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交通事故で、てんかんの後遺障害と慰謝料について

弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates執行役員
監修 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates執行役員

交通事故による怪我が原因で、様々な後遺症が残ってしまうことがあります。このページでは、後遺症としての外傷性てんかんについてご紹介します。

てんかんとは?

てんかんとは、大脳の神経細胞(ニューロン)の過剰な興奮が原因で、意識消失や痙攣発作といった運動障害や自律神経症状等を引き起こす、慢性の脳疾患です。 てんかんには、特定の原因が見当たらない突発性てんかんと、脳腫瘍や外傷等の脳疾患を原因とする症候性てんかんの2種類があります。交通事故に起因して発症するおそれがあるのは、 症候性てんかんの内、外傷を原因とする外傷性てんかんです。 外傷性てんかんは、発症する時期によって大きく3つに分けられます。

  • 超早期てんかん:外傷後24時間以内に2回以上発症
  • 早発てんかん:外傷後7日以内に発症
  • 晩発てんかん:外傷後8日以降に発症

交通事故の後遺障害として問題になるのは、主に晩発てんかんです。

てんかんと診断されたら?

晩発てんかん(以下「外傷性てんかん」という。)が診断された後は、病院で治療を受けるだけでなく、 外傷性てんかんの周囲への影響を鑑み、各所へ外傷性てんかんを発症した旨の連絡をします。そして、後遺障害等級認定の申請や、示談交渉等を行っていくことになります。

病院で治療を受ける

交通事故による外傷性てんかんの発症が疑われる場合には、主に脳波検査や画像検査が行われます。 脳波検査では、脳波を記録し、てんかんに特徴的な放電や異常所見等の有無を確認します。ただし、脳波が正常な場合でもてんかんを発症している症例があるので注意が必要です。 画像検査では、脳の損傷の有無を確認するために、MRIやCT画像等の検査を行います。 では、外傷性てんかんと診断された場合、どうすれば良いのでしょうか? 残念ながら、てんかんは一度発症すると完治は難しいといわれています。 そのため、外傷性てんかんと診断された場合の治療としては、症状の緩和、進行を遅らせる投薬治療が行われます。多くは、抗てんかん薬を治療的に投与します。また、外傷後8日以降発作が出ていない人に対しては、予防的に投与されます。

てんかんの症状と診断基準

外傷性てんかんの症状には、主に次のようなものがあります。

  • 欠神発作:非常に短時間の意識消失を起こす発作
  • 間代発作:いわゆる痙攣発作
  • 強強直発作:手足が突っ張り身体が硬くなる発作
  • ミオクロニー発作:全身や手足が一瞬びくっとする発作
  • 複雑部分発作:特殊な行動を取ったり感覚や感情が変化したりする等の 様々な症状が現れる発作

外傷性てんかんの診断には、1.てんかんであること、2.てんかん発作が脳の外傷を原因とするものであることの2つが必要です。 1は、患者の脳波を記録し、てんかん性放電や非突発性といった異常の有無や、脳の器質的異常の存在を確認して診断します。 2の診断のためには、Walkerの基準という診断基準が使われます。

【Walkerの基準】

  1. ①てんかん発作の症状が起きている
  2. ②外傷以前にはてんかん発作の症状を起こしていない
  3. ③他に脳又は全身疾患がない
  4. ④脳損傷を起こし得るほどに強い外傷だった
  5. ⑤外傷後あまり経過していない時期に最初のてんかん発作が起こった
  6. ⑥てんかんの型、脳波所見及び脳損傷部位が一致している

てんかんの後遺障害等級と慰謝料

外傷性てんかんが後遺障害として認定される可能性のある等級には、大きく分けて4等級あります。 外傷性てんかんの等級認定の際には、症状の程度と発作の頻度が考慮されます。 具体的には、次のようになります。

等級 症状の程度と発作の頻度
5級2号 1ヶ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が痙攣発作や強直発作等により転倒する発作や複雑部分発作である場合(以下、「痙攣発作等」とします)
7級4号 痙攣発作等が数ヶ月に1回以上ある又は痙攣発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上ある場合
9級10号 数ヶ月に1回以上の発作が痙攣発作等以外の発作であるもの又は服薬を継続することによりてんかん発作がほぼ完全に抑制されている場合
12級13号 発作はないが、脳波上明らかにてんかん性の棘波が認められる場合

