交通事故後の足のしびれと後遺障害

監修弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates 執行役員
交通事故後、足のしびれに悩まされる方は多くいらっしゃいます。しかし、しびれの原因を医学的に特定することは難しいため、適切な後遺障害等級が認定されず、お困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、足のしびれの原因や認定される可能性のある後遺障害等級について、詳しく説明していきます。
交通事故被害者専用 相談窓口まずは交通事故の受付スタッフが丁寧にご対応いたします
交通事故に遭いお困りの方へ
目次
交通事故後、足のしびれが続くときにやるべきこと
しびれは、交通事故で身体を強く打ち付ける等して起こる、感覚の機能不全により生じます。 交通事故で起こり得る感覚の機能不全は、具体的には次のようなものです。
- 神経への血液の供給の減少又は遮断
- 感覚経路の一部への圧力(圧迫)
- 神経の損傷
こうしたしびれの原因は、検査によっても見つからないケースが多く、交通事故との因果関係の証明が困難です。そのため、適切な後遺障害等級認定や賠償を受けるためには、医師に正確に自身の症状を申告し、事故直後からしびれが一貫して継続していることを証明できるよう努める必要があります。 これを念頭に、足のしびれが続くときには、病院で適切な治療を受けましょう。
検査と治療
しびれは神経症状なので、足のしびれがある場合、まずはどこにどのような異常があるのかをMRI検査やCT検査で確認します。 交通事故の場合には、はじめにX線検査で異常がないかを確認することが多いですが、しびれのように、わずかな神経の損傷を原因とするおそれがある場合には、X線検査では異常の確認ができません。そのため、組織内部までより精密に画像撮影ができるMRI検査やCT検査が行われます。 また、腱反射テストや徒手筋力テストといった神経学的検査を並行して行うこともあります。 しびれの原因によって治療の方法は異なりますが、例えば、椎間板ヘルニアが原因の場合には、観血的療法(手術)や保存療法(投薬治療や注射、装具療法、リハビリ等)が行われます。
足のしびれの原因
足のしびれの原因としては、複数の原因が考えられます。
例えば、
・神経への血液の供給の減少又は遮断
・感覚経路の一部への圧力(圧迫)
・神経の損傷
等が考えられます。
むちうちや脊髄損傷といった傷病もこれらが原因となって生じるため、むちうち等の症状のひとつとして、足のしびれが起こることがあります。
むちうち
むちうちとは、交通事故等、外部からの強い衝撃により、首が鞭のようにしなることで起こる頚椎等の関節の損傷をいいます。 首の痛みや頭痛、吐き気、めまい等に加え、手や足のしびれが現れる症状があります。 詳しくは下記の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
坐骨神経痛
坐骨神経痛とは、何らかの原因で坐骨神経が圧迫されることで生じる痛みをいい、臀部から太腿の後ろ側にかけて、鋭い痛みやしびれが感じられます。症状が深刻になるにつれ、足の痛みやしびれの範囲が広がっていき、歩くことが困難になる場合もあります。 詳しくは下記の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
脊髄損傷
脊髄損傷とは、中枢神経である脊髄を損傷することをいいます。中枢神経の損傷によって、脳と手足等の末梢神経間の情報伝達に支障が生じます。具体的には、手足等の運動や知覚に問題が生じ、手足のしびれといった症状が出ることもあります。 詳しくは下記の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
足のしびれの後遺障害等級と慰謝料
足のしびれが続く場合、神経障害や運動障害があると認められるときには、後遺障害等級が認定される可能性があります。
神経症状
神経症状とは、神経の圧迫によって生じる各種症状をいいます。 他覚的所見があり、医学的に症状を証明できる場合には12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)が、医学的説明にとどまる場合には14級9号(局部に神経症状を残すもの)が認定されます。
請求できる慰謝料
等級 | 自賠責基準※1 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
※1:自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。詳しくは、こちらをご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
運動障害
運動障害とは、交通事故により、神経や筋肉が傷つくこと等によって、身体を思うように動かせなくなる後遺障害をいいます。運動障害は、運動麻痺と運動失調に分類されます。
足のしびれの原因も、神経の損傷によるところが大きいので、しびれと運動障害が併発するケースがあります。
運動障害の程度には3段階あり、軽度、中程度、高度の順に、程度が重くなっていきます。
運動障害(運動麻痺)について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
