の部分を動かしたり、触覚や痛覚といった感覚を知覚することができなくなります。 脊髄が完全に切れてしまっているため、治療によっても完治は困難です。

不完全損傷

脊髄が断裂するまではいかず、一部の伝達機能は残存している状態 脊髄の損傷はしたものの断裂はしていないため、損傷部位より下の部分を動かしたり、触覚や痛覚といった感覚を知覚したりすることが多少できます。損傷部位以下を自分の意思で動かすことはできなくても、触覚や痛覚等は知覚できるような場合もあります。 伝達機能の一部は残っているので、リハビリ次第で、筋肉をある程度自分の意思で動かすことができるようになる可能性があるとされます。 不完全損傷の中でも「中心性脊髄損傷」は、他覚的所見が見られにくいため、脊髄損傷の有無が問題になりやすい傾向にあります。

脊髄損傷の症状

脊髄は、脳と手足等の器官との間で情報を伝達する神経ですから、損傷すると、情報の伝達がうまくいかなくなります。そのため、次のような様々な症状が起こります。

  • 運動麻痺…自分の意思で手足等を動かすことが困難になる
  • 感覚障害…触覚・熱感覚・痛覚といった知覚に異常が生じる
  • 反射の障害…刺激によって自動的に引き起こされる筋収縮が起こらなくなる
  • 循環器障害…脈拍の異常、血圧の低下、循環血液量の減少、全身浮腫、肺水腫等
  • 呼吸障害…呼吸機能の喪失(頚髄の損傷により生じる)
  • 排尿障害…頻尿・排尿困難等
  • 消化器障害…腸閉塞・宿便等
  • 褥(じょく)瘡(そう)(床ずれ)…血流の障害による皮膚の壊死
  • その他…体温調節の異常、拘縮、痙縮等

特に麻痺が生じることが多いです。

麻痺

麻痺とは、体が思うように動かなくなったり、知覚ができなくなったりする等、神経の障害により身体機能が損なわれる障害です。麻痺の範囲により、四肢麻痺、対麻痺、片麻痺、単麻痺に分類できます。

脊髄損傷の後遺障害等級と慰謝料

脊髄損傷の傷害を負い、麻痺が残った場合に認定される可能性のある後遺障害等級と後遺障害慰謝料について表にしましたので、ぜひ参考にしてください。

神経症状

脊髄損傷を受ける程の交通事故に遭った場合、脊髄損傷の程度が重くなくても、痛みやしびれ等の「神経症状」が残存することがあります。「神経症状」とは、神経の圧迫により生じる痛みやしびれ、麻痺等の症状です。他覚的所見が乏しいため、診断が難しいといわれています。 神経症状の主な原因としては、むち打ち、骨折、靭帯損傷等があります。また、頸椎の骨折・脱臼により、脊髄(中枢神経)が圧迫されることによっても、痛みや痺れ、麻痺等といった神経症状が生じる場合があります。 神経症状に関連する後遺障害等級の認定を受けるために、事故に遭ったらすぐに細部まで確認することのできるCTやMRIの画像診断を受けましょう。また、それに加えて神経検査等の客観的検査をしてもらい、他覚的に神経症状があると診断してもらうことも大切です。もしも他覚的所見がなかった場合でも、事故の当初から、痛みや痺れといった症状を一貫して医師に訴えていれば、後遺障害等級が認定される可能性はあります。 きちんと検査を受けることが大切です。

請求できる慰謝料

脊髄損傷の場合に認定される可能性のある後遺障害等級と、もらえる後遺障害慰謝料について表にまとめました。

等級 自賠責基準 弁護士基準
別表第1 1級1号 1600万円 2800万円
別表第1 2級1号 1163万円 2370万円
3級3号 829万円 1990万円
5級2号 599万円 1400万円
7級4号 409万円 1000万円
9級10号 245万円 690万円
12級13号 93万円 290万円

脊髄損傷の慰謝料の計算例

ここで、脊髄損傷を負い、後遺障害が残ってしまった場合の慰謝料の計算例をご覧ください。入院1年(360日)、通院期間2年(720日)、実通院日数680日、後遺障害等級3級3号(四肢麻痺)の場合を想定しています。

自賠責基準の計算例

後遺障害が残った場合にもらえる慰謝料は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料ですので、2つの慰謝料金額を合計したものが、もらえる慰謝料金額となります。 自賠責基準では、入通院1日につき、「4200円」を支給しています。なお、「入通院期間」か「実治療日数(入院期間+通院期間)×2」のどちらか少ない方を、支払い対象日数とします。 本例の場合、 入通院期間<実治療日数×2 ですので、「日額4200円×入通院期間」の計算式を用います。 計算すると453万6000円となります。ただし、自賠責基準の場合、傷害部分の賠償金額の上限を、治療費や休業損害、入通院慰謝料を含めて120万円としています。そのため、入通院慰謝料は、最大でも120万円になります。 そして、上記の表によると、後遺障害慰謝料は829万円です。 したがって、自賠責基準での慰謝料は、最大で949万円となります。