※1ヶ月に2回以上の発作がある場合は、通常、高度の高次脳機能障害の後遺症が残存しているため、高次脳機能障害の認定基準に従って、後遺 障害等級が認定されます。

請求できる慰謝料

等級 自賠責基準※1 弁護士基準
5級2号 618万円 1400万円
7級4号 419万円 1000万円
9級10号 249万円 690万円
12級13号 94万円 290万円

※1:自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。詳しくは、こちらをご覧ください。

自賠責保険の支払基準が変わりました

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てんかんで後遺障害等級認定された場合の慰謝料の計算例

自賠責基準の計算例 自賠責基準の場合、入院9ヶ月・通院期間180日・実通院日数90日・後遺障害等級9級10号が認定されたときには、入通院慰謝料は次のようになります。 入通院慰謝料=日額4300円※2×450日=193万5000円 ただし、自賠責保険の傷害分の上限額は120万円なので、最大120万円 また、後遺障害慰謝料は249万円※2なので、 慰謝料総額=入通院慰謝料+後遺障害慰謝料=120万円+249万円※2=369万円 したがって、自賠責基準での慰謝料は、最大369万円となります。

※2:自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。詳しくは、こちらをご覧ください。

自賠責保険の支払基準が変わりました

弁護士基準の計算例 弁護士基準の場合、入院9ヶ月・通院期間180日・実通院日数90日・後遺障害等級9級10号が認定されたときには、次のようになります。 別表Ⅰ(通常の怪我の場合)より、入通院慰謝料は312万円、後遺障害慰謝料は690万円なので、 慰謝料総額=入通院慰謝料+後遺障害慰謝料=312万円+690万円=1002万円 したがって、弁護士基準での慰謝料は、1002万円となります。

交通事故でてんかんになってしまったら弁護士にご相談ください

外傷性てんかんを発症し後遺症が残った場合には、適正な後遺障害等級認定を受け、また、適正な賠償額を受け取るためにも、特に医療問題に強い弁護士に依頼するのがおすすめです。 交通事故と外傷性てんかん発症との因果関係は、保険会社との交渉においても争われやすくなっています。しかし、因果関係の証明には、非常に専門的かつ複雑な知識を必要とします。 そこで、保険会社との交渉になれており、外傷性てんかん等の医療問題にも精通した弁護士に相談することで、適正な賠償額の獲得に向けた行動についてアドバイスがもらえます。 お困りの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

てんかんと交通事故との因果関係が認められた裁判例

最後に、外傷性てんかんと交通事故との因果関係が認められた裁判例についてご紹介します。

大阪地方裁判所 平成15年6月27日判決

<事案の概要>

加害者の運転する自動車が、道路脇の自動販売機前で停止していた被害者の運転する自動二輪車に追突し、被害者が加害者とその使用者に対して損害賠償を請求した事案です。 主な争点は、被害者の外傷性てんかん症罹患の有無と損害額でした。

<裁判所の判断>

裁判所は、外傷性てんかんの診断基準であるWalkerの基準で、被害者が交通事故による頭部への衝撃が原因で外傷性てんかん症に罹患したと認めました。

【Walkerの基準】

  1. ①てんかん発作の症状が起きている
  2. ②外傷以前にはてんかん発作の症状を起こしていない
  3. ③他に脳又は全身疾患がない
  4. ④脳損傷を起こし得るほどに強い外傷だった
  5. ⑤外傷後あまり経過していない時期に最初のてんかん発作が起こった
  6. ⑥てんかんの型、脳波所見及び脳損傷部位が一致している

具体的には、被害者は交通事故以前に意識喪失発作を起こした経験はなく、現在脳や全身疾患もないこと、また、最初の発作は事故から約5ヶ月後と、外傷後あまり経過したとはいえない時期に起こっている点から、②③⑤の基準を満たすと判断しました。次に、被害者が事故時に負っていたのは意識障害を伴わない軽い頭部損傷でしたが、軽い頭部損傷でもてんかん発作が起こる可能性はあり、被害者の脳波に異常はないものの、発作間欠期のてんかん性放電が出現しない場合も少なくないことから、④⑥の基準も満たすとしました。そして、抗てんかん薬の効果が認められた等の事情を鑑み、被害者が起こしたのはてんかん発作だと認め①の基準も満たすとした上で、被害者が交通事故によって外傷性てんかんを発症したと認めるのが相当であると判示しました。

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