合わせて読みたい関連記事
請求できる慰謝料
等級 | 自賠責基準※2 | 弁護士基準 |
---|---|---|
別表第1 1級1号 | 1650万円 | 2800万円 |
別表第1 2級1号 | 1203万円 | 2370万円 |
3級3号 | 861万円 | 1990万円 |
5級2号 | 618万円 | 1400万円 |
7級4号 | 419万円 | 1000万円 |
9級10号 | 249万円 | 690万円 |
12級13号 | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
※2:令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。
交通事故被害者専用 相談窓口まずは交通事故の受付スタッフが丁寧にご対応いたします
交通事故に遭いお困りの方へ
慰謝料の計算例
足のしびれが後遺障害として認められた場合、どのくらいの慰謝料がもらえるのでしょうか? 入院なし、通院期間217日、実通院日数187日、後遺障害等級14級9号(局部に神経症状を残すもの)を例として、計算してみたいと思います。 なお、後遺障害が認められる場合ですので、もらうことのできる慰謝料は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類となります。
自賠責基準
自賠責基準では、「日額4300円※3×対象日数」の計算式を用いて、入通院慰謝料を算定します。
「入通院日数」か「実治療日数×2」のどちらか小さい方が対象日数となるので、例の場合、
「入通院慰謝料=日額4300円※3×入通院期間217日=93万3100円」
また、「後遺障害慰謝料=32万円」なので、
「慰謝料総額=93万3100円+32万円=125万3100円」
となります。
※3:令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準の日額4200円が適用されます。
弁護士基準
弁護士基準では、入通院慰謝料は、赤い本(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)の入通院慰謝料別表を用いて算定します。例は、他覚的所見のない神経症状の場合なので、別表Ⅱを用います。これによると、「入通院慰謝料=98万4000円」となります。
また、「後遺障害慰謝料=110万円」なので、
「慰謝料総額=98万4000円+110万円=208万4000円」
となります。
弁護士への相談をご検討ください
これまでに説明したとおり、足のしびれの原因には様々なものがあります。しかし、神経のわずかな損傷を原因とする場合には、原因が見逃されてしまい、客観的に症状を証明することができず、適切な後遺障害等級認定を受けられないおそれがあります。 この点、特に医療に強い弁護士であれば、客観的に症状を証明する手段がない場合にも、「どのようにしたら後遺障害等級に該当すると証明できるか?」といった点について、治療の受け方等からアドバイスをすることができます。後遺障害等級認定では、後遺障害診断書だけでなく、治療の受け方等も重要な判断資料となるため、弁護士のアドバイスは非常に役立ちます。 適切な後遺障害等級認定を受け、適正な賠償を受けるためにも、まずは一度弁護士に相談すると良いでしょう。
足のしびれで後遺障害が認められた裁判例
足のしびれについて、後遺障害等級14級9号が認められた裁判例を紹介します。
大阪地方裁判所 平成27年8月27日判決
<事案の概要>
被告の運転する普通乗用自動車が、原告X1が運転し、原告X2(X1の妻)及びX3(X1及びX2の子供)が同乗する普通乗用自動車に追突し、原告X1~X3が傷害を負ったとして、被告に対して損害賠償を請求した事案です。ここでは、足のしびれを症状のひとつとして訴えた、X2の主張の当否についての判断のみ紹介します。 (なお、裁判所は、X1については、腰部受傷後の腰痛等の後遺障害(14級9号)を認定したものの、X3については後遺障害を認定しませんでした。)
<裁判所の判断>
X2の後遺障害について、裁判所は、次のように判断しました。 まず、自賠責保険へ提出した後遺障害診断書から、X2の自覚症状(①頚部痛・頭痛、頚部の違和感、吐き気等、②腰部痛、左下肢外側のしびれ、左大腿外側部痛等)及び他覚的症状(後頚部・左臀部の圧痛、左大腿部の疼痛、左下肢のしびれ・知覚鈍麻等)の存在を確認しました。 そして、将来においても症状の回復が困難であると認め、自賠責保険の認定と同様(①②いずれの症状についても後遺障害等級14級9号を認定)、併合第14級相当を認定しました。 足のしびれ等の明確な原因が見つからないものの、交通事故との因果関係を認め、後遺障害を認定した事例です。
交通事故被害者専用 相談窓口まずは交通事故の受付スタッフが丁寧にご対応いたします
交通事故に遭いお困りの方へ


交通事故事件の経験豊富な
弁護士が全面サポート
弁護士費用特約を使う場合
本人原則負担なし※保険会社の条件によっては
本人負担が生じることがあります。
弁護士報酬:成功報酬制
※死亡・後遺障害等級認定済みまたは認定が見込まれる場合
※事案によっては対応できないこともあります。
※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。