弁護士基準の計算例

弁護士基準では、入通院慰謝料は、赤い本(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)の入通院慰謝料別表を使い算定します。四肢麻痺は、他覚所見もみられる重篤な後遺障害のため、別表Ⅰを使います。 これによると、入通院慰謝料は373万円になります。 そして、後遺障害慰謝料は1990万円です。 したがって、弁護士基準での慰謝料は、2363万円となります。

脊髄損傷の治療法と経過

脊髄損傷は完治しないと説明しましたが、治療やリハビリによって、症状が改善する可能性はあります。 外傷性の脊髄損傷の場合、損傷の状態は時間とともに変化しますので、状態に応じた適切な治療やリハビリが必要になります。以下、説明していきます。

急性期

急性期とは、脊髄を損傷した直後から状態が安定するまでの期間(3~4週間)をいいます。急性期においては、全身管理、薬物療法、手術、合併症予防を目的とした治療がなされます。

・全身管理 外傷性脊髄損傷では、受傷直後からどんどん状態が悪化していくので、急性期ではとにかく全身を管理することで状態を安定させ、損傷を最小限に抑えるよう努めます。具体的には、薬や手術で脊髄の圧迫を緩和する治療を行います。そして、できるだけ早期にリハビリを開始できるようにします。

・薬物療法 脊髄損傷後に進行する壊死等を防ぐために、受傷直後にステロイド剤を大量投与することがあります。しかし、合併症のリスクや実効性への疑問から、これについては是非をめぐる議論が続いています。 また、ステロイド剤の投与とは別に、筋委縮を緩和するため、筋弛緩剤の投与を行うこともあります。

・手術
脊髄への圧迫を取り除くために、脊椎固定術を行い、脊柱の頭を支える機能を再建します。

・合併症予防 合併症を防ぎ早期回復を図るため、褥瘡の予防、尿路・呼吸器感染症の予防、関節拘縮の予防等を行います。

慢性期

慢性期とは、病状は比較的安定しているものの、治癒が困難な状態が続く期間をいいます。慢性期においては、遅発性脊柱変形や遅発性脊髄障害の治療、合併症等への措置、社会復帰に向けてのリハビリが主な目的となります。

・遅発性脊柱変形・遅発性脊髄障害の治療 手術を行うことで、発症が見込まれる遅発性脊柱変形や、遅発性脊髄障害を原因とする麻痺の悪化を防ぐ場合があります。

・合併症への措置
異所性骨化、痙縮、尿路感染症等といった、合併症への措置を行います。

・リハビリ 座る・立つといった姿勢を保持したり、移動したり、日常生活動作を行うことができるようにする、社会復帰に向けた訓練を行います。

脊髄損傷の検査

後遺障害等級認定を受けるためには、他覚的所見を確認することが重要です。他覚的所見がなくとも後遺障害認定を受けることは可能ですが、自覚症状を神経学的検査等の他覚的な所見から裏付けることができれば、後遺障害として認定される可能性が高まるからです。 画像検査で脊椎に骨折や脱臼がないか、脊髄の圧迫や断裂がないか等を調べ、異常が見つかった場合には、迅速に治療に移ることになります。

単純X線

一般的なレントゲン撮影です。脊髄の骨折や脱臼が疑われる場合には、迅速に結果の出るX線撮影が行われることが多いです。 しかし、後述のMRI検査やCT検査に比べて、細かい部分を確認することはできません。そのため、MRI検査やCT検査が用いられることが多いです。

MRI

磁力を使って身体の内部組織を詳しく調べる検査方法ですが、軟部組織(神経や血管等)を十分に撮影することができるため、脊髄そのものの障害を調べるために最も重要な検査です。

CT

X線を使って身体の内部を画像化して調べる、CTを利用した脊髄造影検査です。こちらの検査も、損傷の部位や程度の確認のため、よく行われます。

SEP(体性感覚誘発電位)

脊髄・大脳皮質までの、感覚神経の伝導路の働きを調べる検査です。末梢神経を刺激することにより誘発される反応を、頭皮上等から記録を取ることで調べることができます。手足の麻痺が疑われる場合に行われることがあります。

徒手筋力テスト(MMT)

それぞれの筋肉の筋力が低下しているかどうかを、素手で評価する検査方法です。 筋力の低下について評価するとともに、日常生活の動作を介助なしに行うことができるか、神経障害の部位はどこなのかを調べるために行われます。また、治療やリハビリの効果等を判定することを目的に行われることもあります。

腱反射テスト

上腕二頭筋の付近やアキレス腱を検査器具で叩き、反応の強弱を確認します。脊髄や大脳に障害がある場合は強い反応が、神経根の異常等、末梢神経に異常がある場合には弱い反応が見られるか、反応がないといった結果が得られます。 脊髄又は末梢神経の障害が疑われる場合に行われることがあります。

バビンスキー徴候反射テスト

針のようなもので、足の裏をかかとからつま先に向かってゆっくりこすり上げたときに、足の親指が足の甲の方にゆっくり曲がる(拇指現象)場合、中枢神経の伝導路のひとつである錐体路障害の疑いがあります。また、拇指現象と同時に、親指以外の四本の指が扇状に開くこともあります(開扇現象)。

ホフマン徴候反射テスト

人差し指と中指で軽く挟んだ、患者の中指の指先を弾き、反応を確認するテストです。これにより親指が曲がる場合には、脊髄や錐体路等、中枢神経の障害の疑いがあります。 ただし、健常者でも起こる可能性がある反射のため、補助的な検査手法に留まります。

トレムナー反射テスト

患者の中指を手の甲側に伸ばした上で、伸ばした中指の指先を弾いて反応を確認するテストです。親指が内側に曲がる場合、錐体路等の中枢神経の障害の疑いがあります。 ただし、健常者でも起こる可能性のある反射のため、補助的な検査手法に留まります。

交通事故で脊髄損傷になってしまったら

基本的に脊髄損傷は治ることはありませんし、症状が重篤なために介護を必要とするケースが多いです。生活への影響も大きく、介護費用や治療費といった金銭的な負担も大きいでしょう。そのため、適正な賠償を受けることが重要になります。 保険会社との示談交渉を被害者の方ご自身で行うこともできますが、その場合には、ご自身で適正な慰謝料額を算定し、自身の主張を裏付ける資料等の証拠を集める必要があります。しかし、その主張が受け入れられることは極めて稀です。 ご自身の負担を減らし、適正な賠償を受けるためにも、弁護士に依頼しましょう。 また、脊髄損傷で後遺障害慰謝料を受け取るためには、後遺障害等級認定を受ける必要がありますが、特に医療に強い弁護士に相談すれば、適切な後遺障害等級の認定のためのアドバイスを受けることができます。 心強い味方を得るためにも、ぜひ弁護士にご依頼ください。

脊髄損傷の後遺障害が認められた裁判例

ここで、脊髄損傷の後遺障害が認められた裁判例をご紹介します。

大阪地方裁判所 平成3年(ワ)第5977号

<事案の概要>

被告の運転する普通乗用自動車が、交差点を右折しようとした際、交差点を直進してきた原告の運転する自転車と衝突し、原告を路上に転倒させました。これにより損害を被ったとして、原告が被告に対して損害賠償を請求した事案です。 本件事故により、原告は脊髄損傷の傷害を負い、結果として両下肢麻痺等の後遺障害(1級8号)が残ったと主張したところ、被告が、両下肢麻痺等の症状は原告の体質等に起因するものと主張し、事故との相当因果関係を否定したため、争いになりました。

<裁判所の判断>

裁判所は、

  • 1 事故直後、原告の訴えた症状が、脊髄損傷の初期症状と類似性があること
  • 2 本件事故を機に自力歩行が相当に困難な状態になったこと
  • 3 ほぼ一貫した胸髄11髄節以下の知覚障害が存在し、胸髄内の異常を示すMRI検査結果(胸椎10-11椎体レベルの胸髄内に異常)とも符合すること
  • 4 3の検査結果は、外傷による胸髄損傷の可能性を窺わせる他覚的所見であること
  • 5 原告の症状には脊髄ショック等脊髄損傷の典型的な徴候が明確には認められないものの、脊髄損傷の部位・程度によって、徴候の有無や程度には相当広範囲な差異があり、画像診断でとらえられない脊髄損傷も存在すること

これらの事情を考慮し、本件事故による外力が原告の脊髄(胸髄10-11椎体レベルの胸髄内)に損傷等を与え、両下肢麻痺の一因となったとして、本件事故と後遺障害との因果関係を認めました。 そして、後遺障害の内容・程度としては、症状固定時においては下肢関節の自動運動がまったくできないが、それ以前に自動運動や屈曲が可能な時期があったことや垂れ足検査では異常が見られなかったという結果を考慮し、両下肢の筋力自体は徒手筋力テストで2ないし3のレベルで、両下肢に軽度の筋委縮が認められる程度の、自力歩行が困難な不全麻痺(5級2号)に該当すると認めるのが相当であるとしました。 こうした結果を踏まえ、原告に生じた損害額は5635万7082円であるとし、過失相殺として2割、身体的素因や心因的要因が後遺障害の残存に与えた影響を考慮して4割減額し、被告に対し、2350万3953円の損害賠償命令を出しました。

交通事故事件の経験豊富な弁護士が全面サポート

増額しなければ、成功報酬は頂きません!※諸経費20,000円(消費税別)がかかります。

弁護士費用特約を使う場合 本人原則負担なし※保険会社の条件によっては本人負担が生じることがあります。

  • 着手金
    0
  • 相談料
    0
  • 成果
    報酬制
  • 弁護士費用
    後払い

※死亡・後遺障害認定済みまたは認定が見込まれる場合

※事案によっては対応できないこともあります。

※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。

弁護士法人ALG&Associates

通話無料・24時間年中無休受付中!

0120-790-073 今すぐ電話で相談受付

メール相談受付はこちら

メール相談